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何故今、地域創生か

 安倍政権による経済政策、いわゆるアベノミクスは金融緩和で為替レートの円安から株高をもたらし、当初は先行き明るい雰囲気を作り出すのには成功した。しかし、雰囲気だけでは一時的な効果しかなく、今年度に入ってその化けの皮がはがれてきたところで、今度は地域創生を強調しているが、その目的が分かり難い。

 一部にはアベノミクスで中央と地域の経済格差が拡大したため、その対策という意見がある。日本経済の長期低迷がバブル経済崩壊の1990年代初めからになるのに対し、地域間格差は1960年代の高度成長期以来の超長期的な課題になる。いずれも構造的問題で、一時的な対策で解決できる問題ではない。一時的でも評価された日本銀行の金融緩和のような政策が可能なわけではなく、地域間格差の解消には政策が不十分だからである。ただし、本来の目的が単に来年の統一地方選挙対策であれば、少しは効果があるかもしれない。

 高度成長期の重化学工業化政策による日本経済の発展は、首都圏に代表される大都市圏が高成長する一方、地方の成長性が低かったため、地域間で経済格差をもたらした。地方は国内市場向けの農林漁業や鉱業、化学、金属精錬などの資源立地型産業が中心で、構造的に低生産性や資源量の問題があった。

 逆に、重化学工業は原料が輸入資源に切り替わることで、地方の資源立地型から大都市圏の消費地立地に移行し、地域間格差をより一層拡大する方向に働いた。結果、地域間格差の解消が政治の課題になり、その解消のために地方に公共投資を行い、建設業が地方の経済を支える産業の一つになった。

 60年代半ば以降、大都市圏は成長の結果として徐々に人手不足、土地不足の傾向が強まり、労働集約型産業の地方への移転、工場の地方分散が始まった。最初は低賃金労働者に依存する繊維、電気・電子部品が中心で、その後は成長性の高い機械産業全般に広がり、地方は工場誘致で経済発展に期待できるようになった。

 ところが、70年代から企業は立地戦略が海外進出に向かうようになり、80年代に入るとその傾向が強まってきた。さらに、その影響が国内工場の閉鎖にまで進むと、経済基盤の弱い地方の打撃が大きくなる。

 この間の工場従業者数を経済産業省「工業統計(従業者数4人以上)」でみると、日本全体では過去ピークは第一次オイルショック時の73年の1,196万人になる。その後は減少したが、90年に1,117万人まで盛り返し、それ以降は減少傾向が続いている。

 全国10地域に分け地域別でも、80年代までは地方、特に東北、九州は着実に増加していた。それ以降は工場の海外移転で何れの地方も減少で、それも顕著な減少傾向にある。工場従業者数の増加から減少への変化は経済基盤の弱い地方に与える影響は大きく、地域創生の重要性は増している。ちなみに、82〜2012年の30年間で関東臨海が239万人から123万人へとほぼ半減になっており、減少率は最も高い。それでも、関東臨海の人口は増えており、工場従業者減の影響は軽微といえる。

 また、工場従業者数の減少と同時に財政問題から公共投資が抑制されるようになり、高度成長期以降の地方経済を支えてきた建設業も構造的衰退期を迎えた。70年代、80年代は地域間格差が解消に向かっていたとまではいえなくても、悪化に一定の歯止めが掛かり、地方も希望が持てた時代であった。

 90年代以降は再び地域間格差が拡大を始めたわけで、今回のアベノミクスと関係はない。逆に、財政難下での東京オリンピックの開催は当然、東京を中心に公共投資が行われることになり、その分公共投資の減額が予想される地方の不安を高める要因になる。

 地域間格差の中でも深刻な過疎地域の振興に関しては、すでに総務省の「地域おこし協力隊」、農水省の「都市農村共生・対流総合対策」、国土交通省の「集落活性化推進事業」などがあり、行政が立案する地方創生も似た政策になると考えられる。これらが効果を発揮する政策であれば、地方創生による新たな政策は必要ないからである。

 結局、地方がそれぞれの地域の資源を生かした独自の政策で頑張るしかない。これに関しては、1979年に当時の平松大分県知事が提唱し、全国、さらには海外にも広がった地域振興政策「一村一品運動」があり、成功事例も数多く報告されている。しかし、それで大分県経済全体が発展している訳ではない。一部でも成功すれば運動の意味はあるが、それが地域全体の経済水準を引き上げられるわけではなく、ましてや日本経済にまで及ぶわけではない。

 最近は、田舎暮らしを希望する若者が増えているという報道もあり、それに期待する識者もいる。地方に若者が増えて活性化するのは望ましいが、もともとそれらの若者は高い所得を求めて地方に移住するわけではない。つまり、日本経済の活性化にはほとんど効果はないが、子育てしやすい地方の環境が少しは出生率の低下速度を緩和し、それが間接的に日本経済にプラスになる期待は持てる。いずれにしても、地方創生の目的を具体的に示さないと評価のしようがない。

地域別工場従業員数の推移


経済の視点
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| 2014年10月04日 | 政策 | comments(0) | - |
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