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事実上のアベノミクス失敗を認めた政府の2015年度経済見通し

黒田東彦日銀総裁が1月21日、金融政策決定会合後の記者会見で、2015年度の消費者物価見通しをすでに14年10月時点で1.7%増と2%上昇の実現困難としていたが、さらに下方修正し、1%増とした。これによって、 黒田総裁がアベノミクスの実現が遠のいていることを認めたと報道し、マスコミは14年にはまだ期待が強かったが、ようやくアベノミクスの実現性に懐疑的になってきてきた。

 下方修正の理由として原油価格の値下がりを挙げているが、もともと雇用は増えても非正規雇用で、かつ賃金も安い。加えて、社会保障も切り下げられる方向にあり、将来不安が高まっている。アベノミクスは円安で物価高が予想されるようになれば、消費が活発化するという考えに基づいている。確かに、消費税の増税前には駆け込み需要が盛り上がったが、その後の反動減は駆け込みで膨らんだ以上に大きかった。つまり、全体としてみれば、消費者、国民は将来不安からより一層、消費抑制をむかっている。

 この状況では、為替レートの円安や国際市況の上昇によるで輸入コストの値上がりで物価は上昇しても、円安が止まり、国際商品市況の上昇も一服、または値下がりに転じ、輸入コストの値上がりが一巡すれば、消費者物価はもとの横ばいから微減に戻る。原油の国際価格は12年頃から天井になっており、値下がりしなくてもより一段の円安がない限り、物価引き上げ要因ではなくなる。原油安は物価値上がりの抑制力を強化しただけで、本質的には変わりはない。下方修正の言い訳の材料になはなった。

 黒田総裁の会見以前に、1月12日に閣議決定された政府経済見通しは事実上、アベノミクスの失敗を認めたといえる。政府経済見通しは例年、年末に決定されるが、昨年の年末選挙のため越年した。ここでは14年度の実質GDP成長率実績見込みが0.5%減とマイナス成長になったことに注目が集まったが、もともと経済成長は循環し、上下変動があるため、1年で高い低いと評価してもあまり意味がない。

 もちろん、景気回復と言いながらマイナス成長は問題だが、消費税増税の影響がなくなり、経済の立ち直りを期待する15年度の実質GDP成長率見通しが1.5%増になったことも同等かそれ以上の失敗認定要因になる。それも、政府は民間最終消費を引き上げるため、企業に15年春闘賃上げを要請し、榊原定征日本経済団体連合会会長もそれを受け入れ、賃上げ環境が改善しているにも関わらずである。これは期待するような賃上げが実現するとしても、一部の大企業に偏り、全体への拡がりが少ないと認めたことになる。

 一方、前月のこの経済レポートで取り上げたように、民間予測機関の経済見通しはこの政府と大差はない。従来、政府経済見通しは経済政策責任者として、高めの経済見通しを発表していたが、それは無理とあきらめたのか、民間の見通しが甘すぎるのかのいずれかになる。最近の結果をみると後者の可能性が高い。

 例えば、1年前の政府経済見通しでは、13年度の実績見込み2.6%増、14年度の見通し1.4%増だった。これに対し、民間予測機関は13年度実績見込みは今回と同様に政府とほぼ同じ2%台半ばだが、14年度見通しはプラス成長でも0%台で、高くても1.1%増であった。つまり、政府が最も楽観的とはいえ、0.5%減になるかどうかはまだ不明でも、プラス成長は見込めない状況にあり、民間も含めて全滅状態である。

 その前に13年度の2%台半ばの見込みに対し、実績は2.1%増にとどまっっている。2%台半ばであれば、95年度と96年度の2.7%増、03年度の2.3%増以来の比較的高い成長と言えるが、2.1%増であれば、特に評価できるような成長率ではない。また、この間の実績見込みと実績、見通しと実績見込み間の格差は、1年前が13年度は特に公的固定資本形成の過大評価と輸入の過小評価にあり、14年度はいずれの需要項目も過大評価だったためである。

 ちなみに、政府見通しは成長率だけで、実額が発表されないため、実質GDPを伸び率で推計すると(例えば、14年度実績見込みの0.5%減は0.45以上〜0.55未満%減の幅があるが、問題になるほどの大差にはならない)、12〜14年度実績見込みの2年間平均の成長率は0.8%増、12〜15年度見通しの中期見通しになる3年間平均は1.1%増である。この成長率では底上げされたとはいえず、金融緩和の後始末がより困難になり、後世への付けを膨らましただけである。また、以前から指摘されているように、金融緩和の実体経済への効果はなく、公共投資(公的固定資本形成)は一時的にGDPを引き上げても乗数効果はないことを再確認しただけである。

 いずれにしてもアベノミクスで目標としていた2%成長にはほど遠いことを認める結果となっている。結局、輸入物価上昇のコストアップで消費者物価が上昇しても、需要が弱いデフレ状態下では、輸入物価の影響(14年度には消費税増税もある)が一巡すれば、消費者物価の上昇は終焉を迎える。つまり、政府経済見通しの実質GDPの低成長見通しと黒田日銀総裁の消費者物価上昇率の下方修正はメダルの裏表の関係になる。

 日本経済の活性化に魔法を期待するのではなく、地道な取り組みが基本になる。アベノミクスの失敗が確認されれば、それが認識されることが期待できる。ただし、その時には日本経済が大混乱という可能性もある。

政府の2015年度経済見通し

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| 2015年02月01日 | 政策 | comments(0) | - |
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