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円安による輸出入量への影響は軽微

 参議院選挙が自民党の勝利で終わり、その要因の一つとして安倍政権の経済政策、いわゆるアベノミクスへの評価がある。その期待と現実で、期待はこれから明らかになる問題としても、現実への評価も正確でないところが多い。

 異次元の金融緩和による為替レートの円安で輸出企業の収益が拡大しても、設備投資や雇用、賃金がそれほど増えないという判断ではほぼ一致してしている。一方、円安による輸出金額の拡大だけでなく、輸出量も増えているという見方は多い。1〜3月期の実質輸出が増えたこともその見方の根拠になっている。また、円安は同時に輸入量を抑制するが、これは火力発電燃料輸入金額の急騰を主因とする輸入金額の急増から、輸入量の抑制効果に関しては話題にもなっていない。

 実態は、円高時にこの経済レポートで何度か取り上げたように、為替レートに関係なく、企業の海外立地は進んでいる。円高でも今回のように円安になっても同じで、つまり設備投資が海外に向いていれば、円安になっても国内の設備投資への波及効果は小さい。そして、雇用増効果も期待できないという認識は一般的にも定着しつつある。

 足元をみると、輸出と生産が増え、景気が底入れから回復に向かっているため、何となく円安効果、政策効果という雰囲気がある。輸出が増えているのは、米国を中心に世界経済が力強さには欠けても回復基調にあるためで、円安効果は小さい。逆に言えば、為替レートとは関係なく、世界経済が息切れすれば、それに伴い輸出の減少から日本経済は再び、下降に転じることになる。

 これらの関係は経済産業省の「鉱工業出荷内訳表、鉱工業総供給表」の推移を見ればよく分かる。まず、東日本大震災後の2012年4月以降の鉱工業出荷指数(季節調整値、以下同じ)とそれを国内向けと輸出向けに分けた出荷指数の内訳表の推移はほぼ同じである。世界経済の変調で輸出向け出荷指数が減少するのと同時に、国内向け出荷指数のも減少し、日本経済は不況期入りした。その後、世界経済が回復するのに伴い輸出向けと国内向けの両出荷指数はいずれも底入れ、回復に転じている。ただし、底は全体の鉱工業出荷と国内向けが2012年11月に対し、輸出向けは10月と1カ月先行している。

 また、2005=100とする指数で、輸出向けが高水準にあるのは、相対的に輸出の伸びが高いことを示している。もし、円安で金額だけでなく、輸出の量が伸びるのであれば、さらに輸出向けと国内向けの乖離が拡大することになる。

 出荷指数に占める国内向けと輸出向けのウエイトは大体8:2で、圧倒的に国内向けの比重が高い。しかし、輸出向けの製品を作るための部品・材料等で国内から供給される、いわゆる間接輸出品への出荷は国内向けに含められる。また、輸出変化が関連サービス産業、雇用などを通して国内向けの鉱工業生産・出荷に間接的に影響する。結果、実際は2割以上の影響力を持ち、鉱工業出荷全体が輸出向けに引きずられ、似た推移になるのがここ数十年の日本経済の状況である。

 また、13年1〜3月期の輸出向けは前期比6.7%増になったのに対し、国内向けは同3.1%増と格差が目立っている。これは一時的現象で、4〜5月平均(5月は速報値)の対1〜3月期では輸出向け0.2%減、国内向け3.0%増となっており、格差分は調整されている。これから考えれば、6月の鉱工業出荷内訳表は鉱工業生産統計より発表が遅いため、実績はまだ不明だが、4、5月の実績を見る限り4〜6月期の実質輸出の伸びは期待できない。

 為替レートの円高は2012年7月がピークになり、10月頃からは円安傾向が顕著になり、ピーク時の1ドル=70円台後半から100円台まで円安にまで進んできた。1〜3月期であれば、円安効果がタイムラグを持って輸出向け出荷に現れた、つまり円安効果が存在すると言えたかもしれない。ところが、4、5月の結果は特別な効果はなく、世界経済でほとんど決まるとみるのが正当である。

 一方、為替レートと輸入量の関係は国内への鉱工業総供給表の輸入指数をみれば明らかになる。輸入指数も輸出向け出荷指数と同様、高い水準にあるが、円安の影響があれば、相対的に水準が低下することになる。最近時までの推移は特に変化はなく、国内の景気、鉱工業生産・出荷の推移の影響が大きい。輸入品は国内にない食糧、原材料が大部分であれば、為替レートは影響を受けない。また、影響を受ける製品も日本企業がコストの安い海外で生産して輸入していれば、少々の円安で輸入が増える構造にはない。

 結局、円安で輸出入が金額ベースでは膨らんでも、数量では変化がなければ、実質ベースのGDP成長率には関係しない。もちろん、少しはあり、また、金額で増え、輸出企業が増益になれば、少しはそのプラス効果はある。その一方で、輸入産業にはマイナスになり、輸入品の上昇分を製品価格に転嫁してマイナスを逃れたとしても、それは消費者物価上昇を通して国民が負担し、民間最終消費の足を引っ張るだけである。

 このような構造はそう遠くない時期に明らかになると思うが、いずれにしても、為替レートに日本経済の再生、活性化を期待している限り、それは実現しない。地道に新企業・産業育成に取り組むしかない。

鉱工業国内向け・輸出向け別出荷指数と鉱工業総供給国産・輸入別指数の推移(2005年=100)

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| 2013年08月02日 | 貿易 | comments(0) | - |
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