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いざなぎ景気抜きも回復感がでない要因を日銀「短観」からみる

 戦後最長の57か月の上昇期間を記録した「いざなぎ景気」に今回の景気の底からの上昇期間が10月に並び、11月に抜くことになる。マスコミがこの話題を取り上げても、論調は今一つ盛り上がりに欠けている。理由は、高度成長期のいざなぎ景気と比べて経済成長率の低さもあるが、それよりも高度成長期以降の回復・上昇期と比べても景気回復感が広がらない要因がある。
 その要因として、ヾ覿伴益の回復・改善が個人所得にまで波及しない企業収益と個人所得との乖離、企業・企業規模・産業間回復格差、C楼茣崕蠧棲丙后△裡海弔大きいことが挙げられる。つまり、景気回復が一部に偏在し、全体に浸透していない。,慮朕予蠧世硫麌の遅れに関しては6月1日付けの当レポートで指摘した。今回は△隆覿函Υ覿筏模・産業間所得格差について日本銀行の「全国企業短期観測調査(短観)」によって分析する。

 短観は3カ月(四半期)ごとに金融機関を除く資本金2千万円以上の製造業、非製造業の企業に対して行う調査で、回収率の優れた信頼性の高い調査である。 06年9月調査は全国9,863社に対して行い、回収率は98.6%となっている。調査内容は多岐にわたるが、通常は業況調査が注目され、「良い」と「悪い」の回答比率差(%ポイント)による企業の景況感が景気の判断に使われ、マスコミでも大きく取り上げられる。

 9月調査の業況判断は製造業で大企業(資本金10億円以上)24、中堅企業(同1億円以上10億円未満)14、中小企業(同2千万円以上1億円未満)6,非製造業で大企業20、中堅企業5、中小企業マイナス8となっており、非製造業の中小企業を除いて業況が「良い」という企業の方が多く、規模が大きいほど良好である。製造、非製造、企業規模によって業況判断に大幅な格差があるが、これ自体は別に珍しいことではない。

 これを高度成長期以降の過去のピーク値と比較すると、バブル末期の1989〜90年にピークを迎え、その値はそれぞれ順に53、42、36、57、43、34といずれもプラスの高い数字である。今回の景気回復期間が長いとはいえ、このピーク値に比べればかなり低い数字であり、特に非製造業が相対的に低い。

 一方、企業業績を売上高経常利益率でみると、短観の05年度実績は製造業で大企業6.48%、中堅企業4.37%、中小企業3.76%、非製造業で大企業3.93%、中堅企業2.66%、中小企業2.43%となっている。業況判断と同じように企業規模が大きいほど高収益である。

 規模間格差が生じるのは従来と変わらないが、同様に過去ピークと比較すれば大きく異なる。過去ピークは製造業は規模に関係なく1989年度で、非製造業は規模によって大きい方から2000年度、88年度、89年度で、非製造業の大企業を除いてバブル期末期になる。このときの値を順にみると、5.75%、 5.21%、4.50%、2.66%、2.16%、3.75%である。このピーク値を大企業は9月調査で製造業、非製造業のいずれも越え、その他は非製造業の中堅企業を除いてまだ下回っており、過去ピーク値との比較で規模間格差は大きい。ちなみに、非製造業大企業のバブル期のピークは88年度で、 2.38%である。

 この格差の原因は、企業規模の小さい企業は大企業の下請けが多いことから、大企業は収益が改善しても、下請けに対しては納入価格の値上げを認めない、さらには引き下げを求めているためと考えられる。これは正規従業者を増やさず、賃金を引き上げないこととも同様のコストに厳しい経営経営といえる。

 大企業ではすでに売上高経常利益率が過去ピークを上回りながら、業況判断ではまだ大幅に下回っている。この背景には、企業間業績格差が拡大してることがある。少数の好業績企業が高収益を上げ、その他は収益改善が遅れても、全体として売上高経常利益率が高くなることはありえる。その一方で、短観の業況調査の選択項目は「良い」「さほど良くない」「悪い」であり、多くの収益改善が遅れている企業が「悪い」でなくても、「さほど良くない」を選択すれば、業況判断の「良い」−「悪い」の値はプラスでも小さいものに留まる。このように業績回復状況に企業間格差が発生していれば、低いプラスの業況判断と高い企業収益率は両立する。

 今回の景気回復局面ではこのように企業・企業規模・産業間回復格差が生じており、特に、中小企業の数が多いため、中小企業の回復が過去と比較して遅れていることは全体の回復感を乏しくする。企業経営が業績で評価される傾向が強まり、特に上場企業は企業業績が厳しく問われる時代において、業績優先がこのような状況をもたらす一因になっていることは間違いない。

企業規模別業況判断と経常利益率の現状とピークの比較





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| 2006年11月01日 | 景気 | comments(0) | - |
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