日本経済の成長構造は変わったか
2012年12月に第2次安部政権が誕生してから5年近く経った。覚えきれないほど経済政策のキャッチフレーズが出されているが、経済成長率で見る限り前民主党時代から高まっていないことは、各方面から指摘されている。もちろん、マクロの経済成長率では特に変化がなくても、その構造が変化していれば、今後の成長率の高まりに期待を持てる。
しかし、残念ながら本質的に構造変化が見られないことは、発表された7〜9月期のGDP統計(1次速報)の以下のような特徴に典型的にみられる。
実質GDP成長率は前期比で0.3%増(年率1.4%増)と最近では特に高くも低くもなかった。GDP成長率全体を引き下げた要因は、15年10〜12月期以来7四半期ぶりに0.5%減のマイナス成長になった民間最終消費支出にあることは誰の目にも明らかである。もともと、個人消費が盛り上がらない中で、前期が0.7%増と比較的高い伸びをした反動と夏の天候不順の影響と推測できる。これからみれば、個人消費に特に変化はないと考えられる。
また、民間住宅も10月1日付のこの欄で予測した通り、同様に7四半期ぶりのマイナス成長だが、絶対額が小さく、全体に与える影響は小さい。
一方、民間企業設備は4四半期連続プラス成長だが、0.2%増でしかなく、企業収益が高水準を維持しているにも関わらず、16年10〜12月期の1.9%増を除けば低い伸びが続いている。企業は長期的に国内需要、輸出も含めて国内生産が増えることは考えず、設備新増設投資は抑制し、最低限必要な設備更新、競争力維持・強化に必要な合理化・省力化投資に留めていることが窺える。この姿勢が変わることは期待し難い。
以上のように国内需要が低迷し、特に民間最終消費のマイナス成長によって、内需全体が実質GDP成長率の0.2%の引き下げ要因になったのに対し、外需が0.5%引き上げ、全体として0.3%成長になった。
財貨・サービスの輸出が4〜6月期の0.2%減から1.5%増へと持ち直すと同時に、GDPの控除項目になる財貨・サービスの輸入が反対に1.4%増から1.6%減になり、両要因からGDPを0.5%引き上げる効果になった。ちなみに、4〜6月期は内需が0.9%の引き上げ、外需が0・2%の引き下げであったのと比較すると、4〜6月期の内需主導の成長から、7〜9月期は外需主導の成長へと全く真逆になる。
以上の説明やグラフからも明らかなように、個々の各需要項目の四半期別の推移は大幅に変化する。これは季節調整の精度の問題も考えられるが、それは別として、たまたま各重要項目が高い伸びになれば、それを積み上げたGDPは比較的高成長になる。逆であれば、低成長、マイナス成長になる。
7〜9月期は外需の伸びが内需のマイナスを補い、最近のGDP成長率の基調程度の成長になった。10〜12月期は民間最終消費が天候要因の好転で反動増が見込める一方、外需の財貨・サービスの輸入も反動増が考えられ、内需主導の成長に戻ると予測できる。いずれにしても、四半期の動向に一喜一憂しても仕方がない。よれよりも基調の評価が重要になる。
以前から、この経済レポートで日本経済は内需が所得の伸びや人口減少から低成長を余儀なくされる状況で、外需、輸出、つまり海外経済によって日本の景気が変動する構造になっていると指摘してきた。海外経済は好転していても、欧米の金融政策の転換を事前の予想より遅れていることは、需要の伸びが弱いこと示し、それが日本経済の成長力に波及している。
結局、7〜9月期までのGDP統計をみると、安部政権の経済政策の効果はなく、日本経済の構造はほとんど変化がないと判断できる。今年も年末を迎え、民間の予測機関から来年度の日本経済の成長率見通しが発表されるが、海外経済に期待が持てなければ、日本経済は低成長が続く見通しになる。
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