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大型店売上高にみる地域間景況格差

 日本経済の先行きが話題になるようになって、地域間格差問題はマスコミに取り上げられることが少なくなったが、格差が解消に向かっているわけではない。マクロ的にはGDP統計として発表される国民経済計算と同様の統計である県民経済計算が国民経済計算よりも推計精度は低くても、地域全体の経済状況を表す資料になる。しかし、県民経済計算は最新の統計でも2005年度でしかなく、最近の地域経済の状況を知るには集計が古すぎ、他の統計で推計するしかない。
 その一つに、経済産業省の「商業動態統計」があり、都道府県別、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州、沖縄の9経済産業局別にスーパー、百貨店の大型店の売上高などが毎月発表されている。地域の経済状況、景気の実感は個人消費に反映されると考えられるため、商業動態統計の法人需要がある百貨店を除いてスーパーの売上高、かつ、実態を示すと考えられる新規店を除いた既存店ベースの前年比で比較する。ただし、都道府県単位の既存店ベースは発表されていないところもあり、経済産業局ベースで地域の経済状況を調べる。ちなみに、売上高の伸びは05〜07年の3年間で既存店ベースの全国の大型小売店合計は個人消費の不振とデフレ経済を反映して2.3%減、1.2%減、1.0%減、うち、百貨店0.5%減、0.7%減、0.7%減、スーパー3.6%減、1.6%減、1.3%減で、所得格差の拡大の反映か好調な企業収益と相対的に百貨店の落ち込みが少ない。


 その中で、06年の全国のスーパーの売上高1.6%減に対し、経済産業局別で最も減少幅が少ないのは中部の1.1%減、逆に大きいのは東北の2.4%減である。中部は輸出が好調な自動車産業の比重が大きく、人手不足がいわれていたことから、スーパー売上高の減少幅が少ないのは、相対的に経済状態が良いことを示している。ただし、最も低い東北との格差は1.3ポイントしかなく、格差があるというほどではない。


 ところが、07年には中部は全国と同じ1.3%減になり、それに代わって最も減少幅が少ないのは中国になり、0.6%減である。一方、最も大きいのは四国の3.3%減で、格差は2.7ポイントに拡大している。全体的には中国だけが例外的で、関東、中部、近畿の大都市圏が相対的に減少幅が少なく、その他の地方が大きいという格差がみられる。全国のスーパーの売上高は06年1.6%減、07年1.3%減、消費者物価指数の上昇率はこの間、0.3%増、0.0%の横這いであり、売上が底入れ気味になっている中で、地域間格差が拡大していることになる。


 四半期別にみると、図はデータの数が多いと分かり難いため、大都市圏の関東、中部、近畿と地方の四国、九州だけを取り上げたが、これからも地域間格差拡大傾向がより顕著になる。08年1〜3月期は全国が0.1%増と僅かに前年水準を上回っているが、高い方は近畿1.0%増、関東0.9%増、中国0.5%増、中部0.3%減、低い方は四国4.3%減、北海道2.8%減である。同様に、4〜6月期は全国が1.6%減になり、関東0.6%減、中国1.4%減、近畿1.7%減、中部1.8%減に対し、四国と北海道4.8%減、九州2.6%減である。結局、中国は例外として、大都市圏と地方との格差現象が再現している。ただし、大都心圏の中で、関東が長期的に上位を維持しているのに対し、中部は国内需要の減少に加えて、主力の海外市場の売国の落ち込みで07年から自動車産業に陰りがみられことが影響している。その一方で、大阪の地盤沈下がいわれる近畿は相対的に悪くはない。大阪が悪くても、その他の府県が比較的悪くはないということがある。


 いずれにしても、長期にわたる景気回復・拡大の結果、06年までは地域間格差が縮小までは至らなくても、より拡大することには歯止めが掛かりつつある状態にあった。ところが、07年に入って再び拡大傾向がみられるようになっている。07年の前半はまだ景気は拡大が続いていたといえるが、後半は頭打ちになっており、景気に対して地方は遅れて回復し、下降時には先に悪化する飛行機の後輪という構造がみられる。


今回の平成17年度県民経済計算について 景気関連指標の一つに企業倒産件数がある。現状は景気はピークを打ち、上昇から下降に向かっていると判断されることから、倒産件数は増える時期に当たる。当然、景気がピークを打ち、企業は売れ行きが落ちて収益が悪化に向かってといっても、直ぐに倒産するわけではない。ピークを打って下降に向かったとしても、暫くは売上げや収益の水準自体は高く、また、企業はそれまでの蓄積もあるため、倒産までには時間が掛かる。景気がボトムを打って、下降から回復・上昇に向かう時は逆になり、いずれにおいても、倒産件数は景気に対しては遅行指標になる。


