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所得・需要が回復しないで脱デフレ?

 日本銀行が10月末に追加金融緩和を発表したのに続いて、安倍首相はアベノミクスの評価を問うとして国会を解散し、12月に総選挙が実施される。一般的にアベノミクスの効果があったと認められているのは、為替レートの円安と株価の上昇だが、それが一巡して限界が見えてきたため、金融緩和の追加に迫られたと考えられる。

 逆に言えば、日本経済の再生、脱デフレを目的とするアベノミクスが成功、または成功しつつあれば、追加金融緩和は不要である。当然、安定政権状態で国民に評価を問うために、わざわざ年末に選挙する必要はない。結局、後になるほど追加金融緩和の限界、アベノミクスの失敗が明確になるため、選挙を急いだと推測できる。

例えば、2014年7〜9月期の実質GDP成長率(1次速報値)は前期比0.4%減(年率1.6%減)の2四半期連続のマイナス成長になった。1〜3月期が消費税増税前の駆け込み需要で同1.6%増の高い伸びになり、4〜6月期がその反動で急減の同1.9%減になったのはそれほど問題ではならなくても、2四半期連続のマイナス成長はアベノミクスへの疑問をより一層強める要因になっている。

 7〜9月期実質GDPのマイナス成長要因として、実質民間最終消費支出が前期比0.4%増に留まり、大幅マイナスの4〜6月期の同5.0%減から回復しなかったことが挙げられている。実質所得が伸びず、今後も期待できない状況で、消費が冷え込むのは当然である。もともと、これは脱デフレ政策の考え方の間違いに原因がある。

 デフレ現象は需給バランスが悪化し、価格が値下がりする状態をいうが、価格が値上がりしても、それが必ずしも需給バランスの改善を意味するわけではない。また、価格上昇が予想される場合、今回の消費税増税で駆け込み需要が発生しても一時的だったように、需要拡大が持続する保証はない。物価が趨勢的に上昇を続けるには、需要・消費の裏付けになる所得が必要だからである。

 原材料コストが上昇すれば、企業は値上げしなければ収益を確保できないため、価格を引き上げる。それでも、需給バランスが悪ければ、企業が望む値上げは困難である。その場合、価格・物価上昇は脱デフレでなくてスタグフレーションになり、むしろ経済状況はより悪化する事態もある。つまり、円安で輸入物価の上昇から国内物価が上がっても脱デフレではない。

 一方で、所得が増えなければ、物価上昇分だけ実質所得は減少し、デフレをより深刻化させるだけで、需要が拡大しなければ脱デフレに結び付かない。このことは安倍政権も分かっているため、企業に対して賃上げを要請していたが、今年度の賃上げは不十分だった。

 通常、脱インフレは景気回復から、賃金上昇や雇用増による所得・需要拡大で需給バランスが改善し、その結果、物価が下げ止まりから上昇する。この順序を逆転させ、アベノミクスは物価上昇から需要拡大を目指す政策で、現実には無理がある。企業の賃上げも円安で一部の輸出企業の収益が拡大しても、日本企業全体の収益が改善しなければ、賃上げできる企業は一部でしかない。もともと、近年の賃金抑制に力を入れる企業体質を変えない限り、かけ声倒れになるのは今年度の賃上げからも明らかである。

 この関係をGDP統計の民間最終消費支出と雇用者報酬からみてみる。季節調整値は消費税増税の影響が大きいため、原系列の前年同期比の推移をみる。ちなみに、13年度の名目民間最終消費288兆円に対し、名目雇用者報酬は249兆円、対名目民間最終消費比率は86.5%である。個人部門の所得は雇用報酬の他、農家、個人商店、中小企業経営者の所得や投資収入などがある。

 名目雇用者報酬は1%以下の伸びから、13年4〜6月期以降は上下はあっても上昇傾向になり、14年4〜6月期1.6%増、7〜9月期2.6%増と雇用増や夏のボーナス増などを反映して着実に拡大してきた。かつ、物価の下落で13年4〜6月期までは名目の伸びを実質が上回っていた。ところが、消費者物価の上昇で14年1〜3月期から3四半期連続で実質はマイナス成長である。

 一方、民間最終消費は11年と12年の1〜3月期、4〜6月期は東日本大震災の影響で大きく変動しているのを除けば、13年10〜12月期までは低い伸びでも比較的順調に増加してきた。そして、消費税増税によって14年1〜3月期に急伸し、4〜6月期には急落したが、特徴的なことは7〜9月期に全く回復の気配が見られないことである。この2四半期は名目で0.1%減、0.4%減、実質で2.6%減、2.7%減であり、雇用者報酬は改善しているにもかかわらず、7〜9月期の民間最終消費はむしろ悪化している。夏の天候要因のマイナスを考慮しても、消費は冷え込んでいるといえる。

 原因として、円安と消費税増税による物価上昇に加え、消費税増税にもかかわらず社会保障の切り下げ政策の影響が挙げられる。国民は足元だけでなく、将来不安があれば消費を抑制する。つまり、政策がデフレを促進することになると考えられる。

 もちろん、7〜9月期は天候要因が大きかった可能性もあるが、それが原因でないのは10〜12月期の実績が発表されれば明らかになる。また、消費税が増税されても、それが社会福祉の充実に使われ、国民の将来不安を軽減するように働けば、消費支出への影響は軽微で済むと期待できる。しかし、安倍政権は日本が世界で一番企業が活動しやすい国にするとして、企業を優遇する方針を示しており、国民生活より企業に目が向いている状況ではそれは望めない。


民間最終消費と雇用者収入の前年比伸び率の推移

経済の視点
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| 2014年11月30日 | 景気 | comments(0) | - |
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