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日銀の短観に見る景気の現状

 昨年3月に発生した東日本大震災にタイの洪水が加わり、今年の初めまでほぼ1年ほど異常事態が続き、生産、輸出などの統計から景気の実態が判断しにくくなっている。前年比はの伸び率はもちろん、季節調整値の信頼性も低下している。現状のような場合、企業の実感の方が景気判断に有効になる。

 企業調査の中で、日本銀行「全国企業短期経済観測調査(短観)」は調査対象企業数、高い回収率から信頼性が高い。この調査ではの業況判断(「良い」−「悪い」の%ポイント)が景気との相関性が高い。業況判断は企業規模、製造・非製造業別にあるが、いずれも相関性が高く、ここでは大企業の製造業でみる。

 短観は3カ月毎に行われ、最近時は4月2日に発表された回答期間2月23日〜3月30日の調査になる。業況判断は回答時判断の「最近」と3カ月後を見込んだ「先行き」があり、景気判断には「最近」の変化の方向で行われる。景気の変動期には、例えば、景気回復・上昇期は「最近」より「先行き」が上回り、「先行き」が実績になる3カ月後の「最近」が3カ月前の「先行き」を上回るのが通常である。下降期は逆になる。

 短観で大企業の製造業の業況判断を1年間の推移をみると、2011年6月調査は「最近」マイナス9%ポイント(以下、%ポイントは省略)、「先行き」プラス2となっていた。東日本大震災で「最近」は悪くても、生産の回復で「先行き」の改善を見込んでいた。事実、9月調査は「最近」プラス2で予定通りの上昇になった。かつ、9月の「先行き」はプラス4で、慎重でも上昇が続くと見込んでいた。

 6月から9月への「最近」の改善から比較すれば、12月に向けて「先行き」が弱気のように思われる。要因として、この間に為替レートが1ドル=80円台から70円台へと一段と円高が進み、かつ、円高に歯止めが掛かる期待が持てなかったため、これが「先行き」に影響したと考えられる。
 9月には「先行き」も穏やかな歩みでも改善予想だったが、現実には、12月調査は「最近」がマイナス4と再び悪化した。改善から一転して悪化した背景には、世界経済の回復の中断で輸出が頭打ちから減少傾向になったことがある。同時に、「先行き」もマイナス5になり、企業はやや悲観的になっていたことが窺える。

 一方、年が明けて為替レートが80円台へと小幅でも円安に戻したことで、12年3月調査の業況判断は12月調査の「先行き」のマイナス5より良くなるという見方が広がり、プラスになる予想もあった。ところが、3月調査の「最近」はマイナス4と前回と同水準になり、「先行き」もマイナス3でほとんど改善を見込んでいない。輸出の不振が円安のプラス効果を打ち消したと推測できる。
 3月調査の「最近」を業種別にみると、自動車のプラス28が目立っている。自動車は12月調査もプラス20と業況判断は良い。要因としては、タイ洪水の減産からの回復や他産業が輸出不振の中で米国への輸出好調がある。

 また、企業の好不況感は収益による。「短観」の11年度下期計画の経常利益は、大企業製造業の3月調査で前年同期比28.1%減になり、前回12月調査から25.2%の下方修正である。また、3月調査の12年度上期計画も18.2%減であり、減少幅は縮小しても減少が続く見通しである。
 業況判断からは景気が回復傾向とも下降に向かっているともいえない。一方、企業収益からは景気下降とみる企業が多くても不思議ではない。

 もちろん、業況判断の「先行き」や経常利益計画も現実は上方にも下方にもなり得る。いずれにもおいても最近の変化要因は輸出にあり、国内需要は大きく変化する可能性は少ないため、結局は世界経済、輸出に依ることになる。世界経済に関しては欧州危機が間欠泉のように吹き出し、解決の目処は立っていない。一方、米国は力強い回復にはならなくても穏やかでも回復状態が維持されている。当面、現在のような回復でも下降でもないすっきりしない景気になりそうである。
大企業製造業の業況判断の推移

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| 2012年04月30日 | 景気 | comments(0) | - |
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