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政策金利引き上げ見送りで、今後の引き上げの理由付けは
もともと、景気回復力、個人消費が弱い中で、特に、個人消費は夏の天候要因がマイナスに働き、冬も暖冬であり、足下の消費は強くはならない。しかし、輸出主導の成長下にある日本経済は当面、輸出が減少に転じることはないため、基調に変化はないと考えられる。もしあるとすれば、金利引き上げで為替レートが1ドル=100円を上回るような円高騰になった時だが、0.25%程度の引き上げでは為替レートへの影響は軽微であり、国内経済への影響もほとんど予想されない。
一方、日銀は景気がいざなぎ景気を超える長期上昇を続け、個人消費も堅調で、デフレ状態を脱して消費者物価上昇率もプラスになっているとして、金利引き上げを打ち出した。現在の異常な低金利状態を是正することは必要だが、その条件として景気、個人消費の堅調と消費者物価上昇率のプラスを挙げると難しくなる。
個人消費は今年の春闘賃上げ額も現状では低額で終わり、税金や社会保険料の負担が高くなることから判断すれば、新年に入っても伸び率が高くなることは予想されない。また、消費者物価上昇率(季節商品を除く総合)は2006年度に入ってプラスになっているが、その主たる要因は原油価格の上昇にあり、すでに原油価格が値下がりに転じているからである。
消費者物価はサービス財と物財の比重がほぼ半々で、サービス財は人件費の影響が大きい。人件費は企業が抑制姿勢を変えていないため、有効求人倍率が1を大幅に上回っているパートでもほとんど上昇していない。可能性があるとすれば、燃料費の上昇で採算が悪化している運輸サービスの値上げだが、これも今のところ業界の競争が激しくて値上げは難しい状態にある。実現すれば、輸送費はほとんどの物財の価格にも反映するため、消費者物価への波及効果は大きい。
輸送費の問題を除けば、物財が消費者物価の先行きの鍵になり、物財の価格は日銀の企業間取引物価「企業物価指数」の国内需要財から予測できる。通常、企業物価指数では06年12月の結果発表時に、新聞等では「国内企業物価の06年上昇率は前年比3.1%増、輸入物価同16.4%増、輸出物価 4.7%増」などと報告される。これだけを見れば、原油をはじめ原燃料の比重の高い輸入物価までは心配しなくても、そのうち国内企業物価並に消費者物価も上昇しそうという印象になる。
企業物価指数統計では、[参考]として需要段階別・用途別指数もある。これで国内企業物価と輸入物価を合わせた国内需要財が素原材料、中間財、最終財の生産工程段階別に集計、公表されている。これを見ると、06年の上昇率は全体の国内需要財5.1%増に対し、素原材料19.9%増、中間財6.1%増、最終財0.5%増で、加工工程が後になるほど上昇率は急速に低下し、最終財では前年のほぼ横ばいになる。
最終財は資本財と消費財に分けられ、それぞれ0.0%、0.6%増で、消費者物価に影響する消費財は小幅でもプラスである。これはさらに家電、自動車等の耐久消費財とガソリン、食料等の非耐久消費財に分けられ、それぞれ1.0%減、1.3%増となる。耐久消費財は技術革新による価格低下の影響でマイナスになり、非耐久消費財は国内品0.7%増、輸入品5.9%増と輸入品の影響が大きい。石油製品の値上がりや世界的な異常気象による穀物の国際価格上昇と為替レートの円安の影響である。
為替レートが最近の1ドル=120円前後より一段と円安に進むことは考えられず、穀物の値上がりだけで輸入品の上昇が続くことは予想し難い。すでに輸入物価指数は前年比で1桁台の上昇率にまで下がってきている。企業物価指数の消費財が上昇しなければ、消費者物価の物財も値上がりしないため、消費者物価が再び下落までには至らなくても上昇基調にはならず、せいぜい横ばいであろう。
副作用が深刻化しないうちに異常な低金利は早く終了させた方がいいが、経済成長率が高まらず、消費者物価も横ばいということになれば、今後も日銀の金利引き上げ条件が綺麗に揃うことは予測しがたい。今回、金利引き上げしなかったことで、早ければ2月ともいわれている金利引き上げの理由付けは難しいのではないか。
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| 2007年02月01日 |
金融 |
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