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工場立地は大都市圏回帰

地方自治体はで経済発展、雇用増の柱の一つとして、企業誘致に力を入れているところが多い。具体的には工場誘致が中心であり、高度成長期の 1960年代から大都市圏、特に京浜工業地域、阪神工業地域の土地不足、労働力不足から着実に工場の地方分散が進んできた。これによる工場立地が地方の経済を支え、牽引する要因の一つになっていたと。ところが、バブル崩壊後の90年代になって長期不況で工場の新増設が大幅に減少、さらには閉鎖されたのに加え、アジア地域、なかでも中国の工場進出が活発化し、工場の地方分散にブレーキが掛かった状態になった。
 それでも、最近では政治リスクの再認識、生産ノウハウの流出懸念などから国内生産の再評価が進み、国内立地の回復がいわれるようになってきている。実際、経済産業省「工場立地動向調査」(敷地面積1,000平方丹幣紊旅場と研究所)では工場(研究所を含む)立地件数は2002年の844件を底に増加に転じている。景気も02年から回復基調にあることも効いている。

 従来であれば、工場立地の増加は地域にとって経済成長をもたらすことが期待できる。しかし、地域別に最近の工場立地動向をみると、大都市圏への立地が増える一方、地方は減少しており、工場立地でも地域間所得格差を拡大させる要因になっている。

 工場立地をまず、国内立地が盛んであったバブル期前の増加に転じた84年からバブル期までで区切る。バブル崩壊は90年だが、本格的な不況感が広がるまでには数年を要し、立地件数の天井は89年の4,147年だが、水準としては2,484件と高い92年までをバブル期の立地と考える。ちなみに、翌 93年の立地件数は1,624件である。その後は不況と海外立地から低迷が続き、02年の844件を底に増加に転じており、93〜02年を長期低迷・海外立地期とする。そして、03年以降を回復期として3期に分けて比較する。

 年平均の立地件数はバブル期の3,041件に対し、長期低迷・海外立地期は1,265件とバブル期の4割程度の水準に落ち込んでいる。最近の回復期は1,348件(06年上期は2分の1年で計算)と長期低迷・海外立地期を6.6%上回るだけで、まだバブル期の半分以下でしかない。

 これを地域別にみると、東海は別として、関東臨海、近畿内陸・臨海の大都市圏は高度成長期以降、工場の地方分散によって全国における立地件数、ひいては工業出荷額の比重を低下させてきた。ところが、バブル期以降の工場立地件数は、東海はもちろん、関東臨海、近畿内陸・臨海などいずれも長期低迷・海外立地期の近畿内陸は別として全国での比重を高めている。これら3期間の関東臨海、東海、近畿内陸・臨海を合わせた比重の推移は25.5%、26.9%、38.7%となっており、回復期の比重増は顕著である。

 かつての地方分散とは逆の動きで、工場敷地面積でも回復期の増加が目立っており、大都市圏だから小規模工場立地というわけではない。その一方で、回復期に全国の立地件数が増える中で、地方では立地件数自体が減少している。これは地域間経済格差の拡大要因になりうる。というよりも、既になっているのかもしれない。

 このような工場立地の大都市圏回帰の要因としてはヾ覿氾飮此経営再構築に伴い閉鎖された工場からの工場用地供給増、⊆唆伴堊による人材不足の解消、C亙分散を促進させる工業制限三法の規制緩和、などが挙げられる。最後の規制緩和は大都市圏の工業の衰退が日本の国際競争力衰退に結びつくのではという懸念から行われている。

 工場立地件数が大幅に増加すれば、再び地方の比重が高くなることも想定できる。しかし、日本経済の成長力に期待できない現状ではそれほどの増加は見込めず、工場立地の大都市圏回帰現象が続くことが予想される。もちろん、工業生産力は新規立地に既存の立地分を合わせたものであり、新規立地がなくても既存工業による経済発展は期待できる。とすれば、地方が経済発展するためには従来から力を入れていた工場誘致だけでなく、既存の企業・産業を育成する政策立案・実行能力が求められる時代になったといえる。結果として、今後は地方間の新たな経済格差現象が生じることになる。


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| 2006年12月01日 | 政策 | comments(0) | - |
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