民間設備投資の19年1から3月期マイナス成長をどう評価するか
2019年1から3月期の実質成長率はマイナス成長の予想が多かったが、1次速報値ではあるが前期比0.5%増、年率2.1%増と内閣府から発表された。プラス成長にはなったが、GDP統計でマイナス項目になる財貨・サービスの輸入が前期比4.6%減の大幅マイナスで、これがGDPにはプラス要因になるため、これを除けばマイナス成長になる指摘が多く見られ、先行きを楽観視する見方は少ない。
また、景気の先行きの懸念材料として、実質民間設備投資が前期比0.3%減と、2四半期前の18年7から9月期の同2.5%減ほどではなくても、マイナス成長になったことが挙げられている。以前から企業収益が好調にもかかわらず、民間設備投資がそれほど増えないのに対し、企業を批判する意見が少なくなかった。企業は賃金を挙げず、設備投資を抑えて収益を貯め込むだけの経営で、これが経済成長率が高まらない一因になっていると考えられるからである。 ちなみに、実質民間設備投資の成長率は15年度1.6%増、16年度0.5%減、17年度4.5%増、18年度(1から3月期は1次速報値)3.2%増である。17年度の4.5%増は比較的高い伸びだが、財務省「法人企業統計」の経常収益の16年度9.9%増、17年度11.4%増と比較すれば低い。ちなみに、17年度の名目民間設備投資は7.8%増と実質を上回るが、名目との比較では乖離幅は縮小しても、基本的には変わらない。また、18年度は四半期で7から9月期、1から3月期に前期比マイナス成長になっても、年度ではプラスになっているのは前年度の下駄をはいているためで、この効果がなくなる19年度は低成長、さらにはマイナス成長もあり得る。
1から3月期の民間設備投資がマイナス成長になり、弱含み傾向がみられる一方、民間設備投資の先行指標になる内閣府「機械受注統計調査」の4から6月期の民需(船舶・電力を除く、季節調整値)の見通しは前期比13.5%増と高い伸びで、2ケタ台の伸びは公表されている05年度以来初めてである。これから1から3月期の民間設備投資のマイナスは一時的で、4から6月期はプラスに戻るという見方もある。ただし、民間設備投資に含まれる建設投資は機械受注の対象外であることに留意する必要はある。それでも、過去の実績では先行指標として信頼性は高い。 また、見通しと実績は異なる訳で、4から6月期見通しで高い数字が出ても結果は別である。このため見通しを実績と比較した達成率(実績/見通し)からその実績を考える。ただし、実績と見通しは季節調整値であるのに対し、達成率は原数値を使っている。
一般的に見通しと実績の関係は、景気回復期には見通しよりも実績が上回り、達成率は100%を超え、そして、次の見通しはさらに高まる循環なる。当然、景気後退期は逆になる。ところが、経済成長率が高く、景気にメリハリがつている状況ではそうなっても、低成長下では異なる。現在のように景気の後退期入りの論争になかなか決着が付かない時代には、この見通しと結果の関係は明確には見え難い。
機械受注の民需の見通しや実績の15年1〜3月期からの推移は、図に見られるように17年4〜6月期に見通し、実績共に顕著な前期比減少がみられ、この期以外でも時々落ち込んでいる。この4年ほどは趨勢としては微増基調で、民間設備投資の穏やかな回復を先取りしてきたといえるが、18年度末には変調が見られる。実績は10〜12月期と1〜3月期の2四半期連続で減少になり、見通しは10〜12月期は増加だが、1〜3月期は減少である。
また、達成率を100%を基準に判断すれば同様の推移で、15年度の回復傾向から16年度は中だるみ状態になったが、17年度には持ち直した。そして、18年度は下期が2四半期連続で100を下回り、平均では100%を下回った。それも4〜6月期の102.3%をピークに、その後は100.1%、94.2%、94.3%で、下降傾向が顕著である。年度毎の平均達成率は15年度102.4%、16年度100.2%、17年度102.1%までは100%を上回っていたが、18年度は100%を下回る97.7%である。
ところが、4〜6月期の見通しが1〜3月期までの推移と一変、前期比13.5%増の高い伸びを示したことで、今後の予測が困難になっている。調査時点の3月末は米中の対立が現在ほどではなくても、厳しいとの見方が強まっていたため、企業は米中問題をある程度織り込んでいたと推測できる。その後の米中対立の激化から、達成率が10〜12月期と1〜3月期より一段と低下して90%程度になったとしても、実績は前期比プラスになる。
4〜6月期の見通しからは民間設備投資の回復が期待できる。それは景気が変調しても企業収益はそれほど悪化していないため、一定の投資は行われることを示しているのではないか。つまり、景気回復期でも積極的な投資は行われないが、景気下降期に入っても当初はある程度維持され、景気の影響を受けにくくなっていると推測できる。
一方、輸出は引き続き減少が予想されに対し、輸入が一段と減少してプラス効果を発揮することは見込めない。結果、消費税増税に向けて駆け込み需要で個人消費が盛り上がらない限り、民間設備投資が弱い状況では、GDPがプラス成長になることは期待し難い。
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