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輸出の減少による鉱工業生産の落ち込み

 前回の経済レポートで鉱工業生産指数が2018年の12月速報が前月比0.1%減(前回では速報値だったが、確報も同じ)と2か月連続の減少になり、下降の方向に向かっているのではと指摘したが、その変化の主因は輸出にある。特に、日本の輸出全体の2割近くを占める最大の輸出市場である中国の落ち込みが影響している。

 これに関しては違和感を持つ人もいるかもしれない。それは内閣府が発表した18年10〜12月期の実質GDP(1次速報値)が前期比0.3%増と前期の同0.7%減から持ち直し、その一つの要因として、この間の実質財貨・サービスの輸出が同1.4%減から同0.9%増へと大幅に改善したからである。財貨・サービスの輸出には商品輸出以外に、サービス、特に急増している訪日外国人の増加効果も考えられるが、まだ商品の比重が大きく、サービスの影響は小さい。

 統計は短期的な変動を示す季節調整値の前期比ではではなく、原数値の前年同期比の方が基調の方向性が分かり易い。実質財貨・サービスの輸出の原数値の前年同期比は4〜6月期の5.6%増から、7〜9月期に1.6%増と伸び率が急減し、10〜12月期も0.3%増と一段と低下している。

 一方、貿易統計の輸出数量指数(15年=100)の前年同月比の推移は4〜6月期5.6%増、7〜9月期1.0%減、10〜12月期1.4%減となっており、7〜9月期から2四半期連続の減少である。それでもGDP統計の実質財貨・サービスの輸出が前年同期比でプラスになっているのはサービス増の効果である。19年1月(速報値)は前年同月比で9.1%減と大きく落ち込み、それ以前の18年11月同1.9%減、12月同5.8%減の推移からは下降傾向が続いている。このまま急下降するとは思えないが、19年1〜3月期の前年同期比は10〜12月期の1.4%減より減少する可能性が高い。

 

 というのは、中国の減少が顕著なためである。17、18年の2年間の主要輸出先国・地域別に輸出数量指数をみると、四半期別で米国やEUは伸びても前年比1桁台の伸び、逆にマイナスになっても微減に留まり、変動幅は小さい。18年7〜9月期に米国が前年同期比1.6%減になり、これが原因で輸出全体が同1.0%減になったが、米国は10〜12月期には5.2%増に戻している。

 これに対して、中国は18年1〜3月期までは前年同期比10%台の高い伸びであったが、その後は急速に縮小し、7〜9月期は同0.9%増に留まり、米国の減少を補えなかったために輸出全体としてマイナスになった。そして、10〜12月期は6.5%減になり、米国やEUが増加したが、全体として2四半期連続の減少になった。中国の19年1月は前年同月比20.8%減の急落で、輸出全体でも同9.1%減の大きな落ち込みになっている。

 中国への輸出が18年にはいって伸び率が急速に縮小し、大幅な減少になった原因に米中貿易摩擦問題が挙げられる。米国の輸入規制で中国の対米輸出が減少すれば、中国の米国への輸出商品に使われる日本製部品の日本からの輸出が減少する。それに加えて、中国の景気が悪化し、それに伴う日本製品需要への影響もある。

 米中貿易摩擦問題は両国がどこかで妥協するとしても、短期的に妥結する可能性は小さい。また、少なくとも貿易の均衡化の方向を目指すと推測され、米国に対中輸出を大幅に増やせる商品は見当たらないため、中国は対米輸出を抑制するしかないと考えられる。その場合、中国は対米輸出抑制で落ち込む国内景気を支えるため、公共投資を増やすことになっても、この日本の輸出増効果は小さい。結局、中国輸出数量指数の1月の減少幅は異常で一時的としても、減少基調が続くと予測される。

 一方、中国の人件費の上昇から、日本企業はアジアの周辺国に工場を移転させる動きを強めているという見方が多かった。これに米中貿易摩擦問題が加われば、それが加速される可能性がある。そうであれば、日本の中国への輸出が減少しても、その分を移転先のアジア諸国への輸出で補えると考えられる。既に、中国からの工場移転が言われ始めてから数年は経ち、それが事実であれば、日本からの輸出は中国が頭打ち、減少傾向になる。その一方で、その他のアジアが高い伸びになり、アジア全体の輸出数量指数はあまり変化しないことになる。

 17、18年の実績では中国とアジアが同方向に動いても伸び率の変動幅に関係性は見えず、工場移転の影響は顕著には表れていない。人件費だけでは工場移転が進み難い構造ができていると推測できる。もちろん、工場移転には時間が掛かり、現実の移転はまだ始まったばかりで、長期的には関係性が表れてくるという見方もできる。ちなみに、日本からの輸出額ではアジア(中国を除き、香港を含む)は中国の約2倍である。

 結局、米中貿易摩擦問題から考えると、中国への輸出が現在のテンポで減少幅を拡大していくことはなくても、当面は大幅な落ち込み状態が続きそうである。それを米国やUEが景気を好転させて日本からの輸出が伸びて補うことは期待し難い。結果、全体として輸出は減少基調が続き、延いては鉱工業生産指数も前年を下回る推移になると予想される。

日本の主要国・地域別輸出数量指数と実質財貨・サービスの推移(前年比増減率)

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| 2019年02月28日 | 貿易 | comments(0) | - |
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