スポンサードリンク

消費者物価は上昇するか

 マスコミがこのところ物価の上昇を思わせる話題を取り上げるようになった。景気が長期上昇を続けていることを背景に、原油価格市況の再上昇で国内のガソリン価格が値上げされている。


加えて、食品価格の値上げ発表が相次いでいる。輸入穀物は世界的な異常気象で生産に不安があるところに、穀物が食料でなく、ガソリン代替のアルコール燃料の原料として使われるようになり、供給不足傾向になっているからである。
 原油価格の上昇は輸送コスト上昇要因にもなり、その影響は大きい。また、ガソリン用に作物転換が進み、作付け面積が減っている穀物の大豆も食用油、豆腐、醤油などの原料として幅広く使われ、また、用途の広い小麦も異常気象による減産で値上がりしており、多くの食料品の値上がり材料になる。現実にこれらを原料とする食料品の値上げ発表が増えている。個々の商品の値上げを並べてマスコミに取り上げられれば、デフレ時代は終了し、インフレまでには至らなくても、物価上昇時代に入りつつあるような雰囲気ができてくる。国内でも天候の異常が続いているため、野菜の値上がりが激しく、主婦層への心理的影響もある。


 しかし、経済的現象は単純ではない。収入が増えない状況下で、物価上昇不安はむしろ個人消費を冷やす効果もあり、そうなればデフレ状態を長引かせることになる。現状は、原油価格高騰は一巡傾向になり、これによる消費者物価上昇は総務省「消費者物価指数」でみて、2006年に一巡し、07年にはいって前年比でゼロかマイナス成長になっており、8月の総合消費者物価は前年同月比0..2%減のマイナスである。


 野菜高騰要因は昨年夏も天候不順で値上がりしていたため、前年比では上昇要因にはならず、8月の食料の前年同月比上昇率は前年水準が高かったこともあり、0.4%減である。原油価格上昇の影響が大きい光熱・水道は06年の前年比上昇率の高い時で4%台であった。8月は前年同月比0.2%増でしかなく、原油価格の再上昇といっても06年の時から比較すれば上昇率は低い。消費者物価の10大品目で前年同月比で上昇が目立つのは被服及び履物と保健医療の0.8%増、教育の0.7%増であり、高くても1.0%増にもならない。


 個別の商品では上昇でも、10大品目に集約化すれば、上昇といえるほどの品目はない。もちろん、原油価格の値上がりや食料品の原料コスト上昇を、今まで製品価格に転嫁せずにいたのが限界になり、各社・店などが一斉値上げに乗り出すことも考えられる。例えば、規制緩和で競争激化の影響もあるが、タクシーの値上げ申請が相次いで行われ、地域によっては値上げが認められているところもある。また、小麦製品の値上げはこれから実施するということであり、まだ消費者物価指数には反映されていない。


 値上げが実現するためには基本的に個人消費の需給環境が改善する必要がある。つまり、安定的に所得が増え、安心して消費を増やせるような環境ができることである。現実には所得は増えていない。最近の特徴として、企業の賃金抑制意識が強いことが挙げられる。その典型が小売・飲食業の主要戦力であるパートの賃金にみられる。パートの労働需給は長期的に1を大きく上回って推移、つまり、長期的な労働力不足にあるにもかかわらず、ほとんど引き上げられていないというのが実態である。


 その背景に、小売・飲食業が個人消費不況から商品価格を上げられないことがあり、パート不足でも賃金を抑制せざるを得ない状態が続いている。例外的な物は古紙の上昇の影響を受けている紙製品ある。これは古紙が輸出に向けられるため、需給関係が国内要因と関係なく形成されていることにある。通常は、メーカー段階で何%の値上げといっても、最近のように需要が減少すれば、小売段階でそのまま値上げを実現することは難しくなり、それがメーカーに逆流し、値上げが通らなくなる。逆にいえば、パート賃金が上昇に向かうようになれば、商品価格を上げられる環境になったと小売業が判断したと推測でき、デフレは解消と判断できる。


 当面の物価動向を推測すると、国際商品価格の上昇の影響はそのままでなくても部分的には避けられない。このため、引き続き値下がりする工業製品はあっても、全体としては消費者物価上昇率のゼロ・マイナス基調は終了する可能性が高いが、上昇しても前年比で1%にも達しない程度に留まると推測される。


 ただし、これは為替レートが大きく変化しないことが前提になる。為替レートは金利差から円安基調が続いていたが、米国の住宅ローン問題から対ドルレートで上昇に転じ、9月は1ドル=110円台半ばで推移している。為替レートは投機で大きく動くため、100円近く、さらには100円を割り込む可能性も否定できない。円高が進めば、景気も悪化し、ドル建ての国際商品価格は円建てで値下がりするため、再び消費者物価指数がマイナスになることも否定できない。



消費者物価の前年比推移





※第1回から第10回までの内容をPDFファイルしたレポートも提供中です。
 PDFファイルにて経済レポートを入手した方は、こちらをどうぞ。



コミュニティー・プランナーズホームページへ戻る
| 2007年10月01日 | 景気 | comments(0) | - |
スポンサードリンク

コメント
コメント投稿フォーム:
 上の情報を次回も利用する
Copyright (C) 消費者物価は上昇するか | 経済への視点. All Rights Reserved.