スポンサードリンク

輸出の議論は貿易統計の数量指数で

 前回のレポートで景気が変調をもたらしている要因として、米国向けの減少から輸出の数量指数が2月からほぼ前年並水準まで低下していることを指摘したが、その後も輸出に関して議論の対象にはなっていない。理由として、金額ベースでは依然として高い伸びをしていることが挙げられる。


経済成長率を議論する場合は実質GDP(国内総生産)を取り上げ、名目GDPは物価上昇との関係で議論の対象になる程度である。GDPの需要構成項目(正確にはGDE=Gross Domesutic Expenditureの構成項目になる)としての輸出は当然、実質である。通常、貿易統計で何月の輸出の伸びは前年比○○%増・減という場合、金額ベースになる。それも円ベースで、国際商品はドルベースであるため、為替レートの影響も受け、これを輸出動向の判断には使えない。
 輸出金額の前年比では2桁台の伸びから、2006年12月には1桁台の伸びにまで下がったが、その後は10%を挟んだ推移である。高い伸びとはいえなくても、不振というほどではなく、この数字をみる限り、輸出を心配する必要はない。


 為替レートは前年比推移でやや円安程度で、この面からの影響は少ない。それよりも、国際商品市況の値上がりで、鉄鋼、非鉄、プラスチックなどの価格が上昇し、これが輸出金額を引き上げる効果がある。輸出価格の値上がりで輸出金額が膨らんでも、実質ベースで議論する景気との関係では好調とはいわない。もちろん、個々の企業や産業ではそれが好収益、好況感をもたらすことはある。


 輸出に関しては、実質GDPとは推計の仕方が異なり、同じではないが、財務省が貿易統計で金額ベース以外に、基準年度(現在は2000年=100)で固定して推計する数量指数を貿易指数として発表している。輸出数量指数(対世界)でみると、明らかに輸出は06年夏頃から頭打ち傾向がみられる。07年2月には前年比1.3%減と05年7月以来のマイナス成長になり、4月までほぼゼロ成長である。金額ベースのように楽観できる状態ではない。


 05年の時は年初からほぼゼロ成長で推移し、景気後退の可能性もあった。しかし、その後は輸出が回復し、景気後退までには至らなかった。今回も5月は前年比6.1%増と持ち直しており、一時的な輸出不振で終わる可能性もある。


 貿易指数は主要な国・地域別にも発表され、対米国の輸出数量指数は06年秋頃から急速に伸びが低下してきた。07年3月には前年比4.2%減のマイナス成長になり、4月同13.1%減、5月同13.2%減と、2桁台のマイナス成長が続いている。5月に全体が持ち直したのは、対アジアが4月まで1桁台の伸びであったのが、5月に12.0%増と急伸したからである。


 06年度の輸出額77兆4,624億円のうち、アジアは36兆8,536億円、全体の47.6%と半数近く占め、米国は17兆1,286億円、同22.1%とアジアの半分以下でしかない。中国は香港と合わせれば15兆6,800億円で、米国並みの水準に近づいている。このため、日本の輸出、ひいては日本経済への米国経済の影響力は大したことはないという意見もある。つまり、懸念されていた米国の住宅需要の悪化が日本経済に深刻な打撃をもたらさないという判断である。


 しかし、アジア地域もかつての日本のように対米輸出で成長している面があり、間接輸出を含めれば、まだ影響は大きいと考えられる。中国が元の切り上げを渋っているのもその要因が無視できないからである。現状は、輸出減から景気後退まで進行する可能性は少ないと考えられるが、輸出を貿易統計で議論する場合、数量指数でやらなければ意味がない。


 輸出の先行きに関しては、輸出が対米以外の地域・国で下支えされている要因として為替レートの円安効果が無視できないため、為替レートが問題になる。対ユーロでは市場最安値を更新し続け、対ドル以外でも円安傾向にある。海外からだけでなく、日本政府も国際的な資金の流れの面から、円安に対して懸念を表明するようになった。為替レートが急激に円高に振れる可能性がでてきている。


 個人消費は所得が増えない中で、年金不安に増税が加わり、回復する基本的な条件を欠いたままの状況にある。かつ、海外市場が良好とはいえない状態では、急速な円高は景気転換の契機になる。もちろん、どの国の政府も日本の景気悪化を望んでいるわけではないが、為替レートは勢いが付くと止めるのは難しい。


図 輸出金額と地域別輸出数量の前年比推移


※第1回から第10回までの内容をPDFファイルしたレポートも提供中です。
 PDFファイルにて経済レポートを入手した方は、こちらをどうぞ。



コミュニティー・プランナーズホームページへ戻る
| 2007年07月01日 | 貿易 | comments(0) | - |
スポンサードリンク

コメント
コメント投稿フォーム:
 上の情報を次回も利用する
Copyright (C) 輸出の議論は貿易統計の数量指数で | 経済への視点. All Rights Reserved.