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地域間で目立つ工業の出荷額と雇用との乖離格差

 2006年12月1日の当経済レポートで、新規工場立地が03年以降、関東臨海、東海、近畿内陸・臨海の大都市圏に回帰していることを指摘した。工業の生産活動は既存工場と新規立地工場が行なうわけで、新規立地が大都市圏に回帰しているからといって、必ずしも大都市圏と地方圏との工業格差が拡大するわけではない。大都市圏の工場立地が増える背景に、工場閉鎖で工場用地が提供されたかもしれないからである。この関係は経済産業省「工業統計表」の「用地・用水編」で分析できるが、用地・用水編の2005年版はまだ発表になっていない。ちなみに、現在は「速報」の次に発表される「概要版」の05年版が発表されているだけである。閉鎖された工場跡地への立地であれば、大都市圏に工場が立地しても、工業生産の伸びは大きくはならない。
「工業統計表」の従業者数4人以上統計では、製造品出荷額等(製品出荷だけでなく、修理なども含まれ、等が付く)は2003年から前年比プラスに転じている。日本経済は02年1月が底であり、そこからの穏やかな回復で、かつ02年は価格がまだ値下がり基調であり、前年比マイナスでも異常ではない。04、05年は03年の前年比1.6%増から両年共に同3.9%増へと着実な増加になっているが、これは原油や鉄鋼などの素材価格の値上がり効果も大きい。


事業所(工場)数、従業者数、出荷額の前年比伸び率推移


 一方、工場の従業者数は04年まで減少が続き、ようやく05年に前年比0.3%増と微増でもプラスになった。それだけ企業の従業員抑制志向は強い。

 工業統計は02年から出版が調査対象から外されて連続性がないため(図での02年の前年比は01年から出版を除いて計算してある)、今回の景気回復・拡大局面である02年から05年の3年間で地域別変化をみる。ちなみに、02〜05年の3年間の全体の伸び率は出荷額等10.0%増に対し、従業者数は2.0%減と乖離している。

出荷額等の地域別では、山陽が18.6%増と最も高く、以下、北九州13.8%増、東海13.1%増、関東内陸10.9%増が2桁増である。一方、北海道2.2%増、山陰5.1%増、関東臨海5.9%増、東北7.6%増などは低い。全体的には北低西高ということになるが、地域を都道府県単位でみればさらに大きな格差になる。

 県ベースで地方圏で高い伸びをしているのは岡山県、山口県、大分県などで、これらは石油化学コンビナートや製鉄所があるため、素材価格高騰の影響が現れている。

 大都市圏でも同様に製鉄所がある和歌山県も高い伸びだが、千葉県、神奈川県、大阪府、兵庫県はそれほどでもない。この1府3県は工業全体の出荷額等が大きく、鋼材や原油価格の上昇の影響が相対的に小さくなる。大都市圏では特に、東海の愛知県、三重県の伸びが顕著で、愛知県は好調な自動車産業、三重県は電気機械産業の立地効果と考えられる。

 工業出荷額等の増加が地域全体の発展に結び付くには、サービス業などの関連産業への波及や雇用拡大をもたらすかどうかによる。もともと、地方圏では関連産業の集積が弱いため、雇用面、つまり工場従業者増を通しての消費拡大、住宅建設の活発化などの経済効果が期待される。

 最近、工場で従業員の請負や人材派遣への切り替えが増えている。この工業統計表への影響に関しては、生産の請負は工業に分類されるため、新規事業所(工場)の従業者の増加となる。また、派遣労働者は直接雇用でなくても、工業統計では工場従業者として計上することになっており、工業統計に反映する。請負や人材派遣への切り替えで所属する事業所が変化しても、いずれも工場従業者となり、影響はない。

 出荷額等は増加しても、工場従業者数は全国で2.0%減だが、地域別では東海の2.0%増、南九州の0.2%増、関東内陸の0.1%増の3地域が増加している。出荷額等と従業者数との間には一定の相関性はみられるが、山陽や北九州のように出荷額等が高い伸びでも従業者数が減少している地域もある。当然、価格上昇による出荷額等の伸びでは、地域経済への波及効果は小さい。その中で、出荷額が高い伸びの東海は従業者数が顕著に増加しており、人手不足がいわれる愛知県を中心とする東海経済の好況を裏付けている。

 一方、北海道、北東北、関東臨海、近畿臨海、四国は5%前後の減少で、東海との格差は大きい。結局、関東臨海、近畿臨海は工場の立地は増えても雇用は減少であり、工場立地増の効果が少ないことを示している。それでも、関東臨海や近畿臨海は本社機能や他産業による経済発展が可能であるのに対し、北海道、北関東、四国などの打撃は大きいと考えられる。


地域別2002〜05年の工場従業員数と出荷額等の変化



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| 2007年05月01日 | 雇用 | comments(0) | - |
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