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物価の安定化と個人消費不振の乖離要因

 2015年4〜6月期の実質GDP成長率(2次速報値)が前期比0.3%減と、3四半期振りにマイナス成長を記録し、その要因の一つとして個人消費(民間最終消費支出)の不振が挙げられている。個人消費の不振はその通りだが、その理由として指摘される所得が伸びず、物価が上昇していて実質所得が増えないというのは正しいとはいえない。

 というのは、消費者物価上昇率(総合)は前年比で為替レートの円安と海外商品市況の上昇に加え、消費税増税の影響が最も顕著に現れた14年5月の3.7%増がピークで、その後は徐々に低下している。四半期で15年4〜6月期は0.5%増と、ピークの14年4〜6月期の3.6%増を3.1ポイントも下回り、最近の15年7、8月は2カ月連続で0.2%増とほぼ前年並みに留まっているからである。これからみれば、所得が増えなくても減少しない限り、実質所得のマイナス幅は縮小し、実質所得は改善に向かっていることになり、消費の不振を実質所得で説明するのは無理がある。

 消費に影響を与える要因として所得や物価以外に、将来の生活を考える上で政府の福祉政策が無視できない。また、所得は安倍首相が賃上げが広がっていると言っても、その恩恵が及ばない非正規職員が増えている問題がある。全体としては、厚生労働省「勤労所得統計」の名目の賃金をみると、低い伸びでも前年を上回る状態で推移しており、当面、この基調が大きく変化する要因は見当たらない。

 一方、物価に関しては、主婦の物価上昇感が強いというマスコミ報道が多い。消費者物価指数が安定化に向かっているのと、主婦の実感は異なっている。これは消費者物価指数の品目別の推移をみれば理解できる。8月の総平均が前年比0.2%増でも、生鮮食品を除く総合は0.1%減のマイナス成長になったのが注目されているように、生鮮食品は値上がりしており、8月の生鮮食品の消費者物価指数は7.6%増である。天候の影響を受ける生鮮食品物価は上下変動が大きいのが特徴だが、最近は長期的に上昇傾向にあり、基調として13年7月から値上がりしている。14年11、12月は微減だが、前年の両月が2桁前後の上昇であったことを考慮すれば、価格水準は高く、この両月でも値下がりしているとは感じなかったと思われる。

 日常的に購入する生鮮食品が値上がりしていれば、消費者物価指数が安定に向かっていても、物価上昇感が生じるのは当然である。また、輸入品の比重が高い生鮮食品を除く食料の消費者物価指数は8月も1.8%増と上昇が続いており、これも物価上昇感の要因になる。これが解消しない限り、物価面からみて消費に積極的になることは期待できない。

 今後に関しては、天候に影響される生鮮食品は別として、一段の物価安定、つまり値下がりが予想される。というのは、足元はまだ為替レートの円安の効果が残っているからである。為替レートが1ドル=100円台から120円前後へと急落したのは14年年末で、まだ1年も経っていない。このため、年年比でみれば、2割前後の円安で、一段の円安がなければ、輸入から店頭までの時間を考慮しても、年末から年初には円安効果は一巡するからである。

 現状が前年比で円安にもかかわらず、物価上昇率がゼロ基調になってきているのは、7月1日付けのこの経済レポートで書いたように、国際商品市況が下落しているためである。輸入物価指数(円ベース)は15年にはいって値下がりし、前年比で2桁近い値下がりになっている。これを受けて国内企業物価指数も4月から下落しており、それが波及して消費者物価指数の安定化をもたらしている。現状は国際商品市況が大幅に下落しているにもかかわらず、それを円安が下支えして打ち消して前年水準でほぼ均衡化している。

 国際商品市況は天候要因や投機的要因もあるが、基本的には世界経済による。世界経済の回復の遅れが最近の市況の下落をもたらし、現状では世界経済の回復力が弱いため、今後も少なくとも急上昇は予測できないため、日本の輸入物価指数、国内企業物価指数、ひいては消費者物価指数は生鮮食品は別として、為替レートでほぼ決まると考えられる。

 最近の推移からみて、年末には消費者物価のマイナス基調が明確になり、より一段の金融緩和で130円台、140円台への円安誘導が行われる可能性はある。一方、今まで効果の無かった金融緩和にまだ依存する政策が理解されるかどうか不明である。すでに、アベノミクスは効果なし、失敗という見方が海外にも広がりつつある。日本銀行の赤字国債の買い支え、東京オリンピックをお題目とする公共投資拡大による財政再建の先送りなどを考えれば、日本の経済政策、円への信頼が揺らぐ可能性が高まる。先の見えない円安政策が可能かどうかが問われる事態も予想され、今までと同様に行えるかどうかは疑問が残る。

 個人消費からみれば、生鮮食品は別として消費者物価が値下がりすれば、名目所得が増えなくても実質所得が増えるため、短期的には個人消費の回復が見込めるようになる。後は、福祉政策になるが、給付の切り下げや負担増が実施され、国民の将来不安はむしろ高まっている。また、労働者派遣法の改正は臨時雇用者の正社員化への期待を萎めさせることになり、いずれにしても将来不安の解消にはほど遠く、全体として考えれば、消費者物価上昇率がマイナス基調になっても消費の回復は穏やかなものに留まると予想される。いずれにしても、安倍政権は矛盾した政策が多く、これでは効果が期待できない。

為替レートと物価の推移(前年比伸び率)

経済の視点
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| 2015年10月03日 | 景気 | comments(0) | - |
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