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貿易赤字は2014年度上期がピークだが、改善速度は遅い

 2014年度上期の貿易収支は、現在の統計になった1979年度以降で最大の5兆4,271億円の赤字になったと財務省が発表した。同期の輸入額は前年同期比2.5%増に留まったものの、輸出の伸びそれを下回る同1.7%増になったため、赤字幅が拡大する結果となった。ところが、発表はまだだが上期の経常収支も赤字になる懸念が強まり、貿易収支赤字の拡大が続くのではという見方もある。

 絶対額では年度下期は相対的に輸入が多いため、上期より貿易赤字が拡大する可能性は高くても、季節要因を除けばこの上期が赤字のピークと考えられる。貿易収支が赤字になり、かつ、その幅が拡大してきた要因にはいろいろあっても、為替レートの円安要因を別にすれば、貿易収支は輸入面から改善の方向に向かう条件が出てきたからである。ただし、輸出量に高い伸びを見込めないため、その改善速度が早くなることは期待し難い。

GDPでは輸出入は実質の数量ベースが対象になるが、国際収支の貿易統計は金額であるため、数量だけでなく価格も重要になる。輸出数量は為替レートが円安でも増えないという認識は一般的になった。一方、輸入数量は生産を海外に依存している商品は、少なくとも短期的には為替レートで大きく変化することはなく、景気に影響される。13年度までは景気回復期にあり、輸入量が増えるのは当然といえ、それに加えて、原子力発電停止による火力発電燃料の輸入増があった。

 このような輸出入数量よりも、特に輸入価格の上昇が貿易収支の悪化要因になっている。輸出入価格は国際市況と為替レートによって変動し、輸出価格は企業の輸出戦略も関係する。

 輸出入価格は日本銀行が円ベースと契約通貨ベースに分けて、全体を指数で発表している。これらの推移から国際市況、為替レート、企業の輸出戦略の影響が推測できる。為替レートとの関係を分かり易くするために、現在の日本銀行の輸出入価格指数(2010年=100)に合わせ、月平均の対ドルレートを2010年=100とした指数にして比較すれば、価格要因がよく理解できる。

 現在までの推移を見ると、まず、輸入の半分ほどは食料や天然資源であり、輸入物価指数の契約通貨ベース(以下、輸入契約通貨指数、他も同様)はドル建ての国際商品市況を反映する。輸入契約通貨指数は世界経済の立ち直りを受けて10年末頃から急上昇したが、当時は円高だったため、相殺されて輸入円指数は比較的安定していた。そして、輸入契約通貨指数は11年年央以降、横ばい水準になったにもかかわらず、12年後半から円安が急速に進んだため、輸入円指数が上昇し、輸入数量の増加と合わさって輸入金額は高い伸びになった。

 一方、輸出は鉄鋼や化学製品のように国際商品市況で価格が決まる製品と、企業が独自に決められる製品、主に機械製品の2つがある。このため、11年から12年前半は前者の製品価格市況上昇の影響から、輸出契約通貨指数は上昇傾向にあったが、円高の影響が大きく、輸出円指数は下降していた。その後は輸出契約通貨指数が下降傾向になり、輸出円指数は穏やかな上昇になっている。機械製品の輸出は輸出量の拡大を求めず、為替レートが変化しても輸出先価格を一定に維持する戦略と推測できる。

 今回の貿易収支の急速な悪化は、国際商品市況の高騰で輸入価格が上昇したのに対し、輸出価格が相対的に安定していた。そして、円安によってこの輸出入価格の乖離が拡大したのが主要因として挙げられる。そこに原子力発電停止という特殊要因も加わった。

 今後に関しては、輸出は為替レートの影響が小さいことから判断すれば、世界経済にも依るが、いずれにしても上下の何れにおいても輸出量・金額に大きな変動は予測できない。

 一方、輸入は電力事業連合会の電力データによると、13年10月から原子力発電がゼロになっており、前年比で下期は原子力発電停止の影響が完全に解消される。加えて、受発電電力量は政府の節電要請とユーザーの電力価格の値上げ対策で、11年度から微減が続いている。結果、発電燃料の輸入量は減少が見込まれる。

 また、ドル建て価格は石炭、LNG、原油の何れも下落に転じており、このなかで、原油は日本の原油の主要輸入先であるOPECのバスケット価格(OPEC参加国の主要油種12油種の加重平均)をみると、8月以降、顕著に下落している。輸送に時間が掛かるため、日本の輸入価格にはまだ明確には現れていないが、これから顕在化してくると考えられる。

 発電燃料以外も景気動向から判断すれば、輸入が増える要因は見当たらない。つまり、今後は為替レート次第になるが、より一段の大幅な円安にならない限り、輸入額の拡大は予想できない。貿易赤字は14年上期がピークと推測できても、輸出が高い伸びにならなければ、その改善速度は遅くならざるを得ない。

輸出入物価と対ドルレートの推移


経済の視点
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| 2014年11月03日 | 貿易 | comments(0) | - |
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