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2018年度の経済成長率は輸出の伸び鈍化で17年度を下回る見通し

 昨年度の2016年度の実質GDP成長率は実績で1.2%増だった。伸び率の高かったのは民間住宅建設の6.2%増と財貨・サービスの輸出の3.4%増で、民間住宅建設は輸出より高い伸びでも金額は少なく、寄与度では0.2ポイントでしかない。結局、輸出主導の成長になるが、海外経済の回復力は力強さに欠け、為替レートが15年度の1ドル=120円から、16年度は108円へと円高になった影響もあって、輸出の伸びは低かったため、GDP成長率も低成長になった。ちなみに、15年度は1.4%増であり、減速したことになる。また、16年度の名目GDP成長率は1.0%増に留まり、実質を下回った。

 17年度の実質GDP成長率実績見込は、17年7〜9月期のGDP二次速報を受けて発表された民間の予測機関が1.7〜1.9%増、政府は1.9%増であり、下期の見通しに殆ど差がないことになる。16年度より成長率が高まるのは確実だが、1%台成長であれば、低成長から脱したとは言い難い。同様に、名目も政府の2.0%増に対し、民間は1.6〜2.0%増であり、乖離は小さい。

 成長率が高まった要因は民間最終消費と輸出にある。16年度に成長が高かった民間住宅建設は頭打ちになっているが、中国が共産党大会に向けて積極的に景気対策を行ったことや欧米の景気回復で、輸出は16年度より伸びている。また、民間最終消費が低い伸びでも平均賃金と雇用の増加効果で、僅かでも回復力を強めているからである。当然、民間最終消費は所得面からみれば輸出増の恩恵があり、この点でも輸出主導といえる。前回のこの経済レポートで、海外経済によって日本の景気が変動する構造を指摘したが、基本的にこれが17年度も変わらないことを示している。

 1年前の17年度経済見通しを需要項目別にみれば、それぞれ上下に乖離が目立つ項目もあるが、名目GDP成長率は三菱UFJリサーチ&コンサルティングの0.6%増を除けば、1.2〜1.5%増で、実質は全てが0.9〜1.2%増と、格差は0.3ポイントの範囲内に収まっていた。いずれにしても、政治的判断が加わる政府の名目GDP成長率を除けば、17年度は実績が見通しを上回る可能性が高い。原因は輸出にあり、為替レートは見通しと実績見込にほとんど差がないため、中国の政策効果や欧米、特に欧州の経済見通しが過小評価にあったといえる。

 18年度見通しでは、輸出が17年度とは逆の効果が予測されている。実質GDP成長率の政府見通しは民間への賃上げ要請効果を見込んでいるためか、民間最終消費の伸びが下支えして1.8%増と、17年度実績見込とほぼ同水準である。これに対し、民間の予測機関見通しは1.0〜1.3%増と成長減速予測である。もともと、政府見通しが民間の見通しを上回るのが通常で、前年の17年度の見通しと比較すれば、今年の18年度見通しは両者間の乖離が少し拡大している。政府は経済成長の鈍化は予測しづらいからからである。

 要因として、中国は党大会対策がなくなるのに加え、欧米がまだ低水準でも金利引き上げに動いているため、世界経済の成長率が低下し、輸出の伸びが鈍化する影響が大きい。また、民間の為替レートは17年度の112円程度から、18年度は112.5〜116.2円でいずれも小幅の円安基調の見通しであり、為替からの輸出増加効果もほとんど期待できない。

 もちろん、安倍首相の民間企業への賃上げ要請が影響力を持てば、賃上げによる収入増で民間最終消費の伸びが高まり、GDP全体を下支えする政府見通しが実現する可能性も考えられる。しかし、民間予測機関は賃上げ率が高まると予測していないため、輸出の鈍化と共にGDP成長率も低下する見通しになる。加えて、現実には増税や社会保険料負担の増加による可処分所得へのマイナスもあり、民間最終消費の回復、拡大は期待し難い。

 一方、18年度の名目GDP成長率見通しは政府の2.5%増は別として、民間は1.2〜1.9%増と乖離が大きい。この差の要因として物価見通しがある。消費者物価上昇率(生鮮食品を除く総合)は0.5〜1.2%増と幅広い。国際商品市況や雇用ひっ迫による人件費の上昇が物価に波及するかどうかの判断が異なるためである。

 これは、雇用者所得の伸びの鈍化、低い民間最終消費の伸びとは矛盾すると受け取れる。しかし、賃上げ率は低くても、企業、特に小売・サービス企業が人件費を含めてコストを企業努力で吸収するのは限界にきていると判断すれば、比較的高い消費者物価上昇の予測とは矛盾しない。現実に、小売価格の値上げを発表する企業は増えている。

 ただし、低成長下で生産性が上昇せずに物価が上昇すれば、名目GDP成長率が高まるだけで、実質GDP成長率は高まらない。現在のように失業率が低い状態で国民の生活を豊かにするには、各企業・産業の生産性を向上させるか、生産性の高い産業の比率を高める方向へと産業構造の転換を進めるしかない。最近の議論では労働生産性、産業構造の視点が抜けているため、説得力が弱い問題がある。

2018年度の経済見通しの主要項目別一覧

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| 2017年12月29日 | 景気 | comments(0) | - |
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