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投入・産出物価指数から円安の物価上昇効果を考える

 消費者物価指数の総合の上昇率は5月が前月比0.1%増に留まり、前年同月比では0.3%減とマイナス状態が続いている。ただし、生鮮食品を除く総合ではそれぞれ0.2%増、横ばいになり、為替レート次第でプラスになる可能性もでてきたが、安倍政権が目指す2%の消費者物価上昇にはほど遠い。3月1日付けのこのレポートで円安でも2%の消費者物価上昇の可能性が少ないことを輸入物価、国内企業物価、消費者物価の推移から説明した。今回は製造業の部門別投入・産出物価指数から考える。ちなみに、投入物価は生産のために投入された原材料や燃料・動力などの価格、産出物価は産出された製品の価格から作成される。

 3月1日のレポートの「最近時で消費者物価が前年比で比較的長期にわたって上昇基調にあったのは、2007年10月から08年末までになる。この間のピークが08年7月の上昇率2.3%増になる。また、安倍政権が目標とする2%台の上昇は6から9月までの4カ月間」を参照にしたのと同様に、08年と最近時を比較する。この時にも書いたが、当時の物価上昇の要因は輸入物価の上昇にあっても、為替レートは円高基調にあり、07年年初の120円台から、年末には110円近くにまで円高になり、08年に入ると100円台、年末には90円台に突入していた。円高にもかかわらず輸入物価が上昇していた主因は、世界的なバブルによる国際商品市況の高騰にあった。

 08年の投入物価指数は前年同月比で上昇率ピークが8月になり、総合で17.4増、うち輸入財では42.1%増にもなっていた。国内財でも10.4%増の2桁台上昇である。この投入を受けても産出物価は同様にピークの8月の総合で8.6%増の1桁台上昇に収まり、うち国内財が10.0%増だが、輸出財は横ばいである。輸出財は円高のため8月以外はマイナスの上昇率で推移していた。

 8月以降はリーマンショック後のバブル崩壊による国際商品市況の下落で、輸入財投入物価が急落し、投入・産出共に物価は沈静化した。両物価指数の関係は、産出の国内財の中間財が生産のための投入になり、国内財産出物価上昇率が国内財投入物価上昇率と相関する関係にある。

 円高基調の08年に対し、今回は円安を反映して、13年に入って輸入財投入物価の上昇が顕著でも、5月まで10%増前後の上昇率である。また、国内財投入物価は5月になってプラスの上昇率になったが、それでも0.2%増でしかない。結果、5月の総合投入物価は2.5%増に留まっている。

 一方、輸出財産出物価は08年とは逆に円安のため、5月には14.1%増にまで高まっている。輸出価格はドル建てが多い影響で、これが自動車に代表される輸出産業の収益増をもたらしている。ところが、5月の総合投入物価が2.5%増になっても、国内財産出物価はまだ横ばいでしかない。総合産出物価では輸出財を反映して1.9%増である。

 もともと、投入物価指数の構成は05年基準で国内財75%、輸入財16%、サービス9%で、輸入の影響は小さい。08年の投入物価指数は00年基準で05年基準とは構成比が少し異なる。輸入原材料の価格上昇は最終消費財に至るまで、何段階かの産業連関を経て吸収されて小さくなる。かつ、流通産業を通して消費者に販売されるため、消費者物価指数には軽微になる。もちろん、食品やエネルギーのように輸入価格が直接的に消費者価格に反映する商品もあり、それらの消費者物価指数の上昇も含めて、消費者物価指数総合は現在の前年同月比でマイナスの上昇率になっている。

 08年の輸入財投入物価が前年比で3割、4割も上昇していたときでようやく2%程度の消費者物価上昇でしかなかったことから考えれば、今回のように1割程度では消費者物価が上昇しないのは当然といえる。逆に、円安による輸出財産出価格上昇で利益を得ていれば、輸出産業の国内価格は上げなくても済み、値下げも可能という見方もできる。

 最近のように為替レートの円安が止まっていれば、国際商品市況も世界的な景気のもたつきを反映して値上がり傾向は見られないため、消費者物価はむしろ再び、下落の方向に向かっても不思議ではない。もちろん、日本だけが金融緩和を堅持すれば、再度、円安傾向が強まる可能性はある。その場合、消費者物価上昇がプラス基調になっても不思議ではないが、2%は無理と考えられる。その実現は日本、円への不信から円安に歯止めが掛からないときではないか。

製造部門別投入・産出物価指数の前年同月比伸び率の推移


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| 2013年07月01日 | 景気 | comments(0) | - |
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