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消費者物価上昇率1%目標は実現するか

 日本銀行は2月14日に政策委員会・金融政策決定会合を開き、「金融緩和の強化について」と題して、「消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあると判断しており、当面は1%を目途と」して「資産買入等の基金を55 兆円程度から65 兆円程度に10 兆円程度増額する。買入れの対象は長期国債とする」等の景気対策を発表した。日銀が米国に習って金融政策に物価目標を導入したことになるが、ささやかな1%目標は実現するかどうか、また、日本経済の現状で実現した場合、望ましい日本経済になるのかどうかは疑問がある。

 1985年からの消費者物価上昇率の推移をみると、日銀が目標にする1%以上の上昇になったのはバブル期とその影響がまだ残っていた80年代末から90年代初めの5年間と97年度の2.0%増、その後は11年間無くて2008年度の1.1%増になる。80年代末から90年代初めの5年間には89年度の3%の消費税導入が含まれるが、これは1年だけの上昇になり、それよりもバブルによる影響の方が大きい。

 バブルは日本が輸出主導の成長を続けていたことに対して、欧米から批判され、内需主導の経済成長にするために金融緩和したことで生まれた。金融緩和効果で土地や株価が上昇し、個人消費も拡大した。内需主導の経済成長がバブル効果で成功したかに思われたが、その一方で、消費者物価の推移にみられるように物価が上昇傾向になったため、日銀が金融引き締めに転じ、バブル景気は終焉した。その後は長期不況期に入ることになる。

 ちなみに、消費税が導入された89年度の2.9%増から、その影響が消えたはずの90年度は3.3%増で、むしろ上昇率は高まった。3.3%増はそれほど高くはないという見方もあるが、日銀は物価上昇に加速が付き始めたことに危機感を持ち、早めの対策をした結果、バブルが崩壊した。

 次の97年度は2.0%増だが、これは消費税が5%に引き上げられたのが原因で、翌98年度は0.2%増でしかない。これから考えれば、消費税を除けば93年度の1.2%増から08年度まで15年間、1%の上昇はなかったことになる。

 08年度は世界的なバブル景気で原油をはじめとする国際商品の高騰から輸入価格が上昇し、それが国内価格に転嫁されて消費者物価上昇をもたらした。逆に、世界的なバブルの崩壊で国際商品が下落した09年度は1.7%減と過去例のないマイナスである。

 過去の例からは、日銀が今議論になっている消費税の値上げで1%増を目指しているとは考えられないので、1%増には国内景気がバブルの有無に関係なく好景気になる、国際商品高騰や大幅な為替レートの円安による輸入価格の上昇が想定される。

 ただ、80年代末から90年代初めはバブル景気が春闘にも波及していたことに注意する必要がある。この頃は先月2月1日付けのこの欄で書いたグラフで示したように5%前後の賃上げがあり、これがサービス業の値上がり要因になっていた。この時の1%台上昇の最後の年の93年度でも春闘賃上げ率は4%程度であった。このため、98年度までは相対的にサービスの上昇率が財を上回っていた。

 一方、近年は春闘は実質的には無くなっており、賃金面からの上昇要因はない。これが08年度の上昇率に明確に表れ、物が1.7%増に対し、サービスは0.4%増の好対照である。

 今回の日銀の発表を受けて、為替レートは1ドル=80円台まで円安に戻し、株価も上昇傾向にある。それが設備投資や住宅投資、さらには個人消費の拡大に結び付き、力強い景気回復・拡大をもたらし、消費者物価上昇に結び付くとは予測できない。もし、可能性は少ないがバブルによる景気で物価が上昇すれば、過去のバブル崩壊が再来するだけになる。

 一方、輸入価格の上昇による消費者物価上昇に関しては、今の円安傾向からドル=100円を上回るような為替レートの大幅な円安は想定できない。また、世界的な金融緩和から再度、バブルが発生するとしても、それが世界経済の順調な拡大に結び付くことを期待するのは難しい。その時には、日本より先行して海外で金融引き締め、例えば原油の影響の大きい米国でインフレ対策から金融引き締めになり、世界経済が下降線になると予想され、日本経済への打撃が避けられない。

 結局、金融緩和で1%上昇は難しいと考えているが、それが実現しても別の問題が発生するだけである。


消費者物価上昇率の推移

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| 2012年02月29日 | 政策 | comments(0) | - |
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