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求人数は減少、労働需給は先行指標?

 景気の上昇期と後退期の転換の判断に使う景気動向指数の一致系列が07年1月から3カ月連続で後退期になる50水準を下回ったことから、景気が転換するのではという懸念の声が出ている。

 実際、今回の景気局面で景気転換の最大要因になると考えられる輸出は、数量指数が2月からほぼ前年並水準まで低下しており、上昇期の終了という事態も否定できない。輸出は米国向けが減少に転じていることが大きく効いている。

 ただし、現状が景気後退局面に入ったというのは早計で、景気は一時的なもたつきで済み、景気再上昇という可能性もある。
 06年末の各機関の07年度経済見通しでは、米国の住宅バブル崩壊による民間最終消費への打撃は軽微で済み、日本の輸出への影響も限定的で、景気後退はないというのがほとんどであった。

 今回の景気の推移の中で、一般的にはあまり注目されていないが、先行的に変化の兆しが厚生労働省が発表する有効求人倍率にみられる。有効求人倍率(新規学卒者を除きパートを含む、季節調整値)は99年5、6月の0.46を底に、05年12月に92年9月以来、13年振りに1水準を上回った。その後も上昇して06年7月に1.09になり、これを天井に徐々に低下し、07年3月は1.03、4月は少し盛り返して1.05である。1水準を上回っているといっても、雇用の増加はパートが中心で、正社員は少ないため、労働者の雇用回復感は乏しいままピークを過ぎている。

 つまり、労働需給の有効求人倍率が景気動向指数の変化に半年ほど先行してことになる。ところが、有効求人倍率は景気動向指数の中では一致系列に入る。また、有効求人倍率の変化を受けて増減する雇用者数は景気に対して遅行指標になる。理由は、景気が悪くなったからといって、すぐに解雇はできない。逆に、景気が良くなっても、すぐには雇用を増やさず、残業などで対応するからである。

雇用形態別求織件数(前年同月比)の推移


 有効求人倍率を求職と求人の需給の両面からみると、まず、求職者数は前年比で04年から07年4月まで長期的に減少を続けている。一方、求人数は伸びてきていたのが、07年2月から減少に転じ、2月1.8%減、3月3.8%減、4月4.1%減と減少幅が拡大する方向にある。求人側、つまり企業は求人を抑制する政策に転換したことになる。もちろん、これから再転換の可能性もあるが、4月までの実績では抑制を強めている。

 これを雇用形態別にみると、求職者数では、正社員と正社員でない長期雇用(求職では分離されていない)の常用(パートタイムを除く)と臨時・季節(パートタイムを含む)は4月まで減少傾向にある。ところが、常用的パートタイムはほぼ前年並みの推移である。ちなみに、06年度で常用(パートを除く)1,914万人、臨時・季節68万人、常用的パート595万人となっている。常用(パートを除く)で希望の職、例えば、正社員の職が見つからないため、一部が常用的パートの方に廻っているのかもしれない。

 一方、求人数では、正社員がいち早く06年11月から、常用(正社員、パートを除く)、常用的パートタイム、臨時・季節(パートを含む)はいずれも07年2、3月から減少に転じている。それぞれの06年度の人数は正社員1,201万人、常用(正社員、パートを除く)553万人、常用的パートタイム800万人、臨時・季節1,870万人である。

 有効求人倍率は06年9月がピークといっても、その後の落ち込みは小幅であり、顕著な変化はみられない。景気回復で就業者が増えて求職者数が減少しているためだが、求人数が減少していることが懸念材料になる。

雇用形態別求人数(前年同月比)の推移


 企業は06年秋頃から正社員の雇用に慎重になったことは、新卒者の採用を増やしているためとみることもできる。しかし、求人数の3分の2を占める臨時・季節が4月には11.0%減と2桁台の減少になっていることから判断すると、新年度に入って企業の景気が急変して悪化した可能性がある。現状は雇用削減までには至っていないため、景気が悪化したという雰囲気はまだ広がっていない。しかし、輸出の伸びも止まっており、景気の先行きに関しては楽観できない。

 日本経済の構造が変わってきていることから、景気動向指数が従来とは異なるパターンを描くことは不思議ではない。例えば、雇用でみれば、短期的調整が容易なパートが増えていることは、雇用者数変化が従来より早くなると予想できる。過去の経験から景気をみるのは、判断を誤る危険性が大きくなっている。また、総務省が発表した4月の完全失業率(季節調整値)は3.8%と98年3月以来、9年振りに3%台になった。雇用者数、逆は失業者数は遅行指標だが、これで雇用に関して楽観する意見もある。集計したマクロの数字だけでなく、その中身の細部や他の指標も含めて総合的に分析する必要がある。


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| 2007年06月01日 | 雇用 | comments(0) | - |
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