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雇用全体では増えても正社員は減少の方向に

 今年5月1付けのこの経済レポートで、労働市場は需要の高い伸びから労働力不足が続いているが、厚生労働省「一般職業紹介状況」の有効求人数(新規学卒者を除きパートタイムを含む)は18年12月をピークに、レポート時点での最新の19年3月まで減少しており、「労働市場の潮目が変化」したことを指摘した。ただし、有効求職者数も同様のテンポで減少していたため、有効求人倍率は横ばいの推移になり、一般的には労働市場の変化に着目する人はほとんどいない。

 その後は一般職業紹介状況で雇用需要の変化を取り上げる事例も見られるようになったが、現実の雇用者数はまだ拡大を続けているため、労働市場の変化に着目する専門家はいないようである。有効求人数の変化から半年ほど経ち、雇用者数の統計にもその影響が顕在化してきた。

 総務省統計局「労働力調査」の2018年の実績で、就業者6.664万人のうちの9割ほどの5,936万人が雇用者で、その94%の5,605万人が役員を除く雇用者(以下、雇用者は役員を除く雇用者)になる。雇用者は正規の職員・従業員(以下、正社員)とパート・アルバイト、派遣社員、契約社員などの非正規の職員・従業員(以下、非正社員)に分けられる。今回の景気回復で回復が遅れていた正社員も14年が底になり、その後は以前から雇用が増えていた非正社員と正社員のいずれも長期的に増加している。それでも、企業は非正社員化を進めているのを反映して、正社員の比率は低下傾向にあり、18年の正社員と非正社員の比率は62%対38%である。

 雇用者数は季節的要因で変化するため、前年同月比の推移を比較しやすいように年別に月間の推移を図にすると、18年の雇用者数全体は17年の水準を大きく上回り、企業が積極的に雇用を増やしていたことが窺える。そして、19年に入っても増加人数は徐々に縮小傾向であっても、10月でも前年同月を0.8%上回る43万人増と拡大を続けている。これから判断すれば、有効求人数の変調は雇用者数にまで波及していないように受け取れ、まだ労働市場への関心が高まらないのは当然といえる。

 ところが、正社員と非正社員で分けると状況は変化してきている。正社員は19年8月から2カ月連続で前年水準を下回るようになり、10月は前年同月より4万人増えているが、公務が11万人増えており、民間は減少である。公務を除いた民間では、7月から10月まで4か月連続の減少になる。一方、非正社員は10月も前年同月比で40万人増であり、非正社員の増加数が正社員の減少数を上回っているため、全体として雇用者数は増えている。労働市場の変化は見え難いが、正社員雇用の減少は労働需給の兆しといえる。

 景気は18年後半以降から悪化の兆しが見られるようになり、先行き不透明な状態であれば、人手不足状態で雇用を増やすとしても非正社員になる。その採用方針の変化が正社員と非正社員の雇用変化になって現れてきた。かつて、非正社員の雇用が増える一方、正社員は遅れていたため、雇用は全体として改善しても、雇用不安は解消しないことが問題になっていた。それが15年から正社員の雇用も拡大傾向になり、雇用不安から一転、人手不足が問題になった。現状ではまだ人手不足の産業も多く、全体として雇用も増加している状況にあるため、雇用不安が広がってはいない。ただし、一部の企業・産業で早期退職募集の動きが出始めているのを懸念材料として指摘する専門家も出始めている。

 もちろん、景気がマクロで悪化傾向にあっても、産業別では乖離は大きく、労働市場も同様である。主要産業別の雇用者数は月によって前年同月比増減の変化は大きいが、雇用全体で最近でも基調として増えている産業として、運輸・郵便業、教育・学習支援業、医療・福祉などが挙げられる。反対に減少が顕著なのは個人消費の影響を受ける卸売・小売業である。

 うち、正社員で増えているは、雇用全体が増えている3産業の中で医療・福祉だけである。医療・福祉は人手不足の代表的産業の1つで、かつ景気変動の影響を受け難い産業だが、それでも5月以降の伸び率は低下している。一方、教育・学習支援業は頭打ち、運輸・郵便業は微減だが8月から10月まで前年を下回っている。卸売・小売業は7月以降、顕著な減少傾向にある。

 また、非正社員は運輸・郵便業、教育・学習支援業、医療・福祉のいずれも増やしており、特に、運輸・郵便業の増加が目立っている。人手不足・人件費上昇対策として非正社員を採用していると推測できる。正社員を増やさずに非正社員を増やしている教育・学習支援業はもともと正社員比率が約6割と低い。労働需給が逼迫状態から緩和傾向に転じつつある状況下、それぞれの産業特性を反映した雇用変化になっている。

 労働市場はマクロ景気から遅れて変化する遅行指標だが、今回の景気転換に関しては従来より遅れている。労働力人口の減少、なかでも若年労働力の大幅な減少から、企業は将来の企業を支える労働力の確保を考慮し、景気が悪化しても新規採用や雇用の削減は控える傾向にあるためと推測できる。

 今後の雇用がどうなるかは景気次第だが、景気が下降に向かう可能性が高く、それほど遠くない時期、年度内か新年度早々には非正社員の雇用も頭打ちから減少に転じると予想され、労働市場の需給変化が誰の目にも明らかになるのではないか。ただ、それでも外国人労働力が急速に増やせるとも思えず、日本人の労働力人口が増えない状態では、当面、深刻な雇用問題が生じることは考え難い。

正規・非正規別雇用者数の推移

経済の視点
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| 2019年12月01日 | 雇用 | comments(0) | - |
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