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原発停止による輸入額増は一巡

 以前から一般人だけでなく、専門家と称される人も冷静な分析を抜きに雰囲気に流される傾向はあるが、その傾向が強まっていると思われる。ようやく、為替レートの円安が輸出を拡大する効果は小さいことが認識されるようになった。円安基調に変化してから1年も経っても輸出が顕著に増えなければ、その事実は認めざるを得ない。同様のことが原子力発電の停止による原油や液化天然ガス(LNG)の輸入増で経常収支の赤字をもたらすという見方にもいえる。

 2011年3月11日の東日本大震災後の原発停止で火力発電への依存が高まり、火力発電燃料の原油、LNG、石炭のエネルギー資源輸入額が増えた。結果、貿易収支、遅れて経常収支が黒字幅の縮小から赤字に転落した。この間の国際収支の悪化の主因は原発停止にあるのは確かである。

 しかし、今後も貿易収支、経常収支の赤字が拡大、長期化するかどうかは単純にはいえない。貿易・経常収支赤字の拡大や長期化の不安を煽るのは、原発再稼働の促進のためにする意見といえる。というのは、これからも原発停止で発電燃料のエネルギー資源輸入額の増加が続くとは考え難いからである。

 円ベースの輸入額は数量と円ベース価格の積になり、円ベースのエネルギー資源輸入額は資源輸入量、ドル建て資源価格、為替レートで決まる。電発停止による火力発電の増加は原油、LNG、原油の輸入量を増やし、また、リーマンショック後の世界景気の回復はドル建て資源価格の上昇をもたらした。なかでも、LNGは日本が確保に走ったことも高騰要因である。電力会社は原料価格が上昇してもそれを電力料金に上乗せできるため、もともとコスト意識が乏しいことも高騰要因になる。加えて、安倍政権の金融政策が円安をもたらしている。つまり、輸入量、ドル建て価格の国際市況、為替レートのいずれもエネルギー資源輸入額を膨らます方向に働き、輸入額は以上とも言える伸びになった。

 これからどうなるかはそれぞれの要因をみる必要がある。まず、輸入量はすでに全ての原発が完全停止しているため、原発停止による輸入量の増加は一巡している。後は電力需要によるが、すでに国民、企業は電力不足懸念、電力料金の値上げから節電努力をしている。昨年に続き今年も電力料金値上げの動きがあり、日本の経済成長率がプラスでも低成長であれば、節電から電力需要増は考えられず、むしろ微減でも減少と向かうと予測される。つまり、発電用エネルギー資源輸入量も減少に向かうことになる。そのなかで、炭酸ガス排出規制の影響はあるが、エネルギー価格の安い石炭(原料炭)へのシフトが進むと予想される。

 エネルギー資源のドル建て価格、国際市況は世界需給の影響を受け、その中で日本の需要の影響が大きかったLNGは11年4月から12年年初まで急騰したが、その後は頭打ちから微減傾向にある。一方、原油は11年から一進一退で高水準横ばい、逆に、石炭は12年央をピークに若干値下がりし、13年以降は値下がりした水準で横ばい基調である。

 為替レートは12年9月をピークに円安に転じ、13年末頃から1ドル=100円の壁を突破したが、2月に入って頭打ちになり、100円強で推移である。

12年からの発電用エネルギー資源別に輸入量の前年比推移をみると、図の四半期別ベースでも変動幅が大きいが、原油及び粗油とLNGの輸入量は12年10〜12月頃から頭打ちといえる。これに対し、エネルギー価格の安い一般炭は微増でも増加傾向にある。もちろん、これらは全て発電用燃料ではない。それでも、発電用の割合が高いため、その需要動向を反映していると考えられる。

 輸入量が増えず、国際市況も安定状態にもかかわらず、輸入額は前年比でいずれもまだ伸びが高い。原因は為替レートが安定傾向でも前年比ではまだ円安になることにある。円安に歯止めがなくなる事態は別の問題になるため、その事態は考えず、為替レートがほぼ横ばいの推移であれば、今後は国際市況による。

 現状は、原油、天然ガス、石炭の供給力に余剰があるところに、米国でシェールガス生産が増えており、全体として需給緩和基調にある。シェールガス生産には環境問題の批判はあるが、今のところ政策が変換される雰囲気はない。また、日本の電力会社も料金値上げのため、LNG輸入価格引き下げの努力をみせる必要があり、高くても買うという姿勢ではないのではないか。

 となれば、世界経済動向からエネルギー需要がどうなるかによる。世界的な金融緩和でも経済回復力に力強さが欠けるのは構造的問題があり、全体として低成長からの脱出は難しい。となれば、エネルギー資源需要も微増程度にとどまり、国際市況も安定が予想される。逆に、世界経済が堅調になれば、日本の輸出の伸びが期待でき、国際市況の上昇で日本の輸入額が増えても輸出額も増え、貿易・経常収支がどうなるかは単純には判断できない。

 基調としては今後、エネルギー資源輸入増による国際収支の悪化は徐々に解消に向かい、原発が再稼働しなくても輸入量、さらには額でも増加一巡で、プラスに働く可能性も否定できない。


エネルギー資源輸入量・金額の推移 (前年比伸び率)

経済の視点
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| 2014年02月28日 | 貿易 | comments(0) | - |
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