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輸入面からの物価抑制圧力はピークを過ぎ、今後の消費者物価は

 2013年央頃から始まった消費者物価上昇は国際商品市況の上昇に加え、金融緩和による為替レートの円安で、輸入品価格が高騰した影響であった。それが一巡すれば消費者物価の上昇は終焉し、日本銀行が目標とする脱インフレ、2%の物価上昇は実現しないと以前からこのレポートで指摘してきた。

 実際、今年に入って、特に4月以降は消費者物価のマイナス基調が定着し、日銀は脱インフレの失敗を認めざるを得なくなっている。そして、前回のこのレポート取り上げた原油価格にみられるように、国際商品市況は底入れから、上昇に転じている。となれば、今度は日銀が目標にする2%は想定できなくても、物価が上昇し始めるのではないか、上昇するとすれば、どの程度かが問題になる。

 原油や穀物などの国際商品市況は08年9月のリーマンショック後の世界的な景気後退で大幅に下落したが、09年には底入れから回復に向かっていた。10年の欧州ソブリン危機や米国、中国の経済回復力の弱さから、全体的には需要の伸びは弱くても、投機資金の流入で日本への影響の大きい原油価格は大幅下落の反動もあって上昇は顕著になっていた。ところが、米国のシェール革命で供給が増え、需要回復の弱さと相俟って需給バランスが崩れた。それが明らかになった14年頃をピークに原油価格は急落し、そして、採算悪化による減産で16年に入ってようやく価格は底入れした。

 ただし、このような国際商品市況に対し、日本の輸入価格指数は前年同月比で、円ベース、契約通貨ベース(主にドルベース)のいずれも12年末頃まではほぼ横ばい水準で推移していた。それ以降は急速に両者に乖離傾向が見られるようになり、契約通貨ベースが14年央まで横ばい傾向の推移の一方、円ベースは急上昇になった。日銀の政策もあって為替レートが急速に円安になったためである。12年の1ドル=80円を挟む展開から、13年の春以降は100円前後まで下落し、1ドル当たりの円の上昇率は前年同月比で20%台になり、円ベースの輸入物価指数の上昇率は同10%台後半になった。

 輸入物価指数上昇の影響が国内企業物価指数に波及したのは半年ほど後度で、国内企業物価指数が前年水準を上回るようになったのは13年4月からである。それが2か月ほど掛かって消費者物価指数に波及した。

 逆に、国際商品市況が横ばいから下落傾向になっても、国内企業物価指数は15年3月までは前年水準を上回っていた。為替レートが15年夏頃の120円台まで円安になった影響だが、円安よりも国際商品市況の値下がりによる輸入物価の下落効果の方が大きくなり、円ベースの輸入物価指数は15年1月から、そして、国内企業物価指数は15年4月から前年水準を下回るようになった。

 一方、15年末ごろから国際商品市況は底入れ傾向がみられ、為替レートも円高へと転換した。この影響を同様に比較すると、輸入物価指数の契約通貨ベースは15年9月の21.1%減をピークに最初は穏やかに、61年に入って急速に減少幅を縮め、9月は7.0%減である。しかし、円ベースでは円安のため、20%台の減少が続き、円高が一服した9月は17.7%減である。

 また、国内企業物価は16年9月まで前年水準を下回る推移だが、4〜7月までの4%台の減少幅から、9月には3.2%減にとどまっている。国際商品市況が持ち直し、円高は一時的かもしれないが、小康状態になり、国内企業物価は落ち込み幅が縮小する傾向がみられる。この状況が続けば、国内企業物価は前年比横ばいか、小幅でも前年を上回るようになるかもしれない。現状は、少なくとも輸入面からの物価引き下げの影響力は15年秋頃がピークで、一巡しつつあると推測できる。

 その一巡後に圧力が上を向くのか、下を向くのかは国際商品市況と為替レート次第になる。ただし、その結果として、消費者物価がどう変動するかは需給要因、個人消費の影響が大きい。もともと、消費者物価指数は輸入影響の少ないサービス業の占める比重が高いこともあり、輸入物価指数が円ベースで上下に40%ほどの変動幅で大きく変動しても、国内企業物価指数はこの間、10%にも満たない小幅で、消費者物価指数は消費税分を除けば2%程度にとどまっていることからも明かである。

 国際商品市況は世界経済の成長力が穏やかな状態であれば、回復傾向が続いても高騰は予測できない。原油は産油国に値上げ意欲はあり、共同で減産に取り組む可能性はあるが、値上がりすればシェールガス・油の生産が増加する。加えて、技術進歩によってシェールガス・油の生産コストは低下しているため、1バーレル60ドル台が限界と推測される。

 為替レートは投機要因もあり、円高、円安の両方の可能性があるが、金利では米国の金利引き上げが予想され、円安環境にある。その一方で、政府や企業が円安を望んでも、米国がドル高に反対している状況から判断すれば、かつてのような大幅な円高は見込めない。

 つまり、輸入面からは力は弱くても物価を引き上げる要因と判断できるが、13年から14年初め頃のような影響力は考えられない。結局、国内の消費者次第になる。消費者は所得が増えないなかで、税・保険料負担が高まって可処分所得の伸びは抑えられ、「年金カット法案」が話題になっている状況で、将来不安の払拭は期待できない。結果、消費抑制が続くと予測され、デフレの解消が遠いとなれば、消費者物価は横ばい程度かマイナスが今後も続くことになる。


国内企業・輸入物価と為替レートの伸び率の推移(前年同月比)


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| 2016年11月06日 | 景気 | comments(0) | - |
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