スポンサードリンク

何歳まで働くのか、何歳まで働けるのか

 労働力不足が深刻化する中で、この経済レポートでも高齢者と女性の就業増が顕著であることを指摘し、一般的にもこの就業状況が認識されるようになっている。労働力需要の変化は経済動向によるが、日本経済は世界不況の契機になった2008年9月のリーマンショック前の同年2月にピークを打った。その後は世界各国の景気対策によって世界経済は底入れし、日本経済は輸出主導で09年3月をボトムに回復に転じている。労働力需要は経済変化の遅行指標であり、10年には回復に転じていると推測できるが、11年は東日本大震災によって統計が発表されていないため、12年からの統計で就業状況を分析する。

 男女別では、女性の就業は就業率(対人口比)で着実に上昇し、5歳年齢別の25〜29歳から55〜59歳までの20代後半から50代までが、17年、18年前半は70%台である。これらの各年代間で12〜18年上期までの5年半での上昇幅を見ると、最小の45〜49歳で73.0%から77.3%へと4.3ポイント、最大の55〜59歳は62.6%から71.3%へと8.7ポイントである。55〜59歳は女性の就業化と高齢者の就業増の2つの効果が合わさって高い伸びになっている。

 ただし、各年別のいずれも上昇幅は16年ごろから頭打ち傾向がみられる。特に、45〜49歳は17年の77.5%から18年上期に77.3%へと低下しており、年間と半期の統計期間の要因を考慮しても、伸びの頭打ち傾向は明らかである。経済要因は別として、女性の非婚率が今後も高まり、基調として女性の就業率は上昇が予想できるが、そのテンポは穏やかなものに留まろう。

 一方、30代から50代の男性はいずれも18年上期は90%台であり、もともと就業率が高水準であったため、12年からの景気回復による就業率の伸びは僅かである。男女間の就業率格差はまだ大きく、格差が認識されないほど縮小するには、社会構造変化、日本人の意識改革なしには考えられない。

 このため、これからの就業増要因としては、従業率の上昇が続いている高齢者の就業化が重要になる。就業率は男性が40〜44歳でピークになり、その後は高齢化が進むに従って徐々に減少し、60〜64歳からは5歳階級毎でいずれも急減に向かっている。そして、85歳以上でも一定数の就業者がいるのは経営者や自営業者と推測できる。一方、女性は25〜29歳で一度ピークになって減少した後、45〜49歳で25〜29歳よりも水準は下回るが、再度ピークを迎える。そして、60〜64歳から急減するのは男性と同様である。

 高齢者の就業を考える場合、年金収入との関係が大きいと考えられる。現在、公的年金は従来の60歳支給から65歳支給に向け、13年度から男女で支給開始年齢に格差を付けて始まった段階的移行期間中である。ただ、12年からの男女の就業率の推移ではその影響は顕著に現れていない。

 今回の65歳支給開始への年金支給制度の改悪による収入面での将来不安より、既に68歳、さらには70歳への支給開始年齢の延期が話題になっている。現在の受給額が大幅に減額になることはなくても、実質ベースでの保証は期待できないと思っている人が大部分であろう。かつ長寿命化による医療費や介護費の負担による不安が大きいため、富裕でない一般の国民は年をとっても働き、貯蓄志向が強いと考えられる。これは政府やマスコミが景気回復を強調しても、個人消費の不振が続く実態とも一致する。

 もちろん、将来不安から働きたくても労働需要がなければ働けない。近年の労働需要が強い状況で、高齢者の同年代でみて年々、就業率が上昇する一方、60〜64歳から年をとるほど就業率が急速に減少している現象の要因として、需要側と供給側の需給の両方が考えられる。

 需要側の企業は仕事の効率化から、同じ労働者に長く働く可能性のある相対的に低年齢者、かつ低賃金で雇用できる労働者を求める。しかし、現実には低賃金で雇用できる若者の人口は減少し、需給が逼迫していれば、高齢者を雇用するしかない。長期雇用は期待できなくても、年金収入がある高齢者は低賃金で雇用できる。また、不況時には解雇もし易いメリットがある。これは近年、上昇してきた高齢者の就業率が不況時には低下する要因になる。ただし、失業率では就労活動しない人は労働力に含まれないため、統計で失業率が高まるかどうかは不明である。もともと、労働力人口は65歳までで、それ以上は労働力統計の労働力人口には含まれない。

 一方、供給側の労働者は将来不安から収入を得るため、また仕事をせずに何もしないと体に良くないと考える人も多く、一般的に就業意欲は高い。それが高齢労働者需要の拡大に伴って高齢者就業率の顕著な拡大をもたらしている。定年が始まる60〜64歳の男性の就業率が18年上期でも80.8%であることがそれを裏付けている。

 ただし、需要が現実に就業するかどうかは個人差が大きいと考えられる。18年上期で60〜64歳が高水準でも、55〜59歳からは10ポイントほども就業率が低下している。就業意欲があっても、働けない体調になれば諦めるしかない。高齢化が進めば働けない人が増えるのはやむを得ない。

 また、年金が60歳から貰えなければ、就業率がもっと高くなっても不思議ではないが、退職金や企業年金で一定の生活水準を維持できる人は少なくない。収入や貯蓄があっても就業意欲はあると思えるが、仕事内容が自分の希望と合わなければ就業意欲が湧かない人もいる。これらを合わせて10ポイントほどの低下をもたらしているのであろう。

 65〜69歳は60〜64歳に対して20ポイント前後も減少し、その後も高齢化に伴って急速に就業率は下降している。その一方で、75〜79歳までは今回の人手不足状況の下で、就業率が低水準でも増加する傾向にある。80〜84歳は増加してもそのテンポは極めて穏やかになり、85歳以上はほとんど頭打ちである。これから判断すれば、人手不足状態においては80年代前半、少なくとも70代までは働く意欲と体力のある人は働ける可能性があるといえる。

 また、高齢者の労働供給では1947〜49年生まれの団塊の世代の中心が70歳になる問題がある。急速に労働市場から退出する年代に入っており、高齢者の供給は減少過程にある。経済環境は変動するため、その時々で労働需要がどうなるかは不明だが、供給面からは就業機会の拡大要因になる。

 ただし、政府は経営者側の要望を受けて、形式は別として低賃金の外国人労働力を導入する方向にある。現状の実習生制度や留学生によるバイトによる高齢労働力需要の影響は小さいが、外国人労働力の導入が本格化すれば、大きくなる可能性がある。その場合は働きたくても働けない高齢者が増えることになる。


5歳年齢別就業率(就業者数/人口)の推移

経済の視点
コミュニティー・プランナーズホームページへ戻る

JUGEMテーマ:経済全般

| 2018年10月10日 | 雇用 | comments(0) | - |
スポンサードリンク

コメント
コメント投稿フォーム:
 上の情報を次回も利用する
Copyright (C) 何歳まで働くのか、何歳まで働けるのか | 経済への視点. All Rights Reserved.