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10大費目に見る最近の消費者物価の特徴

 3月の消費者物価指数の前年同月比上昇率が総合で0.1%減、生鮮食品を除く総合で0.3%減といずれも値下がりに転じた。生鮮食品を除く総合は2015年10月の0.1%減以来、5か月、総合は13年5月の0.3%減以来、2年10か月振りの値下がりになる。物価への影響の大きい国際商品市況が11年をピークに、14、15年には顕著な下落傾向になっていた。また、為替レートの円安が15年11、12月の1ドル=120円台をピークに円高に転じ、16年3、4月は110円前後の推移になっている。15年3、4月は120円前後であり、前年比でも円高になる。これらの物価関連指標の動向から、前年比で消費者物価上昇率がマイナスになることは予想され、それが3月になった。以前からこのレポートで書いているように、日本銀行の政策効果による円安の影響が一巡しただけである。

 物価は需給とコストで決まるが、コスト上昇を価格に転嫁できるかどうかも需給の影響を受けるため、需給状況が鍵になる。もちろん、コスト上昇を価格に転嫁できずに赤字になれば、企業は存続できないため、価格への転嫁は行われる。問題は少なくともコスト上昇に見合うだけの値上げが実現できるかで、需給状況が悪ければ、利益を抑えるか、企業努力で値上げ幅を圧縮するしかない。

 コストはサービス業では人件費の比重が高く、商品は国際商品市況と為替レートを反映する。人件費は大企業の正社員は賃上げが行われても、中小企業や非正規社員は少額の賃上げでしかない。かつ、正社員より低賃金の非正規社員の採用が増えており、雇用者の平均賃金は微増程度の推移になっている。人件費上昇がサービス料金の値上げに波及しているが、需給面から抑制され、サービス物価は低い伸びにとどまる。

 一方、賃金が上昇しなければ、全体として所得の伸びは雇用の増加効果はあっても大きくはならない。加えて、税・保険料負担増で可処分所得の伸びが低くなる一方、社会保障の切り下げが行われていれば、生活防衛から消費は抑制される。最近では消費不況と言われるほど消費の低迷が続いており、熊本地震の日本経済への影響は直接的なものよりも、国民の不安感を高めて消費を抑制する間接的な効果の方が懸念される。

 いずれにしても需給関係は改善からはほど遠く、これからも期待できない。となれば、物価に関しては国際商品市況からのコスト要因次第になる。国際商品市況を原油で代表してみれば、OPECの平均価格で14年に1バレル当たり100ドルを下回って急落し、15年7月には50ドル、16年に入って1月には30ドルも割り込んだ。そこを底にしてようやく反転し、最近は40ドル程度に戻している。他の商品市況は原油ほどの変動ではないが推移は同様で、値下がり傾向から底入れ、そして回復傾向にある。

 消費税値上げの影響は別として、14、15年頃から国際商品市況が値下がりしたが、その一方で為替レートの円安が進行したため、円ベースの国際商品の輸入価格は値下がりに歯止めが掛けられた状態にあった。結果、消費者物価指数はほぼ横ばい圏で推移してきたが、16年に入って為替レートの円安が頭打ちから円高傾向になり、消費者物価指数が3月に前年同月比でマイナスになった。

 ただ、今回は以前の消費者物価の下落時と異なる要因がある。消費者物価の10大費目の前年同月比を見ると、原油価格の影響の大きい光熱・水道、交通・通信がそれぞれ8.5%減、3.0%減と大幅下落で、それ以外が上昇しており、費目間格差が目立つのが特徴といえる。天候要因による生鮮食品は別として、被服及び履物2.1%増、生鮮食品を除く食品2.0%増、教育1.7%増、教育娯楽1.7%増などが高い伸びではなくても上昇基調が続いている。

 教育は人口減を値上げで売り上げを維持していると推測され、被服及び履物は輸入品の比重が高くなっているため、特に、中国で人件費の上昇から輸入価格が値上がりしている影響と考えられる。これは教育娯楽の上昇要因になっている教育娯楽用耐久消費財も同様の事情と推測できる。企業は中国の人件費対策として、他国への工場移転を進めている。移転先のアジア諸国の人件費も順調な経済発展を前提にすれば、中国と同じになると推測される。ただし、現状は中国を始め成長が頭打ち傾向にあり、賃上げに歯止めが掛かり、短期的には徐々に上昇率の鈍化が予想される。

 一方、生鮮食品を除く食品で比重の大きい加工食品は、ガソリン価格が原油の輸入価格を直ぐに反映するのに対し、輸入原材料価格の変化から遅行する傾向にある。国際市況が上昇していた影響が今頃現れていると考えられるが、上昇のピークは過ぎつつある。また、食品価格の上昇が家計の消費を冷やす原因にもなっており、それが収まれば個人消費にはプラス要因になる。

 世界経済動向から予測すれば、国際商品市況が回復しても顕著な上昇にはならないため、消費者物価には引き上げ要因になってもその力は弱い。それよりも為替レートの影響が大きい。金融緩和策は手詰まり気味で、また国際的にも円安政策は行い難くなっており、輸入価格に影響するほどの円安は予想できない。一方で、需給関係の改善は少しは見込めても、大きくは期待できない。結局、消費者物価は円高傾向にならなければ、前年比横ばい前後、着実にでも円高が進めば、マイナスの推移が予想される。

10大費目消費者物価上昇率主要グラフ (2016年3月前年同月比)

経済の視点
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| 2016年05月01日 | 景気 | comments(0) | - |
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