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輸出数量指数はEUだけが比較的高い伸びで、全体ではマイナス成長

 為替レートは円高が進み、2015年の1ドル=120円台から、16年に入って110円台、そして4月からは100円台、6月には1時100円を割り込んだ。逆に、7月後半は一時的に100円台後半の円安になったが、国内取引は月末の29日に103円で月を越えた。為替レートが変化すると、かつては輸出や工場の立地戦略への影響が話題になっていた。ところが、最近では輸出企業を中心とする収益への影響は取り上げられても、輸出や立地に関してはほとんど無視である。

 以前からこの欄で指摘しているように、企業は最終製品は需要国・地域、労働集約型の分野は人件費の安い発展途上国に立地する立地戦略を採っており、為替レートの影響は小さい。また、輸出は市場確保からドル建て価格を維持するため、為替レートの変動は輸出数量には波及せず、企業収益の変動をもたらす傾向にある。このような事情が一般的に認識されるようになり、為替レートが大きく動いても、日本経済との関連で輸出への影響は議論の対象にはならなくなっている。

 日本経済の現状についても、回復力が弱いことは誰も否定できなくなり、政府は公共投資でてこ入れを図る方針を示している。しかし、1990年代以降の公共投資による景気対策は、その時だけGDP水準が高まっても、それが民間設備投資や個人消費に波及しなかった。危機対策効果が一巡すれば元に戻ることは何度も経験しており、財政赤字を拡大するだけであることが明らかになっている。

 国内需要の回復力が弱ければ、輸出に期待が掛かる。輸出の為替レートの影響が小さければ、輸出先国・地域の景気に依ることになる。足元は輸出も低迷を続けているため、日本経済も回復からほど遠い状態にある。輸出を輸出数量指数(2010年=100)でみると、16年6月(速報値)は前年同月比で2.9%増になり、2月の同0.2%増から4か月振りにプラス成長になった。2月はうるう年効果があったことを考慮すれば、17年6月の同0.1%増以来、1年振りになる。それでも、基調を判断するために、四半期別の推移をみると、4〜6月期は前年同期比1.4%減になり、5四半期連続の減少である。

 主要な輸出市場の3大国・地域では、前年同期比でEUの伸びが目立っている。EUの輸出数量指数は14年10〜12月期以降、7四半期連続のプラス成長で、16年4〜6月期は5.4%増と比較的高い伸びである。一方、同期の米国は5.2%減の5四半期連続のマイナス成長で、アジアは0.4%減の微減だが、マイナス成長は4半期連続になる。ただし、アジアに含まれる中国は2四半期連続の0.8%増である。中国経済は政府発表以上に実態が悪いという見方があるが、日本からの輸出でみる限り、良いとはいえなくても、非常に悪いと言うほどではないことになる。

 EUは比較的高い伸びでも全体では減少になるのは、基準年の10年のEUの輸出金額全体に占める構成比が11.3%と低いためである。これに対し、アジア56.1%、中国19.4%、米国15.4%である。ちなみに、15年はアジア53.3%、中国17.5%、米国20.1%、EU10.6%であり、この間に米国が金額では大きく伸びたことを示している。

 EUの輸出数量指数は13年以降、比較的高い伸びで推移しているが、日本に先行してマイナス金利を導入しているほどで、経済が順調に成長しているわけではない。ギリシャの財政問題に端を発した債務危機、いわゆる欧州ソブリン危機、ユーロ危機といわれる金融危機から13年頃から脱してきた効果である。これから考えれば最近の輸出数量指数の比較的高い伸びは一巡するのではと予想される。

 一方、アジアは欧米先進国依存の経済であり、欧米が経済成長しなければ成長は難しい。また、米国は経済成長が期待されながら、金利引き上げが遅れ気味になっているように、経済回復力が高まらない状況にある。加えて、日本企業の米国立地の他、日本製品の競争力の低下の影響が考えられ、特に後者であれば、今後の懸念材料になる。

 米国の経済成長力が高まらないのは、基本的に格差問題があると推測される。米大統領予選でトランプ氏やサンダース氏が予想を大きく上回る人気を得ている理由として、米国での所得格差問題が指摘されている。これは日本や欧州でも同様で、米国は人口増による個人消費拡大効果はあるが、基本的に大多数の国民の所得が増えなければ、個人消費主導の経済成長は見込めない。このような状況から考えれば、輸出収量指数がマイナス成長から脱したとしても、高い伸びは予想できず、GDP成長率の改善は期待できない。

 世界的に低金利にもかかわらず、経済が停滞状態から脱せないのは、低金利でもそれだけ収益が見込める投資機会が見当たらないため、設備投資が盛り上がらないことにある。また、消費税の引き上げの延期を国民は歓迎しているかもしれないが、それが福祉にしわ寄せされることを懸念している。寿命が延びる状況では、所得に少し余裕ができたとしても消費を増やす気分にはならない。雇用も含めて生活が見通せない現状で、小手先の政策をいくらいじくっても消費が拡大する可能性はない。



主要国・地域別輸出数量指数の伸び率の推移 (対前年同期比)

経済の視点
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| 2016年07月31日 | 貿易 | comments(0) | - |
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