スポンサードリンク

「法人企業統計」にみる好調な企業収益と増えない給与-拡大する企業規模間格差-

 日本経済の成長力に力強さが欠ける要因として、個人消費の不振が取り上げられるようになった。その要因として企業が高収益を上げているにもかかわらず、消費の源泉である給与所得が増えないことが問題点として挙げられている。企業収益と賃金・給与の関係を議論する場合、個別には、企業収益は日本銀行の「企業短期経済観測調査(短観)」、上場企業の決算報告書、賃金は厚生労働省の「毎月勤労統計」などが使われる。しかし、できれば両方を統一的に集計される資料の方が望ましい。

 そのような統計資料として財務省「法人企業統計」がある。これには四半期毎と年1回の調査があり、四半期調査は速報性に優れているが、対象企業が資本金1,000万円以上と小零細企業が含まれないのに対し、年1回調査は小零細企業も含まれるが、発表が年度終了後、半年ほど後になり、それぞれ一長一短がある。ここでは最近時の統計を調べるために2006年10〜12月期まで発表されている四半期調査を使い、バブル発生前の1985年から06年までを対象として暦年ベースで集計、分析する。
 まず、資本金1,000万円以上の全産業の経常利益額はバブル期の89年の39兆円がピークとなり、93年の22兆円まで急速に落ち込んだ。これをボトムに一進一退で回復し、04年に45兆円、前年比27.7%増と急伸してバブル期の89年の記録を大幅に塗り替えた。その後も高い伸びで、06年は58兆円とバブル期の記録を5割も上回っている。また、売上高経常利益率では、バブル期ピークの89年が3.65%で、ボトムの93年が1.78%、そして、04年は3.64%とまだ89年には僅かに及ばないが、05年には3.88%で上回り、06年は3.96%となっている。

 一方、従業員数(臨時従業員は延従業時間数を1か月平均労働時間数で除したものを人数としている)はバブル崩壊後も増え続け、99年から02年に減少傾向になっただけで、その後は再び増え、06年には過去ピークの99年を上回っている。ところが、売上高に対する従業員給与比率は99年の10.65%がピークとなり、その後は下降傾向で、06年にはピークより1.24ポイント低い9.41%まで低下している。それでも92年の水準に戻っただけで、過去から比較すれば、水準としては低くないといえる。ただし、従業員数が増えているのに加えて売上高に占める給与(人件費)比率の高いサービス経済化が進んでいることから考えれば、対売上高給与比率は高くなってもおかしくはない。

 従業員数が増加しているにもかかわらず、給与比率が低下傾向にあるのは、給与水準が下がっているためである。平均給与は95年の435万円をピークにほぼ一貫して下がり続け、05年には396万円まで下落している。06年は397万円と微増である。正に企業収益と給与は乖離している。

 ちなみに、06年の給与を最も高かった95年の435万円で計算すれば、従業者数3,496万人で152兆円となり、06年の139兆円を13兆円ほど上回る。単純に、これがそのままコスト増になるとすれば、06年の売上高経常利益率は3.1%程度になる。バブル期ピークの89年よりは低いが、過去の推移からみれば、高水準といえる。

 今回の景気回復期の特徴として企業規模間の格差が従来以上に拡大していることが挙げられる。これをみるために全産業の資本金10億円以上の大企業で資本金1,000万円以上と同様に集計して比較すると、バブル期ピークの売上高経常利益率は88年で1年ずれるが、4.02%と0.37ポイント上回るだけでそれほど差はない。その後のボトムも93の3.10%で、0.32ポイント高いだけである。

 ところが、その後の回復力が異なり、06年には5.46%と1.50ポイントも高くなっている。経常利益額はバブル期ピークが90年の19兆円、ボトムは93年の11兆円、そして、06年は33兆円となっており、下落幅は大きいが、回復力も大きい。企業規模間格差は企業収益だけでなく、給与も拡大の方向にある。

 対売上高給与比率はピークの94年でも8.39と2.26ポイントも低いが、下がってきた06年は6.78%と2.63ポイントも低くなる。資本金1,000万円以上の企業収益改善の要因として人件費(給与)コストの削減があるが、同10億円以上の大企業ではより効果が大きいということができる。それでも、同10億円以上の大企業の平均給与は95年以降600万円前後で推移しており、下がっているわけではない。

 対売上高給与比率が低下しているのは従業員数が減少しているためで、93年をピークに一時的に増えたこともあったが、03年まで減少し、06年までは微増の推移になっている。微増でも売上高の伸びに対しては低いため、対売上高給与比率では顕著に低下している。その要因としては合理化、省力化による生産性向上効果と低コストの外注利用の両方が考えられる。この統計資料では判断できないが、最近の企業行動から判断すれば、後者の可能性が高い。この傾向は製造業でより強くなる。

資本金10億円以上の製造業の売上高経常利益率は、バブル期のピークが89年の5.89%、その後のボトムが93年の2.54%、06年が6.69%となっている。いずれも同10億円以上の全産業と比較しても高い。また、ボトムから06年までの上昇率は4.15ポイントで、全産業の3.36ポイントを上回っている。

 一方、対売上高給与比率はピークの94年の11.38%から06年の7.88%まで3.50ポイントも低下し、全産業の1.61ポイントを大幅に上回る低下である。

 ところが、平均給与は97年から99年まで2年間減額になっただけで、基調としては06年まで上昇している。06年の平均給与は700万円で、資本金10億円以上の全産業の603万円を16%、同1,000万円以上の全産業の397万円を76%も上回り、格差は拡大の方向にある。それでも対売上高給与比率が大幅に低下しているのは売上高の伸びと従業員削減の効果である。従業員数は93年をピークに一貫して減少し、06年まで下げ止まっていない。売上高が伸びている中で従業員数が減っているのは、製造業大企業が直接雇用を減らす一方で、派遣社員や請負会社を利用しているためと考えられる。

 派遣会社はサービス業であるため、製造業の調査対象にはならず、請負会社は製造業の請負であれば、製造業になる。しかし、資本金10億円以上の請負会社は無いと推測されるので、同1,000万円以上の調査対象になっても、同10億円以上の製造業にはならない。

 以上から明らかなように、企業収益は企業規模間格差は大きくても改善しているのに対し、従業員の給与は一部の大企業を除いて増えていない、ようやく下げ止まった程度である。大手企業の今年の春闘は賃上げ額は昨年より増額になる見通しでも、中小零細企業まで波及するかどうかは不透明である。

 このような状況の中で、政府は個人消費の回復が日本経済の課題という認識を示しながら、企業減税と個人への増税の組み合わせを行っている。組み合わせが逆ではないか。また、個人消費が力強く拡大するためには、社会保障制度で国民の不安を取り除くことと中小零細企業従業者の給与の底上げが必要になる。

売上高経常利益、従業員給与等



※第1回から第10回までの内容をPDFファイルしたレポートも提供中です。
 PDFファイルにて経済レポートを入手した方は、こちらをどうぞ。



コミュニティー・プランナーズホームページへ戻る
| 2007年04月01日 | 所得 | comments(0) | - |
スポンサードリンク

コメント
コメント投稿フォーム:
 上の情報を次回も利用する
Copyright (C) 「法人企業統計」にみる好調な企業収益と増えない給与-拡大する企業規模間格差- | 経済への視点. All Rights Reserved.