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TPP不参加の輸出への影響は深刻か

  TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加意向を菅首相が表明したのを契機に、以前からのFTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)をめぐる対立論争が再燃している。一般的に農業関係者は反対、企業経営者は賛成という関係にあり、反対意見は農産品の関税が撤廃されることで、価格競争力のない農業が存続できなくなり、日本の農業、ひいては農業地域が崩壊する。これに対し、賛成意見は日本の農産品は品質が良いので、価格が高くても売れ、打撃は少ない。むしろ、日本経済を支える工業製品は輸出相手国の関税分だけ価格競争力が低下することになり、輸出は減少し、日本経済への打撃が大きいというのがそれぞれの主張である。


 これらとは別に、9参加国(米国、シンガポール、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、ニュージーランド、オーストラリア、ペルー、チリ)に日本が加わったとして、10カ国のGDP中、米国と日本が90%、さらに参加を希望するカナダ、コロンビアを加えても85%ほどを占め、実態は日米間の自由貿易協定という冷めた見方もある。環太平洋で比較的経済規模の大きい韓国は米国と2007年に取り交わしたFTA(自由貿易協定)で、10年に内容を修正する追加交渉で合意しており、TPPに参加しない意向という。中国も不参加の意向である。


 ただし、GDPでTPPを考えるのは日本よりも米国の方になる。米国からみれば、日本以外は参加する環太平洋諸国の経済規模が小さければ、日本が参加しないTPPは意味がない。経済規模が比較的大きい韓国とはすでにFTAを結んでいるため、TPPによる経済効果は小さく、また、中国は強要できる関係にはない。結果、日本抜きのTPPは考えられないとすれば、米国は日本、菅首相に参加圧力、それも強圧を掛けていると推測できる。


 一方、TPP参加賛成の意見は不参加の場合の輸出減による日本経済への打撃が深刻と考えていることにある。つまり、TPP不参加の日本経済への影響はGDPよりも輸出市場規模の方が重要になる。9カ国の10年の輸出シェは通関統計で24.8%、カナダ、コロンビアを加えて26.2%であり、いずれにしても4分の1ほどを占める。うち、米国が15.4%で最大だが、その他は10%前後で、小さくはない。ただし、国別で輸出市場といえるのはシンガポール3.3%、マレーシア2.3%、オーストラリア2.1%の3カ国程度である。


 輸出品別にみれば、TPP不参加が日本の輸出へのマイナス効果は、FTAを着実に進める韓国との競合製品、主として乗用車や家電製品の輸出額になる。最大の米国で影響が考えられるのは、10年の対米輸出で27%を占める乗用車程度で、家電のTV受像器は0.4%でしかない。


 日本の対米TV受像器輸出が少ないのは、日本の海外工場(メキシコ)からの輸出になっている以外に、韓国に米国市場を奪われている影響が無視できない。逆にいえば、関税とは関係なく韓国との競争で負けている。ただし、韓国製品の主要部品は日本製が多いため、韓国の家電製品の生産、輸出が伸びると、日本からの対韓部品輸出が増える構造がある。結果、10年の韓国への輸出は5・5兆円に対し、輸入は2・5兆円と半分以下であり、韓国とは分業構造が形成されている。製品分野だけで韓国の進出を脅威とするのは、韓国を過大評価していることになる。もちろん、中・長期的に韓国が部品でも国際競争力を高める可能性はある。


 また、シンガポール、マレーシア、オーストラリアなどへも家電製品の輸出は少ない。現地生産が進んでいるのか、周辺国で生産して輸出している、または韓国に負けているためと推測される。一方、いずれも乗用車輸出は多いが、日本からの輸出シェア2、3%の何割かであり、輸出全体からみれば影響は微々たるものになる。また、韓国が先行しているが、日本もこれら3カ国とはFTAを締結したり、交渉中であり、TPP不参加の日本の輸出への影響はほとんど無視できるほどである。


 結局、米国への乗用車輸出が懸念材料になるといえる。自動車も以前から現地生産を進める方向にあり、TPP不参加はそれを促進する効果を持つ程度であり、米国への輸出に打撃というほどの事態は予想されない。それよりも、現地生産を進めるためには、日本車が米国で評価されて売れる必要があるが、乗用車でも韓国の競争力が向上している。韓国車の人気が高まり、日本車のシェアを蚕食する時期とTPP不参加が重なり、韓国車の伸びをTPP不参加を原因とする主張される可能性はある。


 日本の輸出構造から判断する限り、TPP不参加が日本の輸出、ひいては日本経済に深刻とは考えられない。


TPP参加国別輸出額(2010)構成

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| 2011年02月27日 | 貿易 | comments(0) | - |
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