スポンサードリンク

出生数が一段と減少に向かう状況で、日本経済は成長できるか

 新型コロナウイルス汚染による景気の落ち込みからの回復に関して、第2波とするかどうかは別にして、最近の感染者数の再拡大で、元の経済水準に戻るまでには1、2年は掛かるという見方が広がっている。この状況から中小企業の倒産、廃業の増加が懸念されているが、これに関しては長期的な要因も大きい。長期的に日本経済に期待できるのであれば、現状が厳しくても頑張って生き残る意欲が起きる。期待できなければ、その意欲は生まれないからである。

 長期的要因として大きく、予測可能な問題として人口、つまり出生数の問題がある。出生数が趨勢的に減少傾向にあるのはよく知られ、2019年は90万人を下回る87万人になった。90万人を下回ったことで一時的に注目されただけで、その後は忘れられた状態である。しかし、これは減少傾向が加速傾向になっている反映であり、日本経済にとって長期的視点からみて深刻な問題である。

 出生数は1990年代はほぼ120万人前後で推移し、1999年から2004年までの6年間は110万人台、そして05年から15年までの11年間は100万人台を維持していた。表面的には落ち着いてきていた。安倍首相が新三本の矢の一つとして、合計特殊出生率目標1.8を打ち出したのは16年である。前年の15年の合計特殊出出生率は1.45で、当時は05年の1.26を底に低水準でも回復傾向にあるように見えていた。それでも、出生数を増加に転じさせるのは容易ではなく、1.8は高過ぎて実現は不可能という意見が強い程度で、当時は深刻に考える人は少なかった。

 その後の推移は1.8目標発表の16年に100万人台、3年後の19年には90万人台を割り込み、減少速度が加速している。合計特殊出生率を取り上げた15年11月1日付のこの経済レポートで、この間の合計特殊出生率の変動要因として人口の多い団塊ジュニア世代、第2次ベビーブーマー世代にあることを説明した。

 合計特殊出生率は晩婚化に伴って出産年齢が遅くなった影響で、1974年までは2前後で推移し、75年以降は2以下が定着して基調としては下降線になっている。女子の人口千人当たりで5歳年齢別の出生数(以下、人口当たり出生数)は20歳代が減少する一方、30歳代が増加し、5年間隔で05年に30〜34歳がそれまで最大の年代だった25〜29歳を抜いた。しかし、20歳代の減少幅が30歳代の増加幅を上回っていたため、全体として出生数は減少してきた。 また、40歳代の出生数も30歳代と同様に増加してきた。ただし、人口当たり出生数は少なく、かつ、伸びも止まり、かつて30歳代が急増した現象の再現は見込めない。

 当然、出生数は人口当たり出生数だけでなく、母胎となる女子人口、特に出生数の多い20歳代、30歳代の人口の影響を受ける。人口の多い71〜74年生まれの団塊ジュニア世代の出生数は、最小が71年200万人(内女子97万人)、最大が73年209万人(同101万人)である。この世代が人口当たり出生数が伸びる30歳代に入り、出生数が下げ止まりから回復に向かった。当時の底は05年の106万人で、06年から08年の3年間は109万人前後の推移になった。

そして、人口当たり出生数が30〜34歳の半分程度に低下する35〜39歳に移行するのに伴い、再び減少傾向になった。40〜44歳は人口当たり出生数が35〜39歳の5分の1程度で、かつ、増加していた40歳代の人口当たり出生数の伸びは頭打ちである。このため、団塊ジュニア世代が40歳代になる10年代中頃からは出生数の減少が加速してきた。この問題は15年11月1日付経済レポートでも指摘したが、その時の予想以上の減少速度である。

 ちなみに、合計特殊出生率は2000年代前半の1.2台を底に、15年に1.45まで上昇したが、その後は微減の後、18年の1.42から19年は1.36へと急落している。19年は団塊ジュニア世代全てが人口当たり出生数が40〜44歳の5分の1程度の45〜49歳になった影響と推測できる。45〜49歳の人口当たり出生数は増えたといっても、19年で千人当たりで0.3人であり、出生数への影響は小さい。

 人口当たり出生数の伸びは各年代で頭打ちか微減傾向にあり、これからの出生数は母胎の女子人口の影響が大きくなる。19年10月1日の日本人の女子人口は、ほぼ団塊ジュニア世代の45〜48歳は94万〜98万人である。これに対し、年齢が若くなるのに伴ってこれまでの出生数の減少を反映して減少傾向が続く。43歳から80万人台、40歳から70万人台、33歳から60万人台になるが、28歳、26歳に60万人を切っても僅かで四捨五入すれば60万人になる。19歳まではほぼ60万台を維持し、18歳からは50万人台に下がる。

 40歳代後半の団塊ジュニア世代女子の90万人台から、30歳代、20歳代の60万人台へと急下降から判断すれば、当面は出生数の顕著な減少が続くと予想でき、人口の減少も避けられない。少なくとも、人口動向からは長期的に日本経済に明るい展望は描けない。

 もちろん、中小零細の企業経営者がこのような人口統計を見て、日本経済や自社の経営を考えてはいないと思うが、この人口動向は市場には顕在化する。一方、長期的な出生数、人口の減少と高齢化が加速しつつある日本経済の現状、将来見通しは社会の雰囲気に反映する。コロナウイルスによる経済状況から、倒産しなくても潮時と判断し、自主廃業する企業が増える可能性は高い。それを避けるには、積極的な外国人労働力の導入が必要と考えられるが、その場合は彼らが働きたくなる日本であるかどうかが問われる。

出生総数と女子人口当たり年齢5歳階級別出生数の推移

JUGEMテーマ:経済全般

| 2020年08月01日 | 政策 | comments(0) | - |
スポンサードリンク

コメント
コメント投稿フォーム:
 上の情報を次回も利用する
Copyright (C) 出生数が一段と減少に向かう状況で、日本経済は成長できるか | 経済への視点. All Rights Reserved.