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4〜6月期の実質GDP統計からみる回復の条件

 2020年4〜6月期の実質GDP成長率(1次速報値、季節調整値)は前期比7.8%減、年率で27.8%減と内閣府から発表された。前期比で19年10〜12月期1.8%減、20年1〜3月期0.6%減に続いて3四半期連続のマイナス成長で、すでに景気下降が顕著になりつつあったところに、コロナウイルスの影響が加わった影響で大幅な落ち込みになった。一般的にGDP統計では方向性を把握しやすいため、季節調整値を使う例が多いが、水準は理解し難い問題がある。ここでは原数値の前年同期比で現状を判断し、回復の条件を考えたい。

 原数値の実質GDPは18年1〜3月月期以降、上下はあるもののほぼ前年水準並みの推移で、年間の成長率は18年度0.3%増、19年度横ばいでしかない。四半期別の前年同期比成長率は19年10〜12月期に4四半期ぶりの0.7%減のマイナス成長になり、20年1〜3月期1.8%減、そして4〜6月期は9.9%減である。つまり、原数値でみれば、10〜12月期、または1〜3月期まではほぼ前年並であったが、コロナウイルス禍で1割ほど水準が下落したことになる。

 需要項目では輸出の23.3%減が最も大きく、次いで民間最終消費支出の10.9%減になる。この2つは19年度で民間最終消費が実質GDPの56%、輸出が同17%を占める1、2位の需要項目で、4〜6月期のこれら2つの減少額はそれぞれ8.0兆円、5.3兆円、合わせて13.3兆円になり、実質GDP全体の減少額13.0兆円を上回る。また、実質GDPの16%を占め、輸出に次いで3位の民間設備投資(前年同期比4.3%減)は民間最終消費や輸出の需要の影響を受けることを考えれば、結局、GDPは民間最終消費と輸出が拡大しなければ、回復は期待できない。

 輸出に関しては6月1日付のこの経済レポートで、4月までの貿易統計から中国向けが先行して回復傾向にあることを指摘した。その後、中国向けの輸出指数が7月(速報値)には前年水準を上回り、輸出全体では前年同月比で5月を底に回復傾向がみられる。つまり、季節調整値の輸出は7〜9月期に前期比増加になる可能性は高い。ただし、中国向けは19年度で輸出全体の2割を占めるだけであり、中国向けだけが底入れして前年比プラスになっても、4〜6月期の輸出全体の大幅減少から回復して前年水準を超えるかどうかは世界経済次第になる。コロナウイルス禍の現状からは当面は厳しい。

 世界の感染者数の増加はピークを打ち、多くの国で感染対策規制の緩和が行われるようになっており、日本と同様に世界的にも景気の最悪期を脱しているといえる。その一方で、感染拡大中、または規制緩和で感染者が再び増加に転じる国・地域もあり、期待されるコロナウイルス治療薬・ワクチンの開発はまだ話題先行の感がある。世界経済がコロナウイルス禍を克服し、着実な回復基調に戻り、回復感が広がるのは来年以降になるのではないか。このため、日本の輸出は底を打って回復に転じたと期待はできても、前年水準を上回り、さらに季節調整値で過去ピークを上回るところまでは時間が掛かる見通しになる。

 また、民間最終消費は97%を占める国内家計最終消費で耐久財、半耐久財、非耐久財、サービスの4形態分類で統計が公表されている。ちなみに、国内家計最終消費全体の前年同期比伸び率は19年10〜12月期2.2%減、20年1〜3月期3.2%減、4〜6月期12.4%減で、特に4〜6月期は民間最終消費との減少幅の乖離が大きいが、要因は日本に居住する家計の海外での直接購入の減少、つまり、コロナ禍による海外旅行の大幅な減少による。

 4〜6月期の国内家計最終消費の前年同月比12.4%減を4形態分類でみると、耐久財13.6%減、半耐久財10.0%減、非耐久財4.6%減、サービス16.1%減となっている。交通、通信、外食・宿泊などのサービスと自動車、家電などの耐久財の大幅減少と、食料、飲料、電気・ガス・水道などの非耐久財の小幅減少が対照的である。

 3密を避け、外出の自粛からサービスが縮小しているのは、7月1日付のこの経済レポートで取り上げたサービス供給側の第3次活動指数で、生活娯楽関連サービス業、鉄道旅客運送業などが不振であったことと見合っている。一方、耐久財ではテレワークや自宅学習の増加で、パソコン、テレビ、エアコンなどの家電関係が好調と報道されているのと消費支出減は矛盾しているように受け取れるが、自動車需要不振の影響が大きい。

 減少が比較的軽微だった非耐久財は日常生活に欠かせない物やサービスであり、当然ということもできる。それでも、自宅滞在時間・日数の増加は非耐久財支出増加要因になることから考えれば、減少幅は大きいといえる。そして、その要因として雇用の削減が始まって将来不安が高まり、生活防衛意識が強まった影響と推測できる。

 夏のボーナスは19年度下期の企業業績がピークを過ぎてもまだ水準が高かったため、小幅の減額で済んだが、冬のボーナスは企業業績を反映して顕著な減額になると予測される。コロナ禍対策による外出・旅行や営業などの自粛が緩和されているため、民間最終消費は4〜6月期を底に回復するのは確実と考えられる。4〜6月期の大幅な落ち込みの反動で7〜9月期は大きく盛り返し、延いては実質GDP成長率も高くなることは誰もが予想している。問題は10〜12月期以降になるが、労働市場の悪化にボーナスの減少が加われば、回復に頭打ち感が生じるのは否定できず、短期的な消費復活は見込み難い。

 輸出と民間最終消費は当面、回復スピードは別として同様の推移が予想される。年明け以降は世界経済と新政権の経済政策次第になるが、国内の経済政策に関しては安倍政権の大きなツケが残っており、日本経済を改革して経済成長力が高まる効果的な政策は期待できない。結局、日本経済は世界経済次第だが、短期的には厳しいと予想される。

主要需要項目別実質GDP成長率(原数値、前年同期比)の推移

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| 2020年09月01日 | 景気 | comments(0) | - |
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