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07年からの団塊世代の退職、07年問題は企業次第
それまでは高度成長によって需要、生産の高い伸びを前提に、現場労働者の人員計画を立てて採用してきた。人材育成に年月がかかることを前提に先行的に採用すれば、その後の需要の伸びが予想を下回り、生産計画が下方修正されれば、余剰人員が発生することになる。
加えて、当時は電子技術革新が進み、これが機械の制御に導入され、電子技術と機械技術の融合、いわゆるメカトロニクス化が進展した時代と重なる。この技術革新により生産現場の省力化、合理化が着実に進み、生産性が急速に向上した。労働者不足による人件費の上昇もあって、企業は省力化、合理化のために積極的にメカトロニクス機械・装置を導入してきた。これも現場労働者の余剰化をもたらす要因になる。
結果、現場労働者を首切りしなくても、長期間にわたって新規採用の抑制が行われた。もちろん、新規採用がゼロになったわけではないが、高度成長期に採用された層の厚い団塊の世代が退職すれば、ノウハウも含めて現場の技能、技術の伝承をできなくなる懸念が出てくる。
これが07年問題の実態だが、定年は企業が決めているだけで、労働者が決めているわけではない。実際、中小企業の現場では定年制がないところも多く、60歳以上の労働者が働いている中小企業は珍しくない。つまり、07年問題は主として大企業の問題になる。定年制のある企業では、かつては55歳定年が一般的で、98年以降の60歳以上定年制が法律で義務化されたため、60歳定年制が導入された。
また、総務省「労働力調査」によれば、労働力化率は5歳年齢階級別で、07年問題の対象になる男性では25〜29歳から55〜59歳まで90%を超えている。定年後の60〜64歳では低下するが、06年の実績で70.9%と7割が労働力である。65〜69歳でも47.7%と半数近い。
労働力は働いているか、失業中でも職を求めている人であり、体が弱ったり、病気で働けない人は労働力に入らない。また、働く気はあっても、望むような仕事が無く、求職活動を諦めた人も除かれ、不況期には労働力化率は低下するが、それでも7割以上の人は働きたいと思っている。もちろん、第2の人生で従来とは異なる趣味で働く人も少なくないであろうが、このような人も収入は少なくても労働力、就業者に含まれる。
ちなみに、現実に60〜64歳人口に対して就業している人の比率でも67.1%と7割近い。就業者率を長期的な推移をみると、かつての8割を超えていた水準から、80年代には6割台に落ちてきた。その後、90年代初めには一時的に7割を超えたが、最近は6割台で上下している。かつて高かったのは自営業者が多かったためで、定年制のある雇用者の増加で低下することになった。同時に、雇用者の増加は景気の影響を受けるようになる。かつての8割を越える数字や労働力の定義から考えれば、60歳になっても08年の60〜64歳の労働力化率である7割より就労意欲は強いと推測できる。
07年問題で企業が対策をとらなければならない労働者は、高度なノウハウや技術を持った人になる。このような人は自分のノウハウや技術に誇りを持っている人が多いことから、企業が残ってそれを伝承してほしいと要請すれば、高い労働力化率から判断して残る可能性は高い。そのためにはそれ相応の労働条件が必要になる。大企業の定年退職者は低賃金で無理して働く必要はないからである。
結局、企業が必要とし、労働者が働く意欲があれば、後は労働条件の問題になる。それはホワイトカラー労働者でも同様の人材に関しては同じであろう。最近の企業は低賃金で働かす仕組みの構築に熱心だが、それでは07年問題が顕在化し、長期的に墓穴を掘るだけではないか。経営者は長期的な観点から雇用戦略を立てる能力が問われることになる。
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| 2007年03月01日 |
雇用 |
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