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春闘賃上げは所得の伸びと結び付くか

 消費者物価の上昇率が所得の伸びを上回り、実質所得がマイナス成長状態であれば、当然のこととして民間最終消費支出(個人消費)は低迷する。この認識が広がったことで、政府は企業に今年度の賃上げを昨年度を上回るように要請し、財界も全体として企業収益が好調なため、一定の賃上げを認めている。個別でみれば、特に為替レート円安の恩恵が大きい輸出産業の自動車で、賃上げ額が高くなりそうな雰囲気である。

 賃上げと個人消費、景気の関係では、現実の所得にどれだけ反映されるかが問題になる。1年前も同様の雰囲気があり、2014年の賃上げ額は13年を上回った。といっても、厚生労働省の「賃金引き上げ等の実態に関する調査」によると、14年の全体の1人平均賃金の改定率は1.8%、13年の1.5%を0.3ポイント上回っただけである。かつ、この集計の対象は企業規模100人以上で、100〜299人1.6%、300〜999人1.7%、1,000〜4,999人2.1%、5,000人以上1.9%である。99人以下の中小零細企業ではせいぜい1%、さらには賃上げゼロの企業も多いと推測される。

 また、賃上げの対象になるのは正社員で、それ以外の実施は不明である。厚生労働省「毎月勤労統計」の5人以上事業所でみると、パートタイム労働者以外の長期の非正規労働者を含む一般労働者の所定内給与の前年比は、14年の後半でも1%増にも満たず、パートタイム労働者はほぼ横ばいである。つまり、正規職員は賃上げされても、その他の労働者はゼロか、少額でしかない。

 有効求人倍率は特にパート・アルバイトで1を大きく上回り、人手不足がいわれるが、それが賃金に反映していないのが実態といえる。賃金に対する企業の厳しい姿勢が窺える。その経営方針は円安で企業収益が改善しても変わらない。企業にすれば景気は変動するものであり、円安も長期的に続く保証もないからである。

雇用形態による有効求人倍率格差にみられるように、雇用構造の変化も着実に進んでおり、これが所得の伸びにも影響する。総務省統計局「労働力調査(詳細統計)」によると、役員を除く雇用者数(以下、雇用者数)は基調としては増加し、うち、正規の職員・従業者は07年の3,441万人をピークに減少を続けている。

 一方、パート・アルバイトは08年に減少しただけで毎年増加し、雇用者数に占める割合は08年の20.8%から、14年には25.7%と、6年間で5ポイントほど高まっている。また、パート・アルバイトを含む非正規の職員・従業員はこの間、34.1%から37.4%と4ポイント強の伸びであり、パート・アルバイト依存構造への変化が窺える。

 安倍政権下の景気回復で雇用者数は13年が前年比47万人、0.9%増、14年が39万人、7.5%増と2年連続で着実な増加となった。雇用面では明るいといえるが、所得面では雇用形態別の増減、雇用構造変化が問題になる。

 正規の職員・従業員は13年の46万人減から、14年は16万人減に減少幅は縮小している。12年から四半期の推移で、雇用は季節変化が大きいため、前年同期と比較すると、13年は前年同期比で40万〜50万人程度の着実な減少が続いていたのが、14年には減少傾向に歯止めが掛かり、7〜9月期は前年同期比10万人増となった。ところが、増加は1四半期で終わり、10〜12月期は2万人減である。まだ正規の職員・従業員増が見込める状況とはいえない。

 逆に、非正規の職員・従業員、うちパート・アルバイトは13年の大幅増加の基調から、14年は頭打ち傾向になっても、10〜12月期まで増加している。4〜6月期、7〜9月期と2四半期連続で実質GDPがマイナス成長になったにも関わらずである。正規の職員・従業員の推移と合わせて考えると、雇用を抑制してきた影響で、今後は分からないが、労働力不足状態にあったといえる。

 今後の雇用者数は景気次第だが、正規雇用から非正規雇用への構造変化にまだ歯止めは掛かっていない。雇用者の全体の所得は雇用者数と1人当たり賃金との積になり、雇用者が増えれば、雇用者所得全体は増える。ただし、雇用構造が低賃金の非正規化すれば、伸びは低くなり、マイナスの可能性もある。

 春闘の賃上げも同様で、一部の輸出産業で比較的高い賃上げが実現しても、全体として賃上げ額、ひいては「毎月勤労統計」の所定内給与はそれほど増えないのが実態である。結果、個人消費の回復力にも期待できない。正規雇用化への逆転が求められるが、それが難しければ、景気回復による春闘賃上げを幅広く雇用者に波及させるために、少なくとも同一労働、同一賃金が必要になる。

 15年度の個人消費に関しては、消費税増税による消費者物価の上昇が3月で一巡する。加えて、原油の国際価格は大幅に下落し、バレル当たり100ドルを超える水準から40ドル台まで下がった。その後、下がり過ぎから戻しても、50ドルを少し上回る水準で止まっている。当面は世界経済の回復力が弱いため、元の水準に向けて上昇する力はないと推測される。また、穀物をはじめ食料品の国際価格も天井を打っており、海外からの物価上昇圧力は低下している。

 天候要因や円安の可能性を除けば物価上昇要因は見当たらないため、15年度の消費者物価上昇率は1%を下回り、一時的にマイナスになっても不思議ではない。物価を考慮すれば、15年度の実質所得はプラス、ひいては実質個人消費もプラスも予想されるが、高い伸びは見込めず、穏やかな回復が予想される。



雇用形態別雇用者数


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| 2015年03月01日 | 雇用 | comments(0) | - |
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