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電力価格引き下げにLNG輸入価格値下げ努力を

 東京電力の家庭向け電力価格の値上げが9月から8.46%で決まったが、今回の値上げ問題で電力の総括原価方式が広く知れ渡り、コストが高いほど電力会社が儲かる仕組みへの批判が高まった。無駄なコストとして福利厚生費、一般レベルと比べて高い人件費、福島原子力発電所の停止コストなどいろいろ指摘されいる。

 この議論の中で燃料費の問題が忘れられている。総括原価に含まれる燃料の原油やLNG、石炭などの価格は世界需給によって変動するため、燃料費は価格変動に合わせて調整される。この方法では他の費用と同様に高く買うほど利益になることでは同じだが、あまり俎上に載せられることはない。

 原子力発電が停止し、その代替エネルギーとしてLNG火力依存が高まり、通関統計の発表資料からLNG輸入価格が上昇していることは報じられている。ところが、このコスト上昇は仕方がないとしてあまり問題にされていない。もちろん、需要が増えたLNGを確保するために、一時的に高値で手当てすることはやむを得ないといえる。長期的には高価格でも価格転嫁できる現在の方式を変え、現状の異常な価格を引き下げる努力が行われるような原価方式が不可欠である。

 その方法の一つとして、電力会社間の競争が生まれる発送電分離があるが、その実現には時間が掛かるため、短期的にはLNG輸入価格の引き下げ必要になる。現状でも、シェールガスの供給が増え、世界的には天然ガスの需給が緩和する見通しになっているため、何をしなくてもLNGも値下げりすると考えられる。それに満足せず、より積極的な取り組みが求められる。

 LNGは天然ガス開発コストに加え、液化設備コストも掛かるため、LNG購入は巨額の投資を保証する長期契約になる。このため、長期価格で固定されるよううに思われるが、現実には競合関係にある他のエネルギー価格の影響を受ける。一般的には、需給を反映する原油価格の後追いで変化する傾向にある。

 例えば、IMFが発表している月間の統計で、原油の代表的なWTI価格は2008年6月のバーレル当たり133.93ドルがピーク、その後は09年2月の39.15ドルがボトムである。2月以降は回復し、11年3月からは頭打ちの100ドル前後の推移で、最近時は欧州危機を反映して下落傾向にあり、12年6月は82.36まで下がっている。このような推移は石炭でも同様である。

 一方、日本のLNG輸入の1割強を占めるインドネシア産LNGの日本での価格は立方メートル当たりで、過去ピークは08年7月の296.24ドル、その後のボトムは09年2月122.66ドルとなっている。ピークからボトムまでの下落率はLNGの方が少ないが、この間の推移はほぼ同じである。ところが、LNGは09年2月を底に回復傾向では同様でも、LNGは頭打ち現象がみられないで回復、上昇を続けている。11年4月には過去ピークを上回る300ドル台に乗せ、最近時の価格は12年4月から6月まで3カ月連続で411.75ドルとなっている。原油価格が頭打ちや値下がりしている影響を全く受けていないのは、11年3月の東日本大震災の影響を否定できない。

 液体と気体の違いはあるが、日本同様に天然ガスを輸入しているドイツは、ロシアからの輸入価格(ロシアとの国境での千立方メートル当たり価格)がインドネシア産LNG価格と似た推移になっている。ピークは08年の10月から09年1月まで4カ月間の576.72ドルで、その後のボトムは09年8、9月の222.48ドルになり、これ以降は値下がりはしても一時的、かつ微減で終わり、最近時は4、5月452.52ドル、6月452.16ドルである。

 ドイツは日本と天然ガスで似た推移になっているのは、ドイツは22年までに原子力発電の順次廃止を決めたことが影響していると推測される。ただし、12年6月価格はピーク時の8割程度の水準に留まっているのに対し、日本は過去ピークを4割ほど上回っており、LNG購入に価格をあまり考慮しない日本の姿勢が窺える。ちなみに、天然ガスはLNGにすると体積が600分の1ほどになるため、最近時のLNG立方メートル当たり411.75ドルは天然ガス千立方メートル当たりでは700ドル近くになり、ドイツの天然ガス購入価格価格より高い。

 一方、米国の天然ガス価格はシェールガス革命で全く異なる。ルイジアナ州のHenry Hubのスポット価格で、千立方メートル当たりピークが05年10月の490.82ドル、その後のピークが08年6月の456.57ドルで、そこから値下がりして09年9月の107.5ドルをボトムに回復に転じた。ところが、シェールガス開発が進んだことで、11年夏以降は値下がり傾向にあり、12年6月は4月の70.31ドルより戻しているが、ピーク時の5分の1以下の88.36ドルでしかない。

 日本の通関LNG輸入価格はインドネシア産LNG価格にみられるように上昇が続いているが、為替レートの円高効果で上昇幅は縮小されている。通関LNG輸入価格のピークは08年9月の8万1,095円で、値上がり傾向にあっても12年4〜6月は7万1,000円前後の推移である。為替レートは08年9月が1ドル=107円、4〜6月が80円強であり、ドルベースでは08年9月を上回っているが、円ベースでは逆になる。

 世界最大のエネルギー市場である米国での需給緩和は、世界レベルでもエネルギーは供給超過と判断できる。米国のエネルギー輸出戦略によって、米国エネルギー市場が世界市場に与える影響は変わる。米国の戦略は不明だが、現在、日本の輸入LNG価格の値上がりが長期的に続くと考えられない。国民生活、産業の競争力の維持には電力価格の引き下げが必要で、世界的なエネルギー需給緩和を日本の輸入価格に反映させる戦略的な取り組みが課題になる。


エネルギー資源価格の推移

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| 2012年07月29日 | 政策 | comments(0) | - |
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