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正社員が増加しても所定内給与が増えない要因
雇用形態別の雇用者数は厚生労働省の「労働力調査詳細集計」(2001年までは2月実施の「労働力特別調査」)で集計されている。これによると、役員を除く雇用者は99、00年の2年連続で減少しただけで、その後は増加している。一方、正規職員・従業員(以下、正社員)は97年の3,812万人をピークに、05年の3,374万人まで減少してボトムになった後、06年3,411万人、07年3,441万人へと増加に転じている。雇用者数の増加と正社員の減少のギャップは非正規職員・従業員(同、非正社員)の増加によっており、正社員が06年から増加に転じていても、全体に占める非正社員比率は05年の32.6%から、06年33.0%、07年33.5%とまだ拡大を続けている。
ただ、非正社員の雇用構造は変化しており、パート、派遣社員、契約社員・嘱託等が増えているのに対し、アルバイトは頭打ち傾向にある。増えている雇用の中では近年、契約社員・嘱託等の伸びが目立っている。2006年4月より「改正高年齢者雇用安定法」で雇用延長が企業に義務づけられる以前から、それを先取りしたか、企業が能力評価で定年退職者の定年延長している影響であろう。一方、アルバイトの供給源は学生と就職できなかった失業者であり、景気回復で就職が増えれば、後者の供給が減るためと推測できる。
正社員比率の低下に歯止めが掛かっていない、つまり、相対的にまだ非規社員雇用の伸びの方が高くても、絶対数が増加に転じたことは、景気にはプラス効果になる。また、05年まで正規社員比率の減少幅は年に1ポイントほどであったのが、06年0.4ポイント、07年0.5ポイントと小幅に留まっている。
これは労働者の平均賃金にも当然、反映し、賃上げ率は景気回復で低水準でも増えていることから、平均賃金が上昇する条件になる。ところが、「毎月勤労統計調査」の04年度、05年度、06年度、07年度の伸び率は決まって支給する給与でこの間、0.4%減、0.5%増、0.2%減、0.2%増、うち所定内給与で0.7%減、0.3%増、0.4%減、0.1%増であり、増加しているとはいえない。
正規社員が増えても給与が増えない乖離現象の要因として、正社員の構造が変化していることが考えられる。例として、雇用統計や事業所・企業統計調査などの資料では不明だが、正社員でも非正社員に近い請負企業の社員が増えていることが挙げられる。偽装請負が問題になったように、請負は実態としては労働条件が派遣社員に近いところが多い。
請負の発注元企業は人件費コストを下げる目的で、派遣社員や請負企業を利用している。この中で、請負の場合、請負企業は自社の社員として採用し、請負していれば、労働条件に関係なく、統計では正社員になる。この形であれば、正社員が増えても、賃金水準は低いままになる。正社員の雇用が増えていても、請負による正社員雇用がかなりいると推測される。
もちろん、低コストを求められる請負でも、独自の技術を持つ企業はある。それによって、発注元企業より生産性が高く、比較的高賃金を払える企業も当然、存在することは否定できない。現実は、あってもそれは一部で、大部分は発注元企業より低賃金で低コストを実現している企業と考えれば、正社員増と賃金の乖離が説明できる。理屈上では、生産性に優れ、発注元より賃金水準の高い請負労働もあり得るが、現実には存在しないであろう。
日本経済の構造変化が進んでいる状況では、従来の統計評価は判断を誤る可能性が高くなり、構造変化が反映するような調査が望まれる。工業統計、事業所・企業統計調査では、請負でも製造業に従事していれば、工業統計の対象になる製造業に分類され、請負かどうかは分からない。例えば、作業場を自社で所有しているかどうかを調査の対象にすれば、その企業の性格を知ることができ、企業、雇用の実態を知ることができるようになる。調査内容も時代と共に変える必要がある。
※第1回から第10回までの内容をPDFファイルしたレポートも提供中です。
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ただ、非正社員の雇用構造は変化しており、パート、派遣社員、契約社員・嘱託等が増えているのに対し、アルバイトは頭打ち傾向にある。増えている雇用の中では近年、契約社員・嘱託等の伸びが目立っている。2006年4月より「改正高年齢者雇用安定法」で雇用延長が企業に義務づけられる以前から、それを先取りしたか、企業が能力評価で定年退職者の定年延長している影響であろう。一方、アルバイトの供給源は学生と就職できなかった失業者であり、景気回復で就職が増えれば、後者の供給が減るためと推測できる。
正社員比率の低下に歯止めが掛かっていない、つまり、相対的にまだ非規社員雇用の伸びの方が高くても、絶対数が増加に転じたことは、景気にはプラス効果になる。また、05年まで正規社員比率の減少幅は年に1ポイントほどであったのが、06年0.4ポイント、07年0.5ポイントと小幅に留まっている。
これは労働者の平均賃金にも当然、反映し、賃上げ率は景気回復で低水準でも増えていることから、平均賃金が上昇する条件になる。ところが、「毎月勤労統計調査」の04年度、05年度、06年度、07年度の伸び率は決まって支給する給与でこの間、0.4%減、0.5%増、0.2%減、0.2%増、うち所定内給与で0.7%減、0.3%増、0.4%減、0.1%増であり、増加しているとはいえない。
正規社員が増えても給与が増えない乖離現象の要因として、正社員の構造が変化していることが考えられる。例として、雇用統計や事業所・企業統計調査などの資料では不明だが、正社員でも非正社員に近い請負企業の社員が増えていることが挙げられる。偽装請負が問題になったように、請負は実態としては労働条件が派遣社員に近いところが多い。
請負の発注元企業は人件費コストを下げる目的で、派遣社員や請負企業を利用している。この中で、請負の場合、請負企業は自社の社員として採用し、請負していれば、労働条件に関係なく、統計では正社員になる。この形であれば、正社員が増えても、賃金水準は低いままになる。正社員の雇用が増えていても、請負による正社員雇用がかなりいると推測される。
もちろん、低コストを求められる請負でも、独自の技術を持つ企業はある。それによって、発注元企業より生産性が高く、比較的高賃金を払える企業も当然、存在することは否定できない。現実は、あってもそれは一部で、大部分は発注元企業より低賃金で低コストを実現している企業と考えれば、正社員増と賃金の乖離が説明できる。理屈上では、生産性に優れ、発注元より賃金水準の高い請負労働もあり得るが、現実には存在しないであろう。
日本経済の構造変化が進んでいる状況では、従来の統計評価は判断を誤る可能性が高くなり、構造変化が反映するような調査が望まれる。工業統計、事業所・企業統計調査では、請負でも製造業に従事していれば、工業統計の対象になる製造業に分類され、請負かどうかは分からない。例えば、作業場を自社で所有しているかどうかを調査の対象にすれば、その企業の性格を知ることができ、企業、雇用の実態を知ることができるようになる。調査内容も時代と共に変える必要がある。
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| 2008年06月01日 |
雇用 |
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