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平均消費性向は2015年7〜9月期から顕著に低下、回復はまだ先

 個人消費の不振が誰の目のも明らかになり、国民の将来不安の高まりがその背景にあるとの認識が広がってきた。金融緩和で為替レートが円安になり、消費者物価が上昇しても、円安による物価引き上げ効果が一巡すれば、物価上昇は終わると、この経済レポートで当初から指摘してきた。つまり、アベノミクス効果は一時的で、金融緩和でインフレ期待は生まれず、2%の物価上昇は達成できないと予想していた。その実態が確認され、消費にも影響しているが、安倍政権が発足した初期の消費はそれほど悪くはなかった。今回はその転換時期と要因を考える。

 消費者の消費行動は全所得のうちの消費支出割合の平均消費性向で量られ、景気判断の分析には速報性のある総務省統計局の「家計調査」の勤労者世帯(2人以上世帯)が資料として使える。ただし、以前にも取り上げたが、信頼性に留意する必要がある。

 家計調査は詳細に商品別の購入金額等が記入されているため、消費関連の分析では貴重な資料になる。逆に調査を引き受けて記入する方からは手間暇が大変で、回答者の引き受け手が少ない問題がある。このため、公務員が回答者を引き受けることが多くなり、回答が偏るという批判が以前からあった。最近のように女性就業が進めば、より引き受け手が減少する可能性が高くなっていると推測される。また、記入期間は半年間で、かつ毎月12分の1ずつ入れ替わり、継続性が維持されないことに留意、つまり、精度に若干疑問があることを前提に利用する必要がある。

 最近の平均消費性向をみると、年間では2012年の73.0%から13年74.0%、14年75.3%、15年73.8%で、14年がピークである。また、四半期別の推移は13年1〜3月期87.2%、4〜6月期72.9%、7〜9月期78.7%、10〜12月期64.6%で、大きく変動している。ボーナス等の臨時収入で季節的に収入が変動する一方、季節的な支出要因があり、平均消費性向は季節で変化は大きくなる。

 このため、前年比でみないと判断できない。同様に14年は90.1%、72.8%、78.5%、64.0%であり、消費税増税前の駆け込み需要で1〜3月期の伸びが高い。しかし、その後は前年とほぼ同水準の推移であり、平均消費性向でみる限り、消費税増税で消費抑制が始まったとはいえない。むしろ、14年の4〜6月期は駆け込み需要の反動減が見込まれるにも拘わらず、13年と同水準であれば、むしろ消費税増税の影響は無いと判断できるかもしれない。ただし、増税で価格が上昇したため、量的には駆け込み需要の反動減でも金額では支出が増え、平均消費性向が維持される結果になったといえる。

 この判断には収入との比較が必要になる。実収入と収入から税金、保険料などを差し引いた可処分所得では、13年1.0%増と0.3%増、14年0.7%減、0.6%減となっており、ほぼ同程度の増減率の推移である。収入の伸びが低ければ、可処分所得との伸びの格差は小さい。ちなみに、消費支出は13年1.7%増、14年0.1%減であり、同水準の生活維持であれば、少なくとも駆け込み需要の影響がほぼ消えた14年の後半は、増税分だけ支出が増える。14年の収入や可処分所得と消費支出の減少幅の格差が0.5ポイントしかないことから判断すれば、消費税増税で生活水準は低下することになるが、消費抑制への影響は大きいとはいえない。それは年間の平均消費性向が13年より高まっていることからも判断できる。つまり、生活水準維持を優先、まだ先行き不安は大きくはなかった。

 15年の四半期は1〜3月期が85.3%である。駆け込み需要の14年の同期とは別として、13年1〜3月期の87.2%は下回る。ただし、12年の1〜3月期の82.7%は上回り、増税の影響は判断し難い。そして、15年4〜6月期の73.0%は12〜14年の同期の73%前後とほぼ同水準であり、これから増税の影響が1年ほどで解消に向かっていたという見方もできる。

 ところが、その後の推移は15年7〜9月77.5%(前年同期比1.0ポイント減)、10〜12月期(同1.1ポイント減)、16年1〜3月期84.4%(同0.9ポイント減)、4〜6月期71.4%(1.6ポイント減)である。家計調査の精度に疑念があっても、平均消費性向の低下傾向は顕著である。これらの推移から、消費税増税の影響が解消に向かう可能性はみられたが、それは一時的現象で終わり、15年7〜9月期以降は消費税に関係なく消費抑制が強まったといえる。

 その要因としてはアベノミクス効果の幻想が明らかになったことにあると考えられる。それが国民に最も分かり易いのが消費者物価指数である。消費者物価指数(総合)の前年比上昇率は14年4月からの消費税増税の影響が15年3月で一巡し、3月までの2%台上昇から4月には0.6%増にまで急減した。その後も上昇率が低下傾向で、9月には一時的だが0.0%の横ばいを記録し、16年3月からはマイナスでの推移である。

 消費者物価指数は翌月末頃、4月の指数は5月末頃になり、この頃からインフレ期待、ひいては日本経済の成長が幻想と認識されるようになった。アベノミクス効果がマスコミなどで問われるようになり、アベノミクスの実態が国民、消費者に徐々に浸透していくと考えると、その影響で平均消費性向に7〜9月期から明確に現れるのはおかしくはない。そして、現状では消費税再増税を延期しても、平均消費性向の急回復を期待する要因は見つからないため、消費の回復は予想できない。

 足元の収入は増えなくても、将来に期待が持てれば、消費に積極的になるかもしれない。しかし、収入が増えない中で、アベノミクスの実態が明らかになれば、収入が増える夢は消える。その一方で、福祉は切り下げられ、消費抑制に向かうのは当然である。打ち上げ花火で国民を喜ばしても一時的な効果は明らかになっている。加えて、その費用は将来のツケになるだけであることを考えれば、むしろマイナスになる。このような政策が維持、拡大されれば、その収拾がより困難になるだけである。いずれにしろ、派手な花火ではなく、地道な取り組みが求められている。

平均消費性向の推移

経済の視点
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| 2016年08月31日 | 景気 | comments(0) | - |
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