 ところが、企業倒産件数を東京商工リサーチの調査(負債総額1,000万円以上)でみると、すでに2005年度の1万3,170件、前年度比16件、0.1%減を底に、景気回復が続いていた06年度に1万3,337件、前年度比167件、1.3%増と5年振りの増加となった。ただし、増加したといっても少数である。月別では上下があり、10月から12月は3カ月連続で前年水準を下回り、12カ月中5カ月は減少している。倒産が増え始めたというほどではない。また、06年度の負債総額は前年度比11.0%減の大幅減になっており、小口倒産が多かったことになる。


 倒産件数の多い倒産主要産業でみると、06年度に前年度より増加したのは、卸売業5.5%増、小売業3.7%増、、建設業2.2%増などであり、主要産業以外では情報通信業19.3%増、サービス他2.3%増などになる。卸売業、小売業、サービス他は個人消費不振の影響が大きく、情報通信業は経営基盤の弱いソフトウェア業が中心で、05年度比での増加件数では卸売業100件、建設業85件、小売業64件、情報通信業56件などで、昔から件数の多い建設業を除けば、個人消費関連が目立つ。


 07年度は1万4,366件、1,029件、前年度比7.7%増の2年連続の増加である。月別では12月に前年水準を下回っただけで、それも1.0%減の小幅減少でしかない。負債総額も5,000億円を超える大型倒産もあり、7年振りに前年を上回る6.4%増で、企業倒産は増加基調に入ったといえる。


 産業の10分類別では、もともと件数の少ない農林業鉱業以外の9産業揃って増加した。主要な産業では製造業221件、11.8%増、卸売業169件、8.8%増、建設業215件、5.5%増などで、06年度までの減少から一転して、2桁台の高い伸びになっていることが注目される。主要産業以外では運輸業57件、13.5%増、情報通信業42件、12.1%増、サービス業他222件、8.8%増、不動産業35件、7.9%増などとなっており、軒並み増加し、運輸業や情報通信業は2桁台の伸びである。


 06年度に続き情報通信業が多いほか、製造業は原材料価格、運輸業は燃料価格の値上がりによるコスト増の一方で、価格を値上げできない影響と考えられる。建設業では建築基準法改正による建築着工の遅れによる倒産が215件中24件、1割強含まれる。また、地価が下落に転じたといわれる不動産業も増加していることが注目される。06年度は倒産件数が増加したといっても増加数は少なく、増加したとはいえないかもしれないが、07年度の増加傾向は否定できない。


 08年度はまだ4、5月の2カ月分しか分からないが、4月増加、5月減少で、08年4〜5月の前年同期比は74件、3.0%増と07年度の伸びを下回っている。主要産業では建設業が74件、11.1%増になっている以外はいずれも微減である。主要産業以外では不動産業16件、13.7%増、運輸業9件、9.8%増が増えているだけである。特に、今回の原材料価格の上昇の影響が大きい製造業が1.1%減と落ち着きを取り戻していることが注目される。建設業は建築基準法改正の影響があることを考慮すれば、実態はもっと増加数は少ないことになる。もちろん、2カ月だけで08年度の倒産状況を判断できないが、今のところ、倒産件数が急増していく状態ではないといえる。


 もともと、景気が前回のこのレポートに書いたように07年10月または08年2月が景ピークとしても、現状の景気水準はまだ高いことから倒産件数がそれほど増えないことは不思議ではない。それよりも、景気に遅行指標になる倒産件数が06、07年度に景気に先行して増加していることが従来とは異なる。金融機関の融資姿勢が厳しくなったためという見方もあるが、昔から景気の先行きがおかしくなれば、金融機関の融資行動は同様であったと聞いている。


 今回の景気回復・上昇局面の特徴として、産業間、企業間格差が大きいことがあげられる。特に、中小企業の回復力が弱いことが指摘でき、これが企業倒産に反映していると考えられる。企業倒産以外でも多くの指標で経済法則と異なる現象がみられ、経済常識では判断できないのが最近の日本経済である。


地域別大型店売上高の前年比伸び率の推移


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| 2008年08月01日 | 景気 | comments(0) | - |
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