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1〜3月期GDP速報の個人消費は回復からほど遠い

内閣府から2015年1〜3月期GDPの1次速報値が発表された。これによると、実質GDP成長率(季節調整値)は前期比0.6%増(年率2.4%増)と、前10〜12月期の同0.4%増(同1.1%増)から引き続いて2四半期連続のプラス成長、かつ成長率が高まったことで、景気回復を強調する見方が広がっている。回復を強調する理由として、民間最終消費支出(個人消費)が2四半期連続で同0.4%増になり、民間企業設備投資が3四半期振りの同0.4%増のプラス成長に転じたことが挙げられている。

 一方、景気回復力は弱く、回復とまでは言い難いという見方もある。0.6%成長の引き上げ要因に民間在庫の積み増しが0.5%ポイントもあり、これは次の4〜6月期に削減されてマイナス要因になる。また14年度でみれば前年度比1.0%減であり、消費税増税の影響からは脱っせなかった1年といえる。企業設備投資のプラス成長も消費税増税に対する駆け込み需要の影響が一巡しただけで、回復といえるほどの伸びではない。駆け込み需要とその反動減から元の状態に戻る、つまりマイナスの状態からゼロ状態になれば、前期比ではプラスになり、それでもって回復というのは過大評価になるからである。

 個人消費は生鮮食品に代表されるように長期的に駆け込みの影響が続かないモノが多い。一方、企業設備投資は長引くのが当然で、ようやく一巡して正常化に向かっているとすれば、悪化に歯止めが掛かっただけで、回復とまではいえない。つまり、企業の国内での設備投資に慎重な姿勢が変化したとは判断できない。

 もともと、マスコミは雰囲気に流される傾向にあり、特に景気に関してはそういえ、安倍政権になってからは景気回復を強調する論調が強まっている。それほど景気回復が着実であれば、米国のように金利引き上げの議論が始める必要がある。しかし、その雰囲気は全くない。15年春闘の賃上げ効果をみて判断したいということもあるのかもしれないが、基本的に底這い状態でないのは確かでも、回復とは言い難いという認識が政策担当者にあるのではと思える。

 消費税増税の影響による消費の実態を、14年度実績でGDPの60%の比重を持つ民間最終消費のうち、97%を占める家計最終消費の原系列の実額からみる。一般的にはGDP統計は季節調整値に注目が集まるが、過去の趨勢から季節的要因で調整する季節調整値の精度は高いとはいえない。このため、原系列で分析することも重要である。

 ちなみに、原系列の14年1〜3月期から15年1〜3月期までの5四半期のGDPの推移は、実質が前年同期比で2.4%増、0.4%減、1.4%減、0.9%減、1.4%減、名目が2.5%増、1.8%増、0.6%増、1.4%増、1.9%増である。名目では比較的高い成長でも物価上昇を除いた実質は15年1〜3月期までマイナス成長になるが、これは前年水準が高かったためで、2年前の13年1〜3月期比は0.9%増である。ただし、2年間で0.9%増は極めて低成長で、景気回復力は弱く、マイナス成長ではないという程度の評価になる。

 家計最終消費支出額(以下、消費支出額)は図から明らかなように、05年暦年価格の実質額の方が名目額を大幅に上回っている。それだけ物価が下がっていたことを示している。まず、東日本大震災や消費税増税の影響がないと考えられる11年後半から13年前半の推移で4半期ベースの実質消費支出額の特徴を見ると、7~9月期に対して10〜12月期は11年1.7兆円、12年1.4兆円の増加している。これに対し、13年は1.5兆円の増加で、これから13年10〜12月期は消費支出では駆け込み需要がほとんど無かったと判断できる。

 次の10〜12月期に対して1~3月期は11年から12年は1.6兆円の減少、12年から13年1.0兆円の減少に対し、13年から14年は0.2兆円の減少に留まり、駆け込み需要の影響が顕著である。その推計額は天候要因による季節需要の変動が大きいため、単純ではないが1兆円前後になると推計できる。

 逆に、14年の1〜3月期に対して4〜6月期が12、13年と比較してその程度のマイナスの影響がみられれば、消費への打撃は軽微といえる。ところが、12年0.7兆円減、13年0.5兆円減に対し、14年の実績は5.4兆円の大幅減少である。14年が多くても2兆円程度の減少であれば単純な反動減に留まるといえても、この減額では消費者が生活水準を落としても、消費を大幅に抑制したとことになる。そして、14年の7〜9月期は4〜6月期より1.6兆円の増加、同様に10〜12月期は1.9兆円の増加で、過去に比べて多くはない。10〜12月期に対する15年1〜3月期は1.5兆円の減少で、これも減額が縮小したとはいえず、むしろ多い方になる。

 つまり、消費税増税で切り下げた生活水準のまま維持し、1〜3月期までは元に戻す動きは見えないという結論になる。ちなみに、15年1〜3月期の実質消費支出額は75.0兆円で、この水準は3年前の12年の74.6兆円よりは上でも、2年前の13年の75.8兆円を下回る。ちなみに、14年10〜12月期は76.5兆円で、12年の76.8兆円よりも低く、3年前の11年の76.2兆円をようやく超え、1〜3月期と同様である。

 生活は実質ベースだけで行っているわけではなく、名目所得を考慮している面もある。このため、名目消費出額をみると、異常値の14年1〜3月期、4〜6月期は除いて、14年7〜9月期は71.3兆円で、13年の71.9兆円、10〜12月期は73.3兆円で、13年の73.8兆円を何れも下回っている。7〜9月期以降は名目でも消費を抑制していることになる。ただし、12年よりは高く、15年1〜3月期も13年を上回っている。

 労働関係の統計では低い伸びでも賃金は増え、雇用者数は伸びているため、収入は増えている。結局、これらとGDP統計との乖離は、収入が増えても税・社会保険料負担が増え、可処分所得が減少しているか、消費税10%への再度の引き上げ、社会保障の切り下げで将来不安が高まり、生活防衛に向かっているかのいずれかになる。現実には両方が合わさった結果と考えられるが、消費支出額の水準でからは消費が回復とは判断できない。


家計最終消費支出額の推移(原系列)


経済の視点
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| 2015年05月31日 | 景気 | comments(0) | - |
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