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大阪都構想で大阪経済は活性化できるか


 大阪都構想に関心はないが、イメージだけで首長選挙や国政にまで影響を与える現状は問題が多く、無視できない。大阪府が大阪都になれば、行政が効率化することで、大阪の経済を活性化するという意見はイメージ的にそう思わせているだけで、大阪都構想が実態経済に効果があるかどうかの分析はされていない。

 政府が非効率であるため、財政が悪化し、財源不足から国債発行が増えれば、金利が上昇して民間の投資活動を抑制する。また、将来の増税が予想されることで、国民が貯蓄に励む。結果、いずれも経済に悪影響をもたらすというのが経済学の見方だが、今の日本経済をみる限り、財政状態が悪くても、金利は上昇していない。一方、消費は低迷していても、その原因を財政悪化に求める人もいない。

 一地方自治体の公債発行が金利に影響を与えることは、今の日本ではあり得ない。また、効率化して人件費を抑制できても、無駄な公共投資に使えば財政状態は同じである。もちろん、人件費と公共投資では支出内容が異なるため、経済に波及するルートは違う。また、効率化するだけで、支出を抑制すれば、むしろ地域経済にとってはマイナスになる。

 地域経済は地域の産業構造と政府の政策による。そこでの地方自治体の役割は政治力で政府から金を持ってくる以外、地域に合った産業政策で望ましい産業構造にするしかない。ただし、歴史的に形成された産業の蓄積、自然環境、人材などの制約がある。当然、地方自治体の政策だけでは活性化の可能性がほとんど無い地域も存在する。日本の中では、大阪は産業の蓄積、人材などの面からみれば、産業政策効果が期待できる地域である。

 産業政策のない大阪都構想で大阪経済を活性化できるとは思えないが、活性化を主張する背景には、大阪経済の地盤沈下がある。地域の経済水準を図る方法はいろいろあるが、ここでは代表的な内閣府「県民経済計算」の1人当たり県民所得を使って測る。県民経済計算は今年の2月発表が2009年度統計と遅く、かつ、推計精度に問題はあるが、長期の推移から構造問題を考える資料としては十分利用できる。

 高度成長期の1960年度から大阪府と東京都の全国に対する1人当たり県民所得(1974年度までは旧「県民所得統計」)を比較すると、60年代半ば頃までは全国を100として、大阪府は140前後、東京都は160前後で推移してきた。つまり、大阪府は全国より4割ほど、東京都は6割ほど全国平均を上回り、大阪府は東京都よりは低いとはいえ、全国第2位の高所得県であった。

 その後は両都府共に減少傾向になった。東京都は70年代半ばから80年度までと90年代央に130台にまで下がったこともある。ところが、それ以下には下がらず、最近時では、05、06年度は150台である。それ以降は減少しているが、09年度は140.0で、全国水準を大きく上回っていることには変わりはない。

 一方、大阪府は上下はあっても長期的に下降傾向で推移し、03〜06年度は99台と僅かではあるが4年連続全国水準を下回るところまで下落している。09年度は103.2と全国水準を回復していても小幅である。結果、かつては全国第2位だった所得水準は、09年度には東京都、神奈川県、愛知県、滋賀県、静岡県、千葉県に次いで第7位にまで下がっている。

 1人当たり県民所得にみられる大阪府の経済地位の低下、相対的な所得の下落に不満を持つ府民が、これを変えるという意見に賛成するのは当然といえる。しかし、その方法と効果の関係を分析せず、無批判に受け入れるのは、後で後悔することになると予測できる。

 60年代半ば以降の両都府の低下は、高所得の大都市部から低い地方への所得再分配政策の影響と考えられ、その後の都府間格差は産業構造から分析できる。経済活動別県内総生産の産業構造をみると、1960年度は、大阪府は製造業が43.7%を占め、全国平均の30.5%を大幅に上回っていた。東京都も35.5%で、当時は製造業が大都市部の地域経済を支え、それが高所得をもたらしていた。

 また、卸売・小売業も大阪府25.3%、全国16.0%、東京都18.9%で、大阪府は高く、卸売機能が集積していたことが窺える。一方、東京都の構成比が全国を大幅に上回っていたのは金融・保険業やサービス業で、生産性の高い第3次産業、サービス業が集積し、首都で本社機能が集積していることを反映している。

 09年度には、製造業は大阪府15.6%、全国18.5%、東京都9.0%と、大阪府の産業構造も脱製造業へと変わった。また、卸売・小売業は大阪府18.3%、全国12.9%、東京都18.5%になり、大阪府の卸機能の低下が顕著である。一方、大阪府もサービス業が増えてサービス経済化が進んでいるが、金融・保険業は東京都の12.8%に対し、大阪府は5.7%でしかない。生産性の高い第3次産業、サービス業は東京都への一極集中が進展し、それが高所得を維持する要因になっている。

 また、製造業は80年代以降、輸出産業の電気機械、自動車等の機械産業の成長性が高く、日本経済を牽引してきた。ところが、大阪府は歴史的に集積しているのは、機械産業では家電が目立つ程度で、素材産業が相対的に多く、製造業の構造も相対的に所得の伸びが低い問題がある。日本経済の構造変化の中で大阪経済は地盤沈下してきた。東京から本当の首都を持ってこられるわけはなく、都構想よりもこのような産業構造問題に取り組まない限り、大阪府の復権は不可能である。

大阪府と東京都の一人当たり県民所得の対全国比の推移


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| 2012年04月01日 | 政策 | comments(0) | - |
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