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安倍政権の3年間の経済成長実績を採点すると

安倍政権が発足したのは2012年12月、そして 黒田東彦氏が日本銀行総裁に就任したのが13年3月、日銀が大規模な金融緩和、いわゆる異次元の金融緩和に踏み切ったのはその2カ月後の5月だった。金融政策は別だが、新政権が発足して新たな経済政策を導入しても、それが効果を発揮するには時間が掛かり、3月までの予算は前政権のものに依る。

 このため、安倍政権の経済政策効果の始まりが問題になるが、日銀の金融政策も含めて13年度から安倍政権下の経済、アベノミクスの結果と判断して差し支えないだろう。当初の2年間で消費者物価目標の2%上昇は達成からほど遠いことは、現実の実績から当事者も認めざるを得なくなっている。では、経済成長はどうか。実質GDPは民主党政権下の12年度は519.5兆円、前年度比4.8兆円、0.9%の増加に留まり、東日本大震災の後遺症があったとしても低成長であった。

 これに対し、安倍政権になった13年度は529.8兆円、前年度比10.3兆円、2.0%の増加になり、成長速度が加速した形になっている。しかし、これには14年4月からの消費税引き上げ前に発生した駆け込み需要が含まれている。駆け込み需要は家計最終消費支出に注目が集まるが、建設に時間が掛かる民間住宅は早くも13年7〜9月期には顕著に盛り上がっていた。当時はアベノミクス効果と見る向きが多く、駆け込み需要の可能性は議論にならなかった。しかし、現時点でこの間の民間住宅の推移から判断すれば、その影響は大きかったといえる。

 駆け込み需要の規模は13年度を通して家計最終消費で2兆円以上、民間住宅で1兆円以上、その他にも金額の推計は難しいが民間設備投資も駆け込み需要があったと推測できる。これらを総合的に考えれば、13年度の経済成長はその効果を差し引けば、減速していることはないが、12年度より加速したとは言い難い。

 13年度の日本経済はアベノミクスの効果が広がり、順調に景気回復・拡大と判断した専門家が多かった。つまり、判断を見誤ったことになるが、消費税引き上げに向けた駆け込み需要が予想以上の大きかったのに気づかなかったためである。それが14年度になって実態を認識させられることになった。実質GDPの前期比成長率は4〜6月期、7〜9月期と2カ月連続のマイナス成長で、特に、実質家計最終消費は駆け込み需要の反動減で大きく落ち込んだ4〜6月期から、持ち直しが予想された7〜9月期はほんの僅かだが2四半期連続のマイナス成長になったことで、消費への評価が一変した。

 安倍首相は為替レートの円安で収益が好調な企業に対して賃上げを求めているが、企業はそれに応えていない。企業としては需要が伸びて生産活動やサービス提供が活性化すれば、積極的に賃上げに踏み切るかもしれないが、そうでなければ長期的な固定費負担増になる賃上げは難しい。その背景には、収益拡大要因の円安が長期的に続く保証はないという判断もある。

 消費の不振は収入面だけでなく、税・社会保険料負担が増大する一方で、社会保障水準が切り下げられているため、将来不安が拡大しており、生活防衛から当然である。将来不安では、物価が現実には上昇しなくても、政府や日銀の消費者物価上昇の主張や、これは16年になるが、マイナス金利の導入も影響すると推測される。

 結果、14年度の実質GDPは13年度の529.8兆円から524.7兆円、前年度比5.1兆円、1.0%のマイナス成長になった。実質家計最終消費は8.6兆円の減少で、駆け込み需要の反動減だけでなく、生活防衛のための消費抑制も否定できない。一方、名目でみれば家計最終消費は2.1兆円の減少に留まるが、消費税の引き上げによる物価上昇で、生活を切り詰めても限界があったというのが実態であろう。

 このような状況は15年度も同様で、年度額ベースで発表される四半期の季節調整値の推移は、実質GDPは4〜6月期527.5兆円(年額、以下同じ)、前期比1.8兆円、0.3%と10〜12月期(1次速報)527.4兆円、1.9兆円、0.4%の何れも減少になり、15年度は一進一退の推移である。ちなみに、この2四半期の実質家計最終消費はそれぞれ2.7兆円、2.6兆円の減少で、消費不振の影響は明らかである。

 昨年末に民間の予測機関が16年度の日本経済予測を発表し、それをこの1月1日付けの経済レポート欄で取り上げた。その時の各民間予測機関の15年度の実績見込みは、10〜12月期、1〜3月期は穏やかな回復が続くとして、実質GDP成長率で1%程度、名目で2.5%程度の増加になっていた。ところが、発表時の10〜12月期が速報値だが予想より低い結果になり、足元の1〜3月期も大きく立ち直る見通しにはなく、現状では15年度の実質GDP成長率は0.5%を少し上回る程度、名目は2%を下回る可能性が高い。実質GDP成長率はプラス成長とはいえ横ばい圏水準である。

 金額では実質が527兆円台、名目が500兆円を少し下回り(実質は2005年価格を100としているため、その後の物価の下落で名目が実質を下回る)、安倍政権以前の12年度実績のそれぞれ519.5兆円、474.4兆円からは3年間で1.5%、5%強程度の伸びでしかない。もちろん、まだ確定しているわけではないが、速報値でも10〜12月期まで発表されており、最終実績がこれから大きく乖離することはない。

 この3年間のGDP成長率は年率でみれば実質0.5%、名目1.7〜1.8%程度になる。円安と消費税の引き上げで膨らんだ名目でも平均で2%増にも達しない。最近になってようやくアベノミクスに懐疑的な見方が広がってきたが、GDP成長率の実績からみても効果がなかったことは明確である。この実績から採点すれば、及第点からはほど遠いことは誰の目にも明らかであろう。

 安倍政権や黒田日銀は目くらまし的に次々と政策を打ち出しているが、手詰まり感が出てきている。少なくとも課題の個人消費回復にマイナス金利幅の拡大は逆効果でしかない。預貯金金利のマイナスまでは予想されないが、現実には金庫需要が増えているという報道がある。消費者はその対策として預貯金の引き上げを考えているようである。政策効果は期待通り進めば良いが、現実はそうではないことが証明されているにもかかわらず、責任を避けるためか、その認識がないようにみえるのが16年度に向けての国内経済の最大懸念材料である。


名目と実質のGDP・家計最終消費支出額の推移

経済の視点
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| 2016年03月01日 | 政策 | comments(0) | - |
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