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スタグフレーション的状態になるか

  2月の鉱工業生産指数速報は前月比0.4%増と4カ月連続の増加となった。鉱工業生産指数は輸出の頭打ち傾向から、四半期ベースの前期比で2010年7〜9月期1.8%減、10〜12月期1.6%減の2四半期連続のマイナス成長になり、景気後退も懸念されていた。しかし、4カ月連続の増加で11年1〜2月平均の対10年10〜12月期比は4.0%増の急回復になり、また、3月10日締めで集計されたの製造工業生産予測指数は前月比で3月1.4%増、4月1.3%減となっている。


 3月11日の東日本大震災(東北関東大震災)がなければ、1〜3月期は3四半期振りのプラス成長、それも高成長になり、2四半期連続のマイナス成長は一時的な踊り場で終わっていた。4月はマイナス予測だが、3月までの回復速度が速すぎる調整と考えられ、震災前の段階では4〜6月期に再びマイナス成長になることは予測されなかった。


 それが東日本大震災が一変させ、被災の影響で3月の鉱工業生産指数は10%を超える減少という意見もある。12日以降の月の約3分の2が85%水準に落ち込めば、月間では90%であり、その可能性は十分ある。2月の速報をそのまま確報として計算すれば、3月が前月比11.7%減以上の落ち込みで、1〜3月期は3四半期連続のマイナスを記録することになる。


 この減産で在庫循環による景気後退とはいわないが、企業収益が悪化し、不況感が出てくることは避けられない。生産は4月が3月を上回るかどうかは微妙でも、輸出市場が変化しない限り、5月以降は回復に向かうのは確実といえる。ただし、回復力は弱いと推測される。


 というのは、6月以降は計画停電の問題がある。大破した大規模プラントや工場は修理が年単位になるのは別として、震災の影響が工場の一部の装置、建物、床、電気設備にとどまれば、週、月単位で復旧でき、4、5月からの生産能力の回復が見込める。ところが、今のように毎日、時間単位で停電があると、生産途中の中断が不良品になったり、生産の立ち上げや終了に時間が掛かるものがあり、生産効率は悪い。むしろ、日単位で停電する方が対応しやすい。停電で平日休めば、休日を代替にしてフル稼働できるからである。日常生活の方は24時間の停電でなく、夜間、早朝は通電されるので、対応は可能であろう。


 1〜3月期の鉱工業生産がマイナスになるかどうかは被災の影響の大きさによるが、推測は不可能であり、被害を受けた県の出荷額から考えてみる。もちろん、県全体が生産、出荷不可能になっているわけではない。逆に、産業連関によって、一部の部品や製品が欠ければ、最終製品ができない問題があるため、出荷額ではその何倍、何十倍にも拡大する可能性がある。特に、東北の工場は首都圏から労働力や工場用地を求めて移転した部品工場も多いため、首都圏の生産にも影響する。


 「平成21年工業統計表」(概要版、従業者4人以上工場)によると、東北地方の太平洋側で被害が全県規模にわたると推測される岩手県、宮城県、福島県の3県で、出荷額は製造業全体で全国の3.6%であり、それほど大きくはない。これらに全県規模ではないと推測される青森県と茨城県を加えた5県では7.9%になり、少なくはない。青森県では南部の八戸市、茨城県では北部の日立市周辺が両県を代表する工業集積地で、いずれも被災地であり、7・9%はそのまま5県の影響の実態に近いと推測される。また、千葉県など被害が小さくない県もあり、精密な製品は地震による影響は広範囲に及ぶことに留意する必要がある。


 主要な業種で5県計のシェアは非鉄金属の15.9%を筆頭に、業務用機械(12.1%)、食料品(11.0%)、パルプ・紙・紙加工品(10.6%)、情報通信機械%(10.0%)が1割を超え、電子部品・デバイス・電子回路(9.7%)、電気機械(9.4%)、生産用機械(9.3%)などが1割近く、影響の大きい産業といえる。これらの中で、業務用機械、電気機械、生産用機械は茨城県の出荷価額が大きく、比較的回復が早いと考えられる。


 一方、電子部品・デバイス・電子回路は電気機械を中心にほとんどの機械に使われるため、電気機械を中心に機械産業全体に与える影響は大きい。5県で全国の製造業出荷額の7.9%を占め、電子部品・デバイス・電子回路が1割近いシェアがあり、全国出荷額で機械系7業種出荷額が全体の44%も占めていることから推計すると、鉱工業生産指数の減少が10%を超えても不思議ではない。
 また、非鉄金属、食料品、パルプ・紙・紙加工品などのシェアが高いのも特徴である。これらは以前から世界的な需要の増加と金融緩和から国際市況が上昇している。もともと、国内では供給過剰で、国際価格の上昇を国内価格に転嫁し難く、それが国内物価の重しになっていた。これだけ生産設備に打撃を受けると、需給均衡、さらには需給逼迫になり、便乗値上げまでには至らなくても、国際価格の上昇分の転嫁は行い易くなる。


 もちろん、ユーザー側も生産減から原料需要は落ち込むが、食料品や紙などの消費財はほとんど需要に影響がないため、消費者物価の上昇要因になる。一方、生産の減少、加えて、自粛ムードでレジャー関連を中心に消費全体が落ち込んでいる。結果、企業収益は悪化し、景気も循環上は不況でなくても、まだ十分脱していなかった不況感が再び、強まることになる。これは不況下の物価上昇のスタグフレーション的な状態に陥ることを予想させる。


業種別被災県の出荷額全国シェア(2009年)


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| 2011年04月01日 | 景気 | comments(0) | - |
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