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労働需給の改善が賃金の上昇に結びつくか

 労働市場の改善は急速に進み、総務省「労働力調査」による完全失業率(季節調整値)は2006年2月以降、約8年振りとなる4%程度に低下し、また、厚生労働省の「一般職業紹介状況」の有効求人倍率(同)は2005年12月にほぼ14年振りに1水準を上回り、その後も回復傾向にある。労働市場の改善は賃金上昇に結びつき、雇用数の増加と合わさって個人消費の回復が期待できる。その一方で、物財とサービス財の構成がほぼ半分ずつの消費者物価指数は労働力依存の高いサービス財の値上がりで、上昇をもたらす。
 しかし、賃金は低位安定で、個人消費は顕著な回復力にはほど遠い状態である。消費者物価指数も原油に代表される原燃料価格上昇の影響を受けている商品・サービスを除けば、まだ上昇傾向に入ったとはいえない。つまり、労働需給と賃金との間に乖離現象がみられるのが景気の現局面での特徴となっている。その理由としては、企業のコスト削減意識がまだ根強く、雇用の増加を図っても、できるだけ賃金、労働コストはそのままか、むしろ下げたいと考えていることにある。労働需給と賃金の推移

 生産性の上昇を別にすれば、労働コスト削減の方法としては]働者の削減、 賃下げ、D其發琉造は働者への転換、の3つが考えられる。1990年代の長期不況期から2000年代前半頃にかけては労働者を削減し、国際競争力を維持するためには賃金が高すぎるとして賃下げが行われた。さらに、賃金の高い正規労働者をできるだけ減らし、契約・期間・派遣等の非正規労働者の雇用を増やしてきた。

 景気が回復し、大企業を中心に企業収益が高水準に達し、労働需給が改善している現状では、労働者の削減は終了したと推測され、また、収益改善状況下で賃下げはできない。このため、労働コスト削減意識の高い企業は労働者削減が終了し、労働力を増やす時代に入っても、増やすのは賃金の安い非正規労働者となっている。先行き雇用が不透明で、賃金が安ければ、税金や社会福祉制度などの問題は別としても、個人消費の回復力は弱い。

 この実態を厚生労働省の有効求人倍率と「毎月勤労統計調査」(事業所規模5人以上)の賃金でみると、全体の有効求人倍率が1を上回っているといっても、パートを除いて労働時間が同じ非正規労働者は含まれるパートを除く有効求人倍率は7月でも0.98でまだ1を下回り、うち正社員は1を大きく割り込む 0.60でしかない。このため、正社員の賃金は分からないが、パートを除く労働者の一般労働者の所定内給与指数は前年比で、伸び率は1%にも満たないほぼゼロ成長でこの4〜6月期まで推移し、7月は0.5%減とマイナスになっている。

 一方、パートの有効求人倍率はバブル崩壊後もほとんど1を下回らず、2000年以降は1を上回る高水準で推移している。労働者の希望も配慮するが、企業が望む時間だけ働く最も効率的で労働コストの安い労働者がパートであり、長期不況期にも需要水準は高かった。しかし、パートの所定内給与水準は 2005年までは一般労働者と同じような推移である。ところが、前年比で05年末の10〜12月期1.1%増、06年1〜3月期1.3%増と上昇傾向がみられる。ただし、4〜6月期は0.5%増、7月0.2%増と伸びは鈍化しており、賃金上昇基調の中での一時的な中だるみか、05年10〜12月期、06年1〜3月期の上昇が一時的な現象で終わり、ゼロ成長軌道に戻るのかが注目される。

 というのは、小売業、対個人サービス業はパート労働者の比重が高く、賃上げの消費者物価指数への影響が大きいからである。一方、一般労働者の賃金の伸びは低水準に張り付いたままであり、正社員の労働需給が1を大きく下回った状態では、正社員の賃金の伸びも予想されない。ただし、団塊の世代の退職期を控えて新卒者の賃金上昇が考えられるため、若年層の賃金上昇はあり得る。それでも、全体的にみれば賃金引き上げ効果は少なく、当面、賃金面から個人消費の回復は期待できない。

 労働需給が全体でみて改善といっても、その中身をみなければその実態は分かず、賃金水準との関係も理解できない。


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| 2006年09月01日 | 雇用 | comments(0) | - |
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