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2016年度の日本経済は1%台半ばの穏やかな回復でも過大?

 今年も終わりを迎え、来年度の日本経済の動向に注目が集まっているが、足元の2015年度の日本経済は1年前の見通しより回復力が弱かった。14年度は4月から消費税引き上げの影響で、実質GDP成長率は前期比で14年4〜6月期、7〜9月期と2四半期連続のマイナス成長の後、10〜12月期、15年1〜3月期は低成長でもプラス成長が続いた。年間成長率は1.0%減のマイナス成長になったが、これを受けて、15年度は着実な回復軌道を描くと期待された。4〜6月期は0.1%減と微減だが3四半期振りにマイナス成長に転落した。そして、7〜9月期は1次速報値では0.2%減になり、14年度と同様に2四半期連続のマイナス成長になったことで、回復力に疑問が生じた。

 ただし、これは2次速報値で0.3%増に上方修正され、2四半期連続のマイナス成長ではなくなったが、回復力が弱い状況に変わりはない。要因としては、企業収益の伸びと労働市場の改善による雇用者所得の増加から、回復を期待された最大需要項目の民間最終消費(個人消費)が停滞状態から脱せないためである。また、世界的な金融緩和が行われているにもかかわらず、世界経済の回復が遅れ、輸出が伸びないこともある。

 7〜9月期の2次速報値の上昇修正から、15年度の実質GDP成長率は年度下期に穏やかでも着実な回復を予想し、1%増程度の成長見込みになっている。それでも、1年前の15年度の各民間予測機関のGDP成長率見通しが名目1%台、実質1.5〜2.5%のプラス成長であったのと比較すれば、何れも回復力を過大評価していたといえる。主要因は個人消費と海外経済、つまり輸出を見間違ったことにある。

 その背景には過去の経験則に囚われているためと推測される。企業収益が賃金に反映し、個人所得が増えて消費が拡大するという見方である。逆に、従来とは異なり、企業収益は日本経済の成長力が弱いにもかかわらず好調である。一般的には、その要因として為替レートの円安が挙げられる。輸出産業は円安の恩恵を受け、輸入産業は円安によるコスト上昇を価格に転嫁できれば、収益の悪化は避けられる。かつ、輸入産業も海外投資収益には円安効果がある。

 これら以外に、企業のコスト削減意欲が強いことが無視できない。需要の伸びが低い、むしろ減少懸念のある中で、収益を確保するにはコスト削減が不可欠になる。その一つとして、労働コストの削減がある。賃金の高い正社員を削減し、低い非正規社員を増やしている雇用の実態は労働統計で明らかで、一般的にもよく知られている。つまり、企業収益が増えて賃金が増えるのではなく、賃金を増やさないことで企業収益を確保する効果は無視できない。もちろん、企業収益が好調であれば、長期的に賃金抑制を続けるのは難しいが、従来と同様に考えると判断を間違う。

 また、米連邦制度理事会(FRB)が12月に7年ぶりにゼロ金利政策を解除したが、2年ほど前からこのゼロ金利政策の転換が話題になりながら、実施が遅れてきたのは、基本的に投資機会がないためと考えられる。金融緩和、低金利で金を借り易い環境でも、収益に結び付く事業が見つからないため、設備投資が行われず、経済が成長しない構造になっている。

 特に、日本は人口減少で個別の商品は別として、消費全体に高い伸びは見込めなくなっており、民間設備投資が大きく伸びることは想定できない。加えて、税・保険料負担が引き上げられる一方で、社会保障が切り下げられる方向にあり、国民は将来不安から、所得が増えても貯蓄に回すと考えられる。いずれにしても、企業収益の増加や低金利が経済成長に効果がないというのではなく、従来と同じ様な期待は過大になり、実態はそれを下回る可能性が高い。

 今回の16年度見通しは、過去に例がないほど各予測機関間で乖離が少なく、名目GDP成長率は2%前後、実質GDP成長率は1.5%前後のいずれもプラス成長に収斂している。これらの見通しは、ヾ覿伴益の増加で民間設備投資が横ばい基調から低い伸びでも着実に増加する、⊆益に加えて雇用増から賃金が増え、個人消費は回復し、特に、16年1〜3月期には消費税の再増税から駆け込み需要が発生する、M⊇个浪困笋でも米国主導で世界経済が回復することで伸び率が高まる、などの判断による。民間や輸出の需要項目が伸びを高めるとしても、実質GDP成長率が1.5%前後の増加であれば、力強い回復・成長からはほど遠いといえる。

 また、16年度の消費者物価昇見通しは生鮮食品を除く総合で、15年度のほぼゼロ%上昇から、16年度は1%程度の上昇である。日本銀行の期待通りとはならなくても、その実現の可能性を思わせる数字である。16年度の物価関連の前提、見通しは、^拌悒譟璽箸15年度より1ドル当たり数円の円安、原油価格は15年度が底で、15年度は1バレル当たり数ドルの値上がり、になっており、輸入面からの物価上昇圧力はほとんど解消する。

 となれば、国内要因によって消費者物価が1%ほど上昇する見通しになる。そのためには、少なくとも平均で2〜3%の賃金の引き上げが前提になり、また、個人消費の伸びを実質で1%台半ばから2%程度の見通しになっていることからも、その程度の労働者全体の平均賃金の上昇が必要になる。ただし、正社員に対してその程度の賃上げが実施されても、今後も正社員の削減傾向が続くと予想され、非正規社員の賃上げが実施されても、平均ではマイナスでない程度と推計される。結果としては、16年度も各予測機関の経済見通しを実績が下回るのではないか。

 これ以外にも、見通しが外れる要因としては海外経済がある。海外経済が予想以上に回復、成長する可能性がないとはいえないが、それは低いのではないか。それよりも長期にわたる世界的な金融緩和でバブルが潜在し、それが顕在化してはじけることもあり得る。その場合は、これらの16年度経済のシナリオは完全崩壊になる。

2015年度の経済見通しの主要項目別一覧

経済の視点
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| 2015年12月29日 | 景気 | comments(0) | - |
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