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東日本大震災前の生産水準の回復はいつか

 5月の鉱工業生産指数(速報)は88.8、前月比5.7%増の高い伸びになったが、東日本大震災前の2月の97.9と比べると、まだ9.3%減と1割ほど下回っている。鉱工業から鉱業を除いた製造工業生産予測は6月見込み5.3%増と引き続き高い伸びの後、7月見込みは0.5%増と頭打ちの形になっている。もちろん、これは見込みで現実は別としても、回復の一服感は否めない。この要因を業種別動向から考え、鉱工業生産指数が震災の打撃から脱したと思える、つまり2月水準を回復する時期を予想する。日本では鉱業は産業としては小さいため、鉱工業生産指数と製造工業生産指数はほとんど同じとみて問題はない。


 4月1日付けのこのレポートで、経済産業省「工業統計」から震災被害の大きかった5県計の全国シェアを業種別にみて、主要業種で非鉄金属の15.9%を筆頭に、業務用機械(12.1%)、食料品(11.0%)、パルプ・紙・紙加工品(10.6%)、情報通信機械%(10.0%)が1割を超え、電子部品・デバイス・電子回路(9.7%)、電気機械(9.4%)、生産用機械(9.3%)などが1割近く、影響の大きい業種として取り上げた。


  生産額の工業統計と付加価値額の鉱工業生産指数(2005年=100)は異なるが、工業統計で影響の大きいと予想された業種は鉱工業生産指数でも2月から3、4月に賭けて大きく落ち込んでいる。その中で、全国シェアと関係なく、輸送機械が2月の99.3から、底の4月は51.9の47.7%減と半減近くになり、主要業種で最も落ち込みが大きかった。工業統計で輸送機械の5県の全国シェアは2.5%でしかないため、それだけ電子部品・デバイスや輸送機械や一部の部品不足が完成車生産を半減させるほどの打撃を与えたことになる。


 輸送機械は打撃が大きかった反動で、その後の回復速度も速く、5月速報は70.8、前月比46.4%増、6月見込み19.9%増、7月見込み4.0%増となっており、7月は回復速度が低下はしても、引き続き増加が予想されている。ただし、7月見込みは伸び率から推計した指数で2月の11.1%減であり、水準としてはまだ低い。


 7月の輸送機械は夏の電力不足対策で、土日の休日を平日に動かして対応しようとしているが、それでも完全に従来通りの生産は難しいため、その影響で7月の見込みが回復速度が低下したと推測することは可能である。そうであれば、8、9月は引き続き回復速度は遅くても増加基調が維持されるといえ、秋以降は回復の再加速になり、比較的早く2月水準を上回ることが期待できる。
 一方、一般機械(工業統計では生産用機械)は2月の93.9から3月は80.3、14.5%減になったが、5月速報で94.7%と2月水準を回復している。また、電気機械は2月の99.6から3月は89.4、10.2%減になり、5月速報は95.8で、まだ2月水準を回復していない。それでも、6月見込みは節電用家電需要もあって10.1%増で、5月速報からこの伸びになれば2月水準を大きく上回る105.1になり、回復する可能性は高い。


 これらの業種は既に2月水準を回復、または回復が期待できる産業である。これらに対し、電子部品・デバイスは2月134.6、3月125.7、4月109.8、5月速報109.1と推移している。3、4月の減少は震災によるとして、5月速報が減少しているのはそうとはいえない。その後も、6月見込みは2.6%増で持ち直すが、7月見込みは1.2%減と再度、減少する予想である。


 輸送機械の減少の要因の一つが電子部品・デバイス不足であれば、輸送機械回復の背景には電子部品・デバイスの生産回復がなければならない。また、電気機械の生産回復、増加は電子部品・デバイス需要増に結びつく。生産動向からみると、矛盾していることになるが、その原因として輸出が挙げられる。


 輸出は海外での日本製品の放射能汚染懸念に加え、海外景気の変化の影響が考えられる。米国は景気刺激効果が一巡し、景気回復が息切れ気味になっており、また、中国他のアジア諸国は物価対策による引き締め政策で景気が抑えられている。これが輸出に波及し、電子部品・デバイス生産に現れていると推測される。これから判断すれば、夏の節電が終わっても、輸出不振で生産回復力が弱いまま留まり、鉱工業生産指数の2月水準の回復は年末から年明けまでずれ込むことが予想される。                       

業種別鉱工業生産指数・予測指数の推移
 
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| 2011年07月02日 | 景気 | comments(0) | - |
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