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景気に先行した企業倒産件数の増加
ところが、企業倒産件数を東京商工リサーチの調査(負債総額1,000万円以上)でみると、すでに2005年度の1万3,170件、前年度比16件、0.1%減を底に、景気回復が続いていた06年度に1万3,337件、前年度比167件、1.3%増と5年振りの増加となった。ただし、増加したといっても少数である。月別では上下があり、10月から12月は3カ月連続で前年水準を下回り、12カ月中5カ月は減少している。倒産が増え始めたというほどではない。また、06年度の負債総額は前年度比11.0%減の大幅減になっており、小口倒産が多かったことになる。
倒産件数の多い倒産主要産業でみると、06年度に前年度より増加したのは、卸売業5.5%増、小売業3.7%増、、建設業2.2%増などであり、主要産業以外では情報通信業19.3%増、サービス他2.3%増などになる。卸売業、小売業、サービス他は個人消費不振の影響が大きく、情報通信業は経営基盤の弱いソフトウェア業が中心で、05年度比での増加件数では卸売業100件、建設業85件、小売業64件、情報通信業56件などで、昔から件数の多い建設業を除けば、個人消費関連が目立つ。
07年度は1万4,366件、1,029件、前年度比7.7%増の2年連続の増加である。月別では12月に前年水準を下回っただけで、それも1.0%減の小幅減少でしかない。負債総額も5,000億円を超える大型倒産もあり、7年振りに前年を上回る6.4%増で、企業倒産は増加基調に入ったといえる。
産業の10分類別では、もともと件数の少ない農林業鉱業以外の9産業揃って増加した。主要な産業では製造業221件、11.8%増、卸売業169件、8.8%増、建設業215件、5.5%増などで、06年度までの減少から一転して、2桁台の高い伸びになっていることが注目される。主要産業以外では運輸業57件、13.5%増、情報通信業42件、12.1%増、サービス業他222件、8.8%増、不動産業35件、7.9%増などとなっており、軒並み増加し、運輸業や情報通信業は2桁台の伸びである。
06年度に続き情報通信業が多いほか、製造業は原材料価格、運輸業は燃料価格の値上がりによるコスト増の一方で、価格を値上げできない影響と考えられる。建設業では建築基準法改正による建築着工の遅れによる倒産が215件中24件、1割強含まれる。また、地価が下落に転じたといわれる不動産業も増加していることが注目される。06年度は倒産件数が増加したといっても増加数は少なく、増加したとはいえないかもしれないが、07年度の増加傾向は否定できない。
08年度はまだ4、5月の2カ月分しか分からないが、4月増加、5月減少で、08年4〜5月の前年同期比は74件、3.0%増と07年度の伸びを下回っている。主要産業では建設業が74件、11.1%増になっている以外はいずれも微減である。主要産業以外では不動産業16件、13.7%増、運輸業9件、9.8%増が増えているだけである。特に、今回の原材料価格の上昇の影響が大きい製造業が1.1%減と落ち着きを取り戻していることが注目される。建設業は建築基準法改正の影響があることを考慮すれば、実態はもっと増加数は少ないことになる。もちろん、2カ月だけで08年度の倒産状況を判断できないが、今のところ、倒産件数が急増していく状態ではないといえる。
もともと、景気が前回のこのレポートに書いたように07年10月または08年2月が景ピークとしても、現状の景気水準はまだ高いことから倒産件数がそれほど増えないことは不思議ではない。それよりも、景気に遅行指標になる倒産件数が06、07年度に景気に先行して増加していることが従来とは異なる。金融機関の融資姿勢が厳しくなったためという見方もあるが、昔から景気の先行きがおかしくなれば、金融機関の融資行動は同様であったと聞いている。
今回の景気回復・上昇局面の特徴として、産業間、企業間格差が大きいことがあげられる。特に、中小企業の回復力が弱いことが指摘でき、これが企業倒産に反映していると考えられる。企業倒産以外でも多くの指標で経済法則と異なる現象がみられ、経済常識では判断できないのが最近の日本経済である。
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倒産件数の多い倒産主要産業でみると、06年度に前年度より増加したのは、卸売業5.5%増、小売業3.7%増、、建設業2.2%増などであり、主要産業以外では情報通信業19.3%増、サービス他2.3%増などになる。卸売業、小売業、サービス他は個人消費不振の影響が大きく、情報通信業は経営基盤の弱いソフトウェア業が中心で、05年度比での増加件数では卸売業100件、建設業85件、小売業64件、情報通信業56件などで、昔から件数の多い建設業を除けば、個人消費関連が目立つ。
07年度は1万4,366件、1,029件、前年度比7.7%増の2年連続の増加である。月別では12月に前年水準を下回っただけで、それも1.0%減の小幅減少でしかない。負債総額も5,000億円を超える大型倒産もあり、7年振りに前年を上回る6.4%増で、企業倒産は増加基調に入ったといえる。
産業の10分類別では、もともと件数の少ない農林業鉱業以外の9産業揃って増加した。主要な産業では製造業221件、11.8%増、卸売業169件、8.8%増、建設業215件、5.5%増などで、06年度までの減少から一転して、2桁台の高い伸びになっていることが注目される。主要産業以外では運輸業57件、13.5%増、情報通信業42件、12.1%増、サービス業他222件、8.8%増、不動産業35件、7.9%増などとなっており、軒並み増加し、運輸業や情報通信業は2桁台の伸びである。
06年度に続き情報通信業が多いほか、製造業は原材料価格、運輸業は燃料価格の値上がりによるコスト増の一方で、価格を値上げできない影響と考えられる。建設業では建築基準法改正による建築着工の遅れによる倒産が215件中24件、1割強含まれる。また、地価が下落に転じたといわれる不動産業も増加していることが注目される。06年度は倒産件数が増加したといっても増加数は少なく、増加したとはいえないかもしれないが、07年度の増加傾向は否定できない。
08年度はまだ4、5月の2カ月分しか分からないが、4月増加、5月減少で、08年4〜5月の前年同期比は74件、3.0%増と07年度の伸びを下回っている。主要産業では建設業が74件、11.1%増になっている以外はいずれも微減である。主要産業以外では不動産業16件、13.7%増、運輸業9件、9.8%増が増えているだけである。特に、今回の原材料価格の上昇の影響が大きい製造業が1.1%減と落ち着きを取り戻していることが注目される。建設業は建築基準法改正の影響があることを考慮すれば、実態はもっと増加数は少ないことになる。もちろん、2カ月だけで08年度の倒産状況を判断できないが、今のところ、倒産件数が急増していく状態ではないといえる。
もともと、景気が前回のこのレポートに書いたように07年10月または08年2月が景ピークとしても、現状の景気水準はまだ高いことから倒産件数がそれほど増えないことは不思議ではない。それよりも、景気に遅行指標になる倒産件数が06、07年度に景気に先行して増加していることが従来とは異なる。金融機関の融資姿勢が厳しくなったためという見方もあるが、昔から景気の先行きがおかしくなれば、金融機関の融資行動は同様であったと聞いている。
今回の景気回復・上昇局面の特徴として、産業間、企業間格差が大きいことがあげられる。特に、中小企業の回復力が弱いことが指摘でき、これが企業倒産に反映していると考えられる。企業倒産以外でも多くの指標で経済法則と異なる現象がみられ、経済常識では判断できないのが最近の日本経済である。
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| 2008年07月01日 |
景気 |
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