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毎勤統計から賃上げの実態をみる

 今年の春闘は景気回復と消費税引き上げ後の駆け込み需要の反動減対策で、自民党安倍政権が賃上げ要請するという異例の環境下で行われた。マスコミは比較的賃上げ額の大きい企業を報道し、何となく賃上げは近年ではかなり高くなったイメージが形成されている。一方で、最近の消費関連統計は明るくはない。マスコミはその時々の話題を大きく取り上げる体質があり、これが誤ったイメージを形成する可能性があるが、最終的な春闘賃上げ額の発表は遅くれるため、実態は不明である。


 もともと、賃上げの恩恵に与れるのは大企業の一部正社員でしかなく、賃上げされてもその効果は全体としてみれば小さいという批判もある。もちろん、春闘は正社員だけのものではないが、現実はそうである。ただし、今年は有効求人倍率が1を超え、人手不足倒産も話題として取り上げられ、パート、派遣社員などの非正規社員にも賃上げが波及することも考えられる。いずれにしても、雰囲気が報道されるだけで、実態は不明な状態である。


このため、厚生労働省「毎月勤労統計」の賃金動向から推測するが、春闘賃上げ額は労使間の交渉で決まるため、4月から一斉に上がるわけではなく、実施時期はばらつく。それでも、6月までにはほとんどの企業で実施されていると考えられる。6月までの「毎月勤労統計」(6月は速報値)の推移をみれば、今年の春闘の実態がある程度は分かる。


 従業者5人以上企業のパートと一般労働者を合わせた全労働者平均の現金給与総額は、昨年11月から僅かだが前年水準を上回るようになった。ただし、前年同月比で今年3、4月の0.7%増がピークで、5月0.5%増、6月速報0.4%増で、息切れ気味である。


 また、総額のうち春闘賃上げ額の影響が大きく、毎月決まって労働者が受け取る所定内給与は今年4月まではマイナスで、5月横ばい、6月は0.3%増である。前年のマイナス基調との比較すれば、1ポイントほどの賃上げ率引き上げ効果が窺える。


 現金給与総額が先行して前年水準を上回るようになったのは、景気回復効果で残業代などが増えたためだが、5月からは消費税増税の反動減で、企業活動が弱まっている影響がでている。ただし、夏のボーナスの伸びは高まる見込みで、7月は盛り返すと予測されるが、1%台の伸びになれば良い方であろう。


 一方、所定内給与が6月に前年を上回ったのは、今年の春闘賃上げ額が最近の伸び率低下傾向に歯止めが掛かり、回復したといえる。しかし、1%にも達しない伸びでは、3月までの物価上昇にも足りず、もちろん3%の消費税引き上に対しては全く不十分である。


 ちなみに、5月までしか分からないが、賃上げが大きいと思われる大企業が対象になる、従業者500人以上企業の一般労働者(パート以外の長期雇用で、正社員以外も含まれる)の5月所定内給与は0.1%増である。結局、大企業でも全体でみれば春闘賃上げ額は大したものではなかったと判断できる。


 その分、夏、冬の一時金が比較的高いの伸びになり、現金給与総額は増加基調が予測できる。それでも、生活を支える基礎的収入の所定内給与が安定的に増えなければ、個人消費の回復は見込み難い。また、就業者数の前年比伸び率は1%増以下で、これを考慮しても全体として所得の伸びは低い。これに対し、企業減税の一方、消費税以外でも税・保険料負担の拡大、社会保障の切り下げが予定されている状況ではより難しい。


 一方、有効求人倍率が1を超え、特にパート不足の深刻化はパート賃金から上昇も考えられる。ところが、これは低賃金のパート需要が増えているためで、その背景にはパート需要の多い小売り・サービス業が価格引き上げが困難な市場環境から、低賃金のパートを求めているという事情がある。そして、それは消費者が所得が増えないなかで、低価格商品・サービスに向かわざるを得ないためで、これがデフレの原因になる。


 国際商品市況の上昇、為替レートの円安の海外要因によって物価が上昇しても、それは一時的現象でデフレ解消とはいえない。国内の需給が改善し、国内要因から物価が上昇して初めてデフレ状態からの脱却になる。

 
給与額の推移(前年比伸び率)

経済の視点
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| 2014年08月02日 | 雇用 | comments(0) | - |
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