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出入力管理法改正は2%消費者物価上昇目標と矛盾

 日本銀行は4月の金融政策決定会合で新たな経済・物価見通しを示し、目標として掲げていた消費者物価上昇率2%の達成時期を、それまでの2019年頃としていた表現を削除した。一般的にはこれでようやく日銀は2%上昇を諦めたと認識されている。労働力不足がパート・アルバイトなどで賃上げが低額でも進みつつあり、購買力向上と労働コストアップの需給両方から物価上昇は徐々にでも高まる可能性が見え始め、時間は掛かるが労働力不足によって2%上昇に向かうと予測することはできた。

 ところが、政府が財界の要請を受け、外国人労働力の導入で労働力不足を解消できるように出入国管理法の改正に乗り出し、改正法が国会で成立する見通しになっている。結果、労働コストからの消費者物価上昇要因は、改正法が実施される19年4月から直ぐに外国人労働力増にならなくても抑制される。労働コストからの消費者物価上昇の可能性はなくなり、2%上昇の実現はさらに遠のく。

 現実の消費者物価は18年度に入って上昇傾向にあるが、その要因は一巡傾向にある。当面、消費税引き上げの影響を除いて、物価上昇率は縮小に向かうと予測されるからである。長期的に賃金が上昇しなければ、消費税の引き上げの有無に関係なく個人消費需要は回復せず、基本的に需給要因が改善しない状況で値上げは困難である。もちろん、消費税引き上げはより一層消費を抑制することになる。

 消費者物価上昇率の推移をみると、日銀の4月金融政策決定会合時前に発表されていた2、3月は、全体の消費者物価指数は前年同月比で1.5%増、1.1%増、うち生鮮食品を除く総合で1.0%増、0.9%増、生鮮食品及びエネルギーを除く総合で0.5増、0.5%増で、全体を合わせた全体の1%台の上昇率は消費税引き上げが行われた14年度を除いて高い上昇率である。これら3指数の上昇率格差から明らかなように、異常天候による生鮮食品の高騰と、エネルギー、つまり原油を中心とする輸入物価上昇による卸売りの国内物価指数上昇が波及したことにある。輸入物価指数は原油や穀物の上昇に加え、為替レートの円安が重なった。

 

 もともと、目標の2%上昇には生鮮食品は除かれており、天候要因は一時的なもので、通常の状態に戻れば生鮮食品は値下がりする。事実、6月には生鮮食品を除く総合0.8増%になり、全体の消費者物価指数の0.7%増を下回っている。

 一方、輸入物価は世界経済の景気回復と投機資金の流入などもあって国際商品市況が上昇したが、この頃は一段の上昇は予想されなかった。また、為替レートも1ドル=110円台前半の水準からは円安が進み難くなっており、国際商品による物価上昇は解消する見通しになっていた。実際、消費者物価指数は4〜7月は1桁台の上昇率の推移である。

 ところが、消費者物価上昇率は8月に1.3%増と再び1%台に乗り、9月1.2%増、10月1.4%増である。台風や豪雨などの天候要因による生鮮食品の高騰の影響だけでなく、生鮮食品を除く総合でも9、10月は1.0%増と1%台の上昇である。ただし、生鮮食品およびエネルギーを除く総合は7〜9月の3か月が0.4%増であり、エネルギー、つまり原油価格高騰の影響の方が天候要因よりも大きい。

 国際商品市況は世界的な経済成長の鈍化を受けて頭打ち傾向にあった。その中で、原油は5月にトランプ米大統領がイラン核合意から離脱し、イランへの経済制裁を再開させると発表したことから、原油供給の減少を見込んで価格が高騰した。それ以前から需要は回復しており、原油価格は産油国による需給改善、価格引き上げのための減産で、17年頃から上昇傾向にあった。原油不足をにらんだ投機資金の流入もあって、18年5月には1バレル70ドル台に達していた。そこにイラン経済政策が加わり、10月初めには80ドル台になり、一時は100ドルを超えるという見方もあった。それが日本の7〜9月の物価指数に反映した。しかし、イラン原油が供給されなくても原油不足が避けられ、需要の伸びも高くないため、原油価格は10月中旬以降、顕著に値下がりしている。

 輸入物価指数は既に契約通貨ベースで7月、円ベースで8月をピークに上昇率は低下傾向にある。最近の為替レートは変動が少ないため、両ベースの輸入物価指数の上昇率は同レベルの推移になっている。この上昇率の低下は10月の統計ではまだ表面化していないが、今後、国内物価指数の伸びの鈍化を通して消費者物価に影響してくる。また、高騰していた季節商品の野菜も、天候の回復で11月に入って値下がりしている。この2つの物価上昇要因が一巡したことにより、11月以降、消費者物価上昇率は急速に低下し、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合のいずれもゼロ上昇率に近づくと予想される。為替レートもトランプの姿勢からみれば現状以上の円安は考え難いからである。もし、円高になれば消費者物価が再びマイナスなることも十分あり得る。

 このような状況がいつまで続くかは不明だが、出入国管理法改正は消費者物価上昇には抑制効果になる。政府は財界に求めた賃上げ要請は労働コストの上昇を通して物価を押し上げ、2%目標の支援策になる。一方、外国人労働力の導入は労働需給の緩和を通して賃金に対して抑制効果を持つため、消費者物価上昇率2%目標に対して矛盾する政策になる。

消費者物価指数と企業物価指数の対前年比上昇率の推移

経済の視点
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| 2018年12月02日 | 政策 | comments(0) | - |
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