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7〜9月期のGDPの実態は原系列の方が分かりやすい

 2016年7〜9月期の実質GDP成長率が1次速報(季節調整値)で前期比0.5%増(年率2.2%増)になったと内閣府が発表した。内需の主要項目の民間最終消費は0.1%増、民間設備投資は横ばいに留まり、内需のGDP成長に対する寄与度は0.1%でしかなかった。一方、輸出は2.0%増、輸入は0.6%減で、外需の寄与度0.5%増(内需と合わせると0.6%増になり、GDP成長率の0.5%増を0.1%上回るが、これは四捨五入の影響による)が高かった。

 この発表を受けて、マスコミ各社は内需が弱く、外需依存の穏やかな成長という評価でほぼ一致している。実質GDP成長率は季節調整値の前期比で15年10〜12月期の0.4%減から、16年1〜3月期0.5%増、4〜6月期0.2%増、そして7〜9月期の1次速報値0.5%増の3四半期連続のプラス成長で、この推移からだけみれば、穏やかでも着実に成長軌道を辿っているように受け取れる。ただし、企業や国民は回復感が乏しいことを指摘するマスコミもある。

 もともと季節調整が正確かどうかの問題があり、特に最近のように東日本大震災や熊本地震、消費税増税など季節と関係ない突発的な変動要因が多くなると、季節調整値の信頼度は低くなる。このため、一般的に季調値があると、季調値は基調判断に使えるため、それに頼る傾向にあるが、原系列の前年比も参考にする必要がある。

 原系列の前年同期比は14年4月からの消費税増税の影響で、1?3月期に民間最終消費支出と民間企業設備投資、そして輸入が突出して伸びている。増税の影響が前年比でほぼ一巡したと推測できる15年10〜12月期から、16年7〜9月期1次速報値までの4四半期で原系列の前年同期比の推移をみると、景気の現状がよく理解できる。

 この間の実質GDP成長率は0.7%増、0.2%増、0.6%増、0.9%増となっており、1〜3月期を底に盛り返しているといえる。ところが、名目GDP成長率は2.2%増、1.1%増、1.4%増、0.8%増と逆に縮小傾向にある。名目の売上額で経営判断する企業にとっては厳しいと感じても不思議ではない。

 主要需要項目のうち、実質民間最終消費は1.0%減、0.2%減、0.5%増、0.1%増と前年水準前後の推移で、特に、名目は1.2%減、0.6%減、0.3%減、0.9%減とマイナス成長が続いている。収入面では低水準でも賃上げが行われ、就業者数は増えているため名目でプラスになっている。それにも拘わらず、消費がマイナス成長であるのは、消費者が将来不安から支出を抑える意識が強いことを示している。

また、実質設備投資は4.1%増、0.5%増、1.0%増、0.3%増である。設備投資は15年1〜3月期を除いて前年をわずかに上回る水準での推移であり、回復とはほど遠い状態である。以前から言われているように、企業は収益が改善しても設備投資意欲に乏しいことを反映している。

 一方、基調値の前期比で16年7〜9月期の成長の牽引役になった外需の輸出は原系列の前年同期比では0.4%減であり、4四半期連続の減少になる。なかでも、輸入は3.1%減の大幅マイナスになった。輸入は需要の海外流出であり、控除項目になる。つまり、輸入の減少はGDPにとってはプラス効果になる。その金額の効果をみると、7〜9月期の実質輸入の金額減は6,255億円になり、実質GDPの金額は前年同期比で1兆1,655億円の増加の半分強は輸入の減少によることになる。

 輸入は国際商品市況の値下がりや為替レートの円高で、輸入価格の値下がりが見込まれる場合、抑制されることはある。7?9月期頃は国際商品市況が底入れしてもそれほど顕著な値上がり傾向ではなかった。一方、円高傾向であったため、輸入価格からの効果が少しはあるとしても、それよりも国内景気の影響が大きいと考えられる。民間最終消費や設備投資の推移にみられるように、需要が伸びなければ製品や原材料の輸入は抑制されるからである。それがGDPの成長をもたらしても、喜べる状況にはない。

 ちなみに、輸入減効果、つまり7?9月期の輸入が前年同期と同額とすると、実質GDP成長率は前年同期比で0.9%増から0.4%増へと縮小する。これであれば、きわめて穏やかな成長が続いていることになり、企業や国民の実感に合っているといえる。原系列の前年比の推移から、実質GDP成長率の基調は0.5%増前後の推移と推測でき、マイナス成長ではないという程度のきわめて穏やかな回復軌道という判断になる。それから脱して力強い回復・成長路線に移行するためには、民間最終消費や設備投資、輸出にかかる。

 当面、民間最終消費や設備投資に期待できる環境になければ、輸出、つまり米国を中心とする世界経済に左右される。トランプ米新大統領の政策に期待する人も多いかもしれないが、現実に実行される段階になると、夢から覚めるという事態になるのではないか。輸出は増加する可能性は高いと予測できても、高いものは期待しがたい。

 また、内需では日本政府も景気対策に躍起になり、公共投資による経済成長の可能性は高い。しかし、最近では13年度に東日本大震災から復興投資で公共投資が大幅に増加したが、それが一巡すれば、元の木阿弥の現状がある。結局、公共投資に関しては、以前から確認されている一時的な効果が再確認されただけで、財政赤字を積み上げて付けを後世に回すだけでしかない。

図 主要需要項目別GDP成長率(原系列、前年同期比)

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| 2016年11月30日 | 景気 | comments(0) | - |
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