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電力需要から夏の計画停電を考える

  政府の電力需給緊急対策本部は4月8日、「夏期の電力需給対策の骨格」を発表した。これによると、夏までに4,500万kw前後の供給力を見込み、今夏のピーク需要を約5,500万kwを想定して1,000万kw程度、ただし、昨年並のピークの約6,000万kwを想定すれば、1,500万kw程度の供給力不足の恐れがあるとしている。この電力不足に対して、東日本大震災直後の計画停電への批判が強く、計画停電でなく節電によって切り抜ける方が望ましい。このため、政府は大口電力需要家の企業には最大の25%の節電を要請していた。


 政府が見込んでいる今夏の供給力約4,500万kwは、東京電力が3月25日に作成した7月末供給力見通し4,650万kwを前提にしている。その後、休止火力発電所の再開、ガスタービン発電機の設置などの見通しができたことから、東京電力は4月15日に7月末供給見通しを1割以上も多い5,200万kwに上方修正している。これを受けて、4月末になって政府は大口電力需要家も含めて一律に15%の節電に緩和している。


 東京電力は5,200万kwには揚水に電力を使う揚水発電が400万kw含まれるため、この400万kwは保証できないとしている。一方、400万kwは問題ない、現実にはまだ休止中の火力発電所で再開できるところがあり、5,500万kw程度は見込め、それほどの節電は必要ないのではという意見もある。


 これらは供給側の話だが、電力が不足するかどうかは需要側からもみなければならない。夏需は気温の影響が大きく、今夏の気象予想では昨夏のような猛暑にはならなくても、夏らしい暑さと予測されている。


  政府の前提としている東京電力の昨年ピーク需要の約6,000万kwは、7月23日の記録5,999万kwによる。ところが、実際の過去ピークは、特定規模電気事業者(PPS)による小売対象が50kw以上の需要家にまだ引き下げになった2005年以降では、07年8月22日の6,147万kwになる。これだと約6,000万kwの想定では不足する。


 昨夏の猛暑のイメージが強いため、10年が過去ピークと思ってしまうが、現実は異なる。原因は、猛暑で家庭用の電灯需要は昨年が多くても、景気は07年10月がピークになっており、PPSの対象になる50kw以上需要家の事務所、デパート、大規模飲食店、病院など向けの業務用や工場、鉄道など向けの産業用の需要が10年は07年を大幅に下回っているからである。


 この関係をピーク時とは異なるが、東京電力の8月の月間需要量で比較すると、10年の電灯は93億kwhで、07年の90億kwhより多く、猛暑の影響は明らかである。これに対し、10年の特定規模需要の業務用80億kwh、産業用91億kwh、計171億kwhに対し、07年はそれぞれ77億kwh、96億kwh、173億kwhと07年の方が多い。これに個人商店などが中心の50kw未満の特定規模外電力を合わせた全体では、10年277,7億kwh、07年278,2億kwhになり、07年の方が僅かだが上回る。


 もともと産業用は景気の影響を受け、東京電力の8月で近年ボトムになる09年は07年の13.5%減の83億kwhになる。夏の気温の影響は電灯のほか、特定規模外電力と業務用で大きい。


 猛暑の10年の電力需要を前年同月比の推移でみると、09年が冷夏であった影響もあり、電灯は6月までの1桁台の増加から、7月10.1%増、8月11.3増、9月33.7%増、10月6.7%増となっている。9月の異常ともいえる高い伸びは、残暑が厳しかったことを反映している。ただし、実数では8月が9月を上回る。特定規模外電力もほぼ同様の推移である。


 また、業務用は6月まで前年と同水準で推移していたのが、7月3.7%増、8月6.2%増、9月11.8%増となっており、電灯ほどではないが、猛将の影響は明らかである。 東京電力の需要量は電灯、特定規模外電力、業務用の伸び率が全国平均を上回り、気温の影響が大きいことを示している。


 月の3分の2ほどが震災の影響を受けた11年3月は産業用15.3%減、産業用と業務用を合わせた特定規模需要12.2%減、全体で5.9%減である。月の3分の2で15.3%減の産業用は月ベースでは30%以上の減少になる。震災後の生産活動の回復は遅れており、夏は減産状態からの脱出は難しい見通しで、前年比マイナス基調が続く可能性が高い。ちなみに、東京電力の電力需要全体の3分の1ほどを占める産業が10%減で、全体の3%強の減少になる。そこまでの減少が続くとは考えにくいが、マイナス要因であることは確かである。


 一方、昨年が猛暑であったことを考慮すれば、例年程度の暑さであれば、基調としては電灯、特定規模外電力、業務用は横ばい程度と考えられ。そこに15%を目標とする節電が加われば、産業用以外も全体として減少が期待できるが、コスト意識の弱い電灯がどこまで節電になるかが問題になる。


 ピーク時と月間需要量は異なるが、昨年ほどの猛暑でなければ、ピーク電力は6,000kwを超える可能性は少ない。また、電灯は不明でも、企業が節電努力すれば、十分乗り切れると考えられる。また、鉄道は10年8月の東京電力月間需要量で6億kwh、全体の1%にも満たないため、鉄道ダイヤを減らす必要はない。

電力需要の推移



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| 2011年04月29日 | 政策 | comments(0) | - |
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