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経済環境からみて消費税引き上げは適時か

 野田首相は財政再建のために、消費税の10%への引き上げに政治生命を賭ける姿勢だが、それに対して反対も強い。反対の理由は財政支出削減への取り組みが不十分で、マニフェスト違反、またEUの財政危機問題が深刻化する経済環境の悪い時に消費税を上げると、経済を悪化させて税収増効果も小さい、という政治的側面と経済的要因の二つに分けられる。ここでは経済的要因を考える。


 これを考える場合、過去の消費税導入時と3%から5%に引き上げられた時の日本経済の経験は参考になる。3%の消費税導入は1989年4月になる。このときは1〜3月期に個人消費に駆け込み需要が発生し、4〜6月期にその反動減があったが、7〜9月期以降は個人消費は正常化に向かった。結果、消費税導入の影響は軽微で済んだ。


 実質GDP成長率は個人消費の影響で88年度の6.4%増から、89年度は4.6%増に減速したが、基調としては大きな変化にはならなかった。当時は世界経済が順調に拡大しており、日本経済は86年11月をボトムに輸出主導で回復・上昇期にあった。その後、90年8月に発生した湾岸危機で原油価格が上昇し、米国が金融引き締めに転じて世界経済の成長が頭打ちになることで、日本経済は輸出主導の成長が終わり、91年2月がピークになった。


 3%から5%への引き上げは97年4月になり、個人消費の駆け込み需要、反動減は同様だが、7月のタイを皮切りに始まったアジア通貨危機で輸出が減少になった。個人消費の反動減に加えての輸出の減少で一気に不況に突入し、消費税引き上げ翌月の5月が景気のピークになった。実質GDP成長率は96年度の2.9%増から、97年度は微減のゼロ成長に陥った。景気のボトムは99年1月になり、98年度も1.5%減で、初めて2年連続のマイナス成長を記録した。


  以上から、世界経済の影響は大きいことが窺える。もともと、日本経済は輸出の影響が大きく、世界経済を考慮するのは当然といえる。すでに、2011年12月1日付けのこのレポートで、輸出の回復力が弱く、10月の輸出数量指数が前年比マイナスになったことで、景気後退に向かう可能性を指摘した。


 輸出数量指数は10月の4.0%減の後、11月4.4%減、12月6.6%減となっており、懸念したことが現実化しつつある。12月の輸出指数は米国が前年を上回ったが、EU、アジアが2桁台のマイナスになったことで、落ち込み幅が拡大した。財政危機のEUの影響でアジアのEUへの輸出が減少し、それが日本にまで波及していると考えられる。当面の日本経済は復興特需がどこまで下支えできるかに掛かっている。


 今回の 消費税引き上げは14年4月から8%、15年10月から10%となっており、その頃はEUの問題が解決し、世界経済は回復・拡大基調に戻り、輸出が順調に伸びている可能性もある。それでも、不透明な今の時期に引き上げを決めなくても、13年でも十分間に合うということはできる。


 これは世界経済からみた影響だが、日本国内の経済環境も大きく変化している。特に、デフレの定着と消費への影響の大きい賃上げの終焉である。消費者物価のゼロ、マイナス成長は90年代後半から始まったが、当初は為替レートの円高による一時的な現象とみられていた。それが長期化し、今ではデフレ経済が前提になっている。デフレ経済下では、消費税を引き上げても、税収は期待したほど増えないことはこの間の税収をみれば明らかである。


 また、デフレ経済とも関係するが、春闘賃上げ率は80年代以降、趨勢的に低下してきている。90年代までは収入増の基本になるベースアップが実施されていた。ところが、中小企業(統計は08年まで)は99年以降、主要企業でも02年以降、1%台の賃上げ率に留まっている。賃上げ額は定期昇給にベースアップを加えた金額でることを考えると、1%台の賃上げ率はベースアップはほとんどゼロに近い。つまり、所得のベースの増加は無いことになる。


 もちろん、物価上昇がマイナスであれば、実質所得はそれだけ増えるが、実感は名目所得の方になる。その状況で消費税が引き上げられると、消費税負担感は強くなり、より節約ムードが高まり、景気に対してはマイナスになる。ちなみに、3%から5%に2%引き上げられた97年の賃上げ率は主要企業2.90%、中小企業2.63%で、僅かだが賃上げ率が上回っていたが、これからは逆転する。


 いずれにおいても、経済環境は消費税引き上げに適しているとはいえず、反対意見は説得力を持つ。消費税を引き上げても予定ほど税収が増えず、オーバーにいえば永遠に引き上げが続く心配もある。結局、難しくてもデフレを解消し、2、3%でも安定した経済成長が見込めるようになり、賃上げも行われるような取り組みが必要になる。


名目・実質GDP成長率の推移


消費者物価上昇率、主要企業・中小企業賃上げ率の推移



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| 2012年01月31日 | 政策 | comments(0) | - |
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