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今回の景気回復力は強いか

 アベノミクスは期待はずれ、具体的には景気への影響は小さく、国民の所得向上にはほとんど効果ないという認識が広がってきている。金融緩和で為替レートが円安になり、金融緩和と円安の効果で株高になり、それが多くの国民に景気の先行きに希望をもたらしたのは確かである。ところが、株高が株式投資家、一部の国民には所得増になっても、大部分の国民にはほとんど恩恵をもたらさない実態が明らかになってきたことが期待を萎ませている。また、2013年4〜6月期の実質GDP(1次速報値)の成長率が0.6%増(年率2.6.%増)とそれほど高くなかったことこともある。

 

 しかし、一般的には四半期ベースのGDP成長率成長率では回復力が高いかどうかは判断し難い。このため、低成長になった1990年代末以降の鉱工業生産指数の回復力で比較することで、今回の回復力を判断する。  日本の景気の山、谷の景気基準日付は、内閣府経済社会総合研究所の景気動向指数研究会の議論を経た後、同所長が決定している。判断の中心は景気動向指数になるが、短期の景気循環は在庫循環で、需要変動を受けて在庫が調整されることによる在庫、ひいては生産の変動の循環であり、内閣府が決定した景気基準日付と生産(鉱工業生産指数)の山、谷のずれはほとんど無い。

 ただし、鉱工業生産指数の基準年は5年ごとに改訂され、かつ季節調整によって毎月の指数は毎年変化する。このため、日付決定時にはこのずれが無いか、あっても1カ月で、後になって最新の鉱工業生産指数になるとずれが拡大するが、それでも最近ではずれは2カ月で収まっている。

 景気循環は景気の底から回復、そして山を越えて次の底までを1つの循環とし、90年代末以降では底の1999年1月(2010年基準の鉱工業生産指数は98年12月が底)から02年1月(同01年11月)までを第13循環、02年1月から09年3月(同2月)までを第14循環、09年3月からが第15循環になる。第15循環の景気の底はまだ未定だが、鉱工業生産では12年11月が底になる。つまり、今回の第16循環の景気回復の始まりも未定になるが、生産は12年11月が底で、12月から回復が始まっている。

各循環の景気が好況から不況に転換し、その後、回復に転じた要因は以下のようになっている。第12循環は97年5月が山で、これは97年4月からの消費税の3%から5%への引き上げに伴う消費の落ち込みに加え、7月にはアジア通貨危機、翌98年8月にLTCM危機の金融危機から世界経済が悪化、輸出が減少して景気が下降に向かった。その後、金融危機が解消、世界経済が持ち直し、輸出も回復に向かうことで、景気は底入れ、第13循環が始まった。

第13循環は米国を中心とするITバブルとその崩壊によって、輸出が回復・拡大から減少に転化して一巡した。ITバブルと崩壊の時期は明確ではないが、99年から00年にかけて発生、00年から01年に崩壊した。同様に、第14循環はまだ記憶に新しいが、金融革新による米国の金融バブル、住宅バブルとその崩壊、それを明確化したのが08年9月の米大手証券会社リーマン・ブラザーズの経営破綻、いわゆるリーマン・ショックである。この影響で世界経済が悪化したことにある。

 また、第15循環はリーマンショックからの脱出のために世界的に景気対策が行われ、その効果で09年に景気が回復に転じて始まった。ところが、結果として10年に欧州ソブリン危機、欧州債務危機、ユーロ危機など名前はいろいろだが、特に欧州で財政が悪化し、また、米国の景気回復も力強さに欠け、発展途上国も回復中断気味になり、世界経済の悪化で景気が一巡した。

 いずれの景気循環においても、世界経済が良ければ日本は輸出増で景気底入れ、上昇になり、逆に、世界経済が悪化すれば日本は輸出減から頭うち、下降になっている。日本の経済政策効果はその上昇・加工速度、つまりGDPや鉱工業生産の成長率に少しは影響すると考えられるが、基本的には世界経済動向次第といえる。

 現局面は欧州の危機が小康状態になり、米国が穏やかでも世界経済を牽引することで、日本経済が回復しているのが実態である。たまたま輸出の底入れ、回復とアベノミクスが重なったため、アベノミクスが評価されている。しかし、以上の日本の景気循環と世界経済の動向からみれば、アベノミクスの効果はほとんどない。

それはこの間の鉱工業生産指数の回復力で比較すれば分かる。今回の底の12年11月から8カ月目の13年7月の鉱工業生産指数(速報)は前月比3.2%増の高い伸びになったが、これは前月の落ち込みを回復しただけで、5月と同じ水準である。

 過去3回の景気循環と比較すると、前回の第15循環の回復力が顕著だが、これはリーマン・ショック後の落ち込みが急速、かつ大幅だった反動、つまり「谷深ければ、山高し」になったためである。これは例外とすれば、穏やかな回復であった第13・14循環の間にあり、特に回復が早いとはいえない。

 これから回復が加速され、第13・14循環を上回る可能性が全くないとはいえなくても、現状は少なくともアベノミクスの効果といえるような回復効果は見えない。逆の可能性も含めて、結局は海外経済次第になる。



鉱工業生産指数の底からの推移

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| 2013年09月01日 | 景気 | comments(0) | - |
